べっく日記

偏微分方程式を研究してるセミプロ研究者の日常

研究進捗2019/12/23

先日26歳の誕生日を迎えました.うれしいものです.メッセージをくれた方々,ありがとうございました.誕生日だったので,妹や母とケーキを作りました.

すごい正直なことを申し上げると,この歳になるまでに曾祖母が生きているとは思いませんでした.私も長生きしたいものです.


<これまでの進捗>

・いろいろ発表した.感触は悪くないような気がする.

・Contact line problem の定式化をした.「新しい」境界条件を考えることなく,エネルギー散逸は示せることがわかった.特にエネルギー散逸を保証するために,Contact line の moving speed を仮定している論文が多いけど,特定のシチュエーションでは不要なことがわかった.実際に,自由境界は a priori に未知であるから contact line の動き方を仮定するのは変だなあと思っていたので,個人的には納得しうる結果(定式化)を得ることができた.

・特に,contact angle に制限を加えることなく定式化したので,任意の初期接触角に対して,接触角が変化しているような時間局所解の存在を示せると思う.たぶん重力が働いていないというのが本質的に重要で,重力が働く場合は自由境界に対応する固定境界の平均曲率が定数でないため,平衡状態における自由境界の特徴づけが難しくなると思う.もちろん,重力が働く場合を解析するのは不可能ではないと思うけど,もう少しいろいろ勉強しないといけないと思う.ちなみに,重力が働かない場合,surface energy が最小となる曲面は一意的でないという結果が Finn によって示されているけど,流体の非圧縮性条件から曲面の uniqueness が従うと思う.

・Contact line (point) problem に対する研究は重み付きの関数空間で解析されているものがほとんどだけど,証明をちょろちょろ読んだ限りだと,境界に角があるような領域上での楕円型偏微分方程式に対する一般論を援用しているような気がする.でも,angle が90度の場合は singularity がなくなることは知られているから,彼らの結果は(自由境界問題に応用する観点から考えると)optimal ではないと思う.実際に,自由境界問題では,自由境界を対応する固定境界に変換して解かないといけないため,本質的に重要なのは固定境界における contact angle である.もし固定境界が 90度の contact angle しか持たないならば,面倒な関数空間を導入しなくても解析はできるはず.

・博士論文を加筆・修正した.

・投稿していた論文を少し直した.リジェクトされなかったので望みがありそう.頑張って直そう.

・圧縮・非圧縮二相流の研究は,表面張力がある場合,圧縮パートに起因する難しさが顕著になることがわかった.たぶん,まだ手をつけるべきでない問題だと思う.

・同期の優秀なT君が2次元全空間における定常ナビエ・ストークス方程式の適切性に関して部分的に解決した,という話を本人からいろいろ聞いた.いろいろ勉強になった.

・外部 Lipschitz 領域における Stokes 半群の評価について,いろんな人から,local energy decay で gradient 評価で  q = n とできないのかと聞かれた.Local energy decay を使っていないし,知らなかったので少し勉強した.ただ,local energy decay の証明は,関数の(空間変数についての)2階微分をあちこちで考えているので,証明の方法を変えたからといって解決できるわけでもない気がする.

・ということで,共同研究者にメールして,この課題について考えたことがあるか聞いてみた.ありがたいことに,彼からいろいろな提案を受けた.メールの最後に "I hope I could help you!" と言われたので,自分の頑張り次第では共同研究を続けられるのかもしれない.


<今後の目標>

・名古屋で講演するので準備を頑張る.

公聴会の準備を頑張る.もちろん公聴会も頑張る.

・Contact line problem を考える.Slip のときは問題ないけど,Navier slip の場合でも reflection で解けるかどうか考えてみる.

・Stokes 作用素 H^\infty-calculus を持つことを示す.本質的には Helmholtz projection の mapping property を明らかにすることが重要.

・Stokes 半群の gradient 評価を考える.

コリオリ力を伴う圧縮性 Navier-Stokes 方程式に対する研究を再開する.特性根を求めようとすると失敗することがわかっているので,特性根を求めることなく解の評価の導出を頑張る.たぶん,Danchin-Mucha の2次元に対する議論を応用できると思う.



忘年会シーズンで,いろんな人から「ブログ読んでるよ」と言われます.ありがとうございます.もうちょっと面白いことを書ければいいなあと日頃思っていますが,なかなか書けるような話題が見つかりません.強いて申し上げるならば,やんちゃな弟 a が結婚したことくらいでしょうか.次回の研究進捗は2月下旬を予定しております.次回の更新までに面白い話も提供できるよう頑張ります.では.

研究進捗2019/10/26

気づけば夏が終わり,秋らしい天気になってきました.おかげさまで,このブログの知名度も上がってきました.研究の進捗を書くようになった当初は全く想像していなかったことですが,どうやら口コミで認知度が高まっているようです.今後はブログではなく,研究結果で知名度を上げていきたいところです.



<これまでの進捗>

・学会で発表した.特に,共同研究によって得られた,外部 Lipschitz 領域における Navier-Stokes 方程式の結果について発表した.反応はとても良かったように思える.

・Contact line problem はやはり reflection で解けそうなことがわかったが,丁寧に reflection しないといけないことがわかった.K先生にメールで質問したおかげでだいぶ理解が進んだように思う.やはり contact line 上でどのように reflection argument を施すのか,が重要なようだ.

・博士論文を書いた.しかし,まだところどころ誤植はある状態.先輩のSさんみたいに200ページ書きたいなあと思っていたけど,無理だった.私は 170 ページちょいが限界だった.共同研究者は280ページくらい書いていたのでバケモンだなって思う.

・阪大のTさんから,Navier-Stokes-Korteweg 方程式で,(自明な)定常状態における圧力の微分が0の場合は,初期運動量が  m_0 = \partial_x \tilde m_0 と書けないとだめだよ,とずっと言われていて,理由がずっとわからなかったけど,ようやく理由が理解できた.この場合は,Fourier multiplier が Mikhlin condition を満たさないということみたいだ.実際に,この場合は,Fourier multiplier の分母に  \lvert \xi \rvert ではなく, \lvert \xi \rvert^2 が現れるので,原点近傍での振舞いがよろしくない,ということだったらしい(直接話したわけではないけど,メールでのやり取りから私はそのように解釈している).たしかに,初期運動量の「書き換え」を行ったり,homogeneous な Sobolev 空間で考えないとこの問題は解消できなさそうである.それに気づかないまま論文を投稿してしまったのは反省すべきことである.

・RIMS や早稲田での講演のアブストラクトを書いて送った.


<今後の目標>

・来月はたくさん研究発表しないといけないので,その準備を頑張る.

・博士論文を完成させる.



今日はいい天気ですね.ここのところずっと机とお友達だったので,今日は少し遠出をして,江ノ島を散策しようと思います.リフレッシュは大切だと思います.次回の研究進捗は12月下旬を予定しております.では.

TeX Live 2019 をインストールした。

増税前にデスクトップ PC を購入したので,数学の論文を書くのに必須な TeX のインストールを試みましたが,いろいろ四苦八苦したので,その備忘録をここに記します.


TeX のインストールはいろいろな方法がありますが,私は世界的に標準的な TeX Live をインストールしようと思いました.数年前,TeX Live 2016 をノート PC にインストールして以来,3年ぶり3度目の挑戦です(本当は毎年更新しないといけないけど,めんどうなのでやっていなかった).

watanabeckeiich.hatenablog.com


私はパソコンに関しては素人なので,Google 大先生に「どうやったら TeX をインストールできるの?」と聞いたところ,次のウェブサイトを見るよう言われました.

リンク:https://user.ecc.u-tokyo.ac.jp/users/user-15826/wiki/?TeX/Install


前回は Windows 7 を使っていたので,ISO イメージを使わず,ネットワークインストーラを使ってインストールしようと試みました.ところが,今回は何時間たってもインストーラが起動しません.

( ,,`・ω・´)ンンン?こんなに TeX Live のインストールは面倒だったかな?と思わず後輩に愚痴をこぼしていしまいました.前回と違い,有線でインターネットに接続しているので,ダウンロード?が一向に終わらないのは奇妙です(10時間くらい経っても変更なし).


ダメ元で,Twitter で「どうすればいいの?」とつぶやいたところ,ISO イメージの方からやってみよう と言われました.どうやら,Windows 10 だと ISO ファイルのマウントが簡単みたいです.どうやら Windows 10 なら,仮想ドライブの知識やDEAMON TOOLなど仮想ドライブを構築できるフリーソフトを知らなくても,ポチポチクリックするだけで,ISOファイルをマウント/アンマウントできるようです.初めて知った.便利な時代になったものね.


TeX のインストールというと,寝る前にインストールを開始して,朝起きたらちょうど終わっている,というイメージが強かったけど,ISO イメージからやると,全部合わせて1時間くらいで終わった.ちなみに,ISO ファイルのダウンロードよりも,インストールの方が時間かかった.感覚としてはダウンロード15分,インストール70分.ただし,ちゃんと測ったわけではないので,この数字は正確ではない.


さて,これでようやく新しく購入したデスクトップ PC で論文を執筆する環境は整いましたが,肝心の研究の進捗がありません.大学時代,テニスサークルの同期に「君は素振りだけは良い」と言われていましたが,今度は「君は環境だけは良い」と言われないよう,頑張ろうと思います.

アメリカ滞在記 part 14(最終回)。

いよいよこの『アメリカ滞在記』も最終回です.昨秋のロンドンの滞在に比べて,1日だけ多く派遣されましたが,意外にも前回よりも時間の経ち方が早かったような気がします.歳をとると時間の感覚が変わるといわれますが,その通りなのかもしれません.しかしながら,時間は不変な量として考えられている(という世界に私は住んでいる)ので,歳を重ねるごとに人生の質を高めていかなければ,自身のQOLを保つことが難しくなるような気がします.人生の質を高める一番簡単な方法は「経験」を積むことだと考えます.自身にとって良い経験も悪い経験もそこから何か得てなおかつその後の人生に活かすことが重要だと思います.今回のピッツバーグ滞在から何を得られたのかな,と振り返ってみると,研究を思うように進められない自分の未熟さだったかなと思います.帰国後はもっとちゃんと研究や勉強に取り組みます.


前回の記事はこちら:

watanabeckeiich.hatenablog.com


目次:

08月25日(Day 93 / 100)

今日も Thomas 君と親睦を深めた.彼は早稲田に何度か来たことあるし,共通の知り合いや知人が多いということもあり,いろいろ話が盛り上がった(と信じている).2年前にダルムシュタットに派遣されたけど,とても優秀なイケメンドイツ人と共同研究ができたり,知り合いが増えたりしたことを考えると,とても有益だったなと実感した.派遣プログラムのコーディネーターだった小薗先生ありがとう again.当時は学振DC1 の面接の準備などでいろいろ憂うつだったし(結局面接は落ちた),滞在先の部屋で火災報知機を2度鳴らしたり,ドイツ語がわからない上に寒かったので外出せずにずっと部屋に閉じこもっていたりといろいろ大変だったけど,それらも含めて,今となってはいい経験・思い出だ.


ドイツの博士課程の学生は,日本とは違い,学位取得後にポスドクなどで大学に残り続ける人は少ない(およそ10%くらい?)だけど,彼はアカデミックな道を希望しているようだ.やっぱり優秀な人はちゃんと大学に残る傾向にある気がする.日本とは大違いだ.どこでポスドクをするかはまだ決まっていないけど,Galdi 先生が予算を獲得したらピッツバーグポスドクをするかもしれないとのこと.でも,早稲田の可能性の一つとして挙げられるよって言ってた.世界的に見ると外国でポスドクの経験を積むのが当たり前な気がする.自分もそろそろポスドク(または助手助教)をどこでやるのかいろいろ考えないとダメだよな.海外は嫌だなあとか思っていたけど,そんなわがままなことを言っている場合じゃないよな.英語勉強しなきゃな.


彼と自然に触れ合った後,帰宅した.明日の弁当の準備でもするかーとか思って冷蔵庫をのぞいたら誰かが私が金曜日に作ったものを食べたようだ(しかも食べかけ).マジでだれだよ......しかも瓶に入れてあったピクルスもかじった跡あるし......めっちゃ萎えたし,キレそうになった.キレたけど.誰かの食べかけを食べようとも思わないし,衛生面も考慮して,残りはすべて捨てた.農家のみなさんごめんよ......シェアハウスは善意のない人も滞在することがあるんだね.学習した.ここの家に滞在するのも1週間弱なので,残りの日は外食などで済ませることにしよう.とりあえず,airbnb を通じて,ホストの人に連絡した.

08月26日(Day 94 / 100)

ホストの人からメッセージが届いていた.ほかの滞在者に事情を聞いてみるねとのこと.こういう対応の早さがホストの高評価につながっているんだろうな(airbnb ではホストの人は滞在した人から評価されるシステムになっている).


朝起きてキッチンに向かったら,カーネギー・メロン大学で数学の講義を持っているおばちゃんとお話をする機会があった.どうやらおばちゃんも被害にあったらしい.結構怒っているとのこと.たぶん,ホストの人から連絡を取り合ったのだろう.


午前中はここ2ヶ月の研究の進捗を振り返っていた.思ったことをつらつら記事にしてみた.

watanabeckeiich.hatenablog.com

この2ヶ月目立った進捗がないのは悲しいよね.泣いちゃう.2相流の研究の続きをやれば結果は出るんだろうけど,査読まだだし,正直研究の面白さを見出せないから気が進まないんだよな.なんかもう当たり前な結果しか出せない気がする.まあ帰国したら少しずつ再開しよう.


午後は reflection argument を考えていたけど,time trace を考えれば上手くいくのかなと思っていろいろ調べていた.Maximal regularity の抽象論の論文をいくつか読んでみたけど,トリーベル・リゾルキン空間を考えることは自然だとわかった.でも扱いに苦慮するから, p=q としてトリーベル・リゾルキン空間を「回避する」というのが German-style なんだなと理解した.抽象論に頼らなければ  p \neq q の場合を扱えるようになりうるけど,そのためには Fourier 変換を用いた解表示か,作用素の imaginary power を考えなければいけない.どちらも contact line problem の場合には上手くいくとは思えない.


と考えていたけど,time trace を考えても仕方ないことがわかった.そりゃそうだ.いったい何を勘違いしていたんだ.明日別のアプローチを考えてみよう.


08月27日(Day 95 / 100)

テレンス・タオ先生がすごい共著論文を投稿したようだ.私はあんまり詳しくないけどなんかすごそう(小並).

Large prime gaps and probabilistic modelsterrytao.wordpress.com

arxiv.org

はあ,私もテレンス・タオみたいにめちゃくちゃ研究できるようになりたい人生だった.


今日もいろいろ考えてみたけど,reflection argument の方法で上手くいくのかよくわからなくなってきたな.一応 Amann 先生の(最近出版された)本に edge があるような領域についての記述があるけど,拡張作用素や制限作用素の存在は「当たり前」ということではなさそうだ.んー,難しいなあ.本当によくわからない.


はあ,もうどうしようもないなあと思って MathSciNet で論文を漁っていたら,Eskin 先生(おじいちゃん数学者・82歳・現役)が昔 inhomogeneous boundary data に対する parabolic な pde に対する一意可解性と解表示を求めていたようだ.知らなかった.一応論文を読んでみたけど,極座標系を考えていない点が不思議.とはいえ,本質的には Mellin 変換を使った証明なので,いままで見つけたやつと本質的には変わらないような気がする.しかし,Florova 先生とは違うアプローチのようだ.たぶん.でも,boundary data を zero 拡張しているので,そこは少し怪しい気がする.やっぱり,どういう拡張を考えるか?ということが contact line problem を解く鍵のような気がする.とりあえずわかったこととしては,解表示を求めようとしたら Mellin 変換を使わざるを得ないので,そうした場合は  L^p-framework への道が閉ざされるということである.もちろん,特異積分の議論から L^p-framework に拡張できるかもしれないけど,要する労力と得られる結果が見合わない気がする.やっぱりまずは  L^2-framework で結果を得るしかないのだろうか.


 L^2-framework に特化するならエネルギー法を使ったほうがいいなと思って,自由境界問題をエネルギー法を使って考えている論文を探した.まあ大体どれも弱解を考える必要があるようだ.指導教員や Hieber 先生など,strong solution に関する優れた結果を出し続けている先生方は弱解によるアプローチを「嫌っている」節があるけど,それは  L^2-framework でしか結果が得られないから,ということなんだろう.私はそんなわがままを言っている余裕はない気がしてきたので,とりあえずは  L^2-framework で結果を出すことを目指そう.Homogeneous boundary data に対する maximal regularity property はすでにわかっているので,Prüss-Simonett の monograph を読み返して弱解に応用することを考えてみるのはいいことかもしれない.でも,まずは Bae 先生の論文を読んでアイディアを学ぼう.


08月28日(Day 96 / 100)

朝コーヒー飲みながら Bae 先生の論文を流し読みしてみたけど,ちょこちょこ Beale 先生の結果を引用しているな.んーー,なんか contact line problem の場合に応用するのは難しい気がしてきたな.やはり異なる境界条件をもつ境界が「接触」する singularity はかなり厄介なのかもなあ.一応,Dirichlet boundary ではなく,Slip boundary にしておけば,boundary data の属する関数空間の regularity は一致するからまだマシなんだろうけど,それでもよくわからない.


よくわからないからとりあえず大学に行こうとしたら,大学に向かう道の途中で警察官がたくさんいた.

写真では少しわかりにくいけど,写真の奥のほうに警察官が集まっている.写真だと2人くらいしか居ないように見えるけど,実際には7人くらいいたと思う.写真を撮影したときは数人家の背後に回っていたと思う.防弾チョッキみたいなのを着てたし,何が起こるのかわからなかったから,現場を早歩きで通過したよね.アメリカの何が怖いって一般人が合法的に銃を所持できることなんだよな.現時点で(2019年の)銃の発砲事件は 35,000 件を優に超えているし,死者も 9,000 人を超えているし,なんなんだこの国は.国土が広いとはいえ,多すぎでしょって思っちゃう.自動車社会というのも,自分の身は自分で守る,というアメリカンな思想に基づくものなのかもしれない.


お昼はピザを食べたいなと思ったのでピザを食べた.

みなさんご存知の通り,私の文章は「〇〇をしたいから〇〇をした」という表現が多いです.Galdi 先生と食事をした際(Day 90 / 100 参照)も,Galdi 先生から「秋の研究集会の organizer が前川先生ではなく菱田先生に代わったのはなぜなの?」と聞かれたとき,「理由はわからないけど,たぶんなんか理由があるのだろう」と答えてしまった.そしたら「いや,そりゃそうだ」と苦笑いされてしまった.そりゃそうだ.


さて,今日はまじめに Mellin 変換によるアプローチを考えてみた.きちんと計算をチェックしてみたけど,うまくいかない…… Mellin 変換すれば解表示は得られるだろうと安易に考えていたのはなぜなんだ.よく考えてみると,Mellin 変換によるアプローチが有効なのは定常かつ2次元の場合「だけ」かもしれない.んー,困ったなあ.


ところで,Galdi 先生から本を借りているので,いつ返せばいい?ってメールで聞いたら,郵便受けに入れておいてくれとのこと.いや,どこだよって感じだ.まあ,秘書の方に聞きばいいだろう.また,先生から

I hope you will be still thinking of the problem I suggested.

という,大変ありがたいお言葉をいただいた.ん〜〜,なんか私のことを買いかぶりすぎなんじゃ無いかな.正直,私がこの問題に取り組むには10年早い気がするんだけどーーー.なんか前から思っていたけど,実力がないのに放置されるのはきつい......でも,先生の犬になってせっせと研究するよりはマシだな.


はあ,とはいえ,今日も憂うつになってしまった.はっきり言って,なんのアドバイスやヒント,議論を抜きに,自力でこの問題に取り組むのは無理がある(切実).帰国したら指導教員とポスドクのXさん(まだ日本にいるかな)と小薗先生に何か手がかりはないか聞いてみよう.


夕食は Thomas 君と enjoy した.

サブウェイみたいなイタリアン?キッチン.たぶん初見じゃ無理.何が無理ってメニューがどこにあるのかわかりにくい.私はスパゲッティを注文した.

他人が作ったスパゲッティをいただくのは4ヶ月ぶりくらいだな.たぶん.


08月29日(Day 97 / 100)

午前中はいろいろ文献を探してみたけど,何もわからず.今日こそ進捗を出すぞ!と思い始めてから早くも2ヶ月以上経ってしまった.こんなにいろいろ考えても未だに有効な方法が見つからないのは,完全に自分の実力不足である.勉強が足りないのか,問題が難しすぎるのか,どっちなんだろうな.たぶん両方だろう.早い話が Wilke 先生や Köhne 先生の reflection argument を「信じる」ことができれば,ささーっと研究が進むんだけど,残念ながら彼らの証明を理解できない.正しいような気はするけど,本当なのかどうか,よくわからない.もし正しいとしても,証明の記述が足りなさ過ぎると思う.


今日のお昼はスタバ.本当はマクドナルド行こうと思っていたけど,めちゃくちゃ混んでいたので諦めた.大学の新学期,授業が開始されたということもあって,学生だらけだったため.

スタバでコーヒーを頼んだんだけど,写真の通り,めっちゃ豪快に店員から渡された.うん,これがアメリカン・スタイルなんだな.異国の文化はきちんと尊重しなければならない.


午後も contact line problem について考えてみたけど,やはり解表示は難しそうだな.いろいろ文献を探したけど,何もわからない.はあ,こうして今日も終わってしまうのか.気分転換に,(興味本位で)同期のT君の論文を検索したら,めっちゃいいジャーナルから出版されてた.んー,なんかどんどん彼に差をつけられている気がするなあ.彼をライバルと呼ぶのはおこがましいけど,ライバルだと思って私も研究を頑張らないとなあ.研究はレースではないし,コンテストでもないけど,同級生と切磋琢磨することは重要だと思う.まあ,現時点では切磋琢磨するどころか,彼に圧倒的差を見せつけられているだけだけど.実際に彼はもうすでに博士論文書き終わっているし(たしか).


と,ひがんでいても仕方ないので,Maz’ya 先生や Solonnikov 先生らの論文を改めて読んでみた.どうやら,inhomogeneous boundary data を扱うには,まず境界条件を満足する解を構成して,それでもって homogenous bondary data の場合に帰着させているような気がする.私がいままで親しんできた手法とは真逆だ.証明はなんかの雑誌に書いてあるらしいけど,古すぎて読めない(アクセスできない).一応,Maz’ya 先生の近年の論文も似たような議論をしてるけど,mixed boundary ではないから機能するかは確信できない.


そこで,求めたい解が  V (r, \phi, \xi) = r^s v (\phi, \xi) と書けると「信じ」て,計算を進めてみたけど,レゾルベントパラメータ  \lambda とメリン(変換に対応する)パラメータ  s が混在するから,かなり複雑になりそうなことがわかった.計算の正当化はもちろん,形式的な計算も大変になりそうなことがわかった.一見,パラメータ  s を適当な定数に「固定」して考えてみても良さそうだけど,計算を正当化させるためには,少なくとも複素平面上のある strip に含まれる任意の複素数,としなければならないんだよなあ.もしも bondary data が contact line で vanish していれば,Eskin 先生と似たような議論から解表示を得られるしれないなあと考えてみたけど,自由境界問題の場合,boudanry data が vanish するはずが無いと思うんだよな.でもこういう思い込みがダメかもしれない.


はあ,もう何もわからないし,研究の進捗は何も出ないし,自分は落ちこぼれだなあって痛感する.仕方ないので,夕飯はサブウェイに行ってむしゃむしゃサンドイッチを食べた.何度もお世話になったこのサブウェイも今日が最後かな.ありがとうサブウェイ.


帰宅後,そういえば先月投稿した論文,いつになったら under review になるんだって思ってステータスを確認してみたら,昨日付けで under review になってた.一安心.ちゃんと査読されますように.


08月30日(Day 98 / 100)

朝起きたら大学から「早稲田アリーナで、ラグビーワールドカップ2019™を観戦しませんか?」というお知らせがきてた.文キャンのあの建物,早稲田アリーナって呼ぶのか.初めて知った.個人的にはラグビー観戦好きだし,参加したいなって思ったけど,大学構内だからビール飲みながら観戦できないんだろうな.HUB に行くのが正解かな.


改装工事してたドーナツ屋さんがオープンしたらしい.

朝からドーナツをモリモリ食べてめっちゃ甘そうなジュースを飲むアメリカ人,元気すぎでしょ.


今日もいろいろ考えてみたけどやはりダメ.もう方法が思いつかないよ.うまい方法かな?と思いついたとしても圧力項を Helhholtz projection でささっと消せるわけではないので,めんどくさい.Edge がある領域なら,極座標で考えてみるという方向性は正しいと信じていたんだけど,どうやら Laplace 作用素に起因する  r^{- 1} \partial_r の項を処理するか,というのが一つの難点なんだよな.私が知っている限りでは,Mellin 変換は有効な技だけど,そうすると  (\lambda + \lvert \xi \rvert^2) v の項が厄介になる.一方,渦度を zero と「仮定」して(つまり  v_\phi \equiv 0 なる解の構成を目指して)Bessel 関数を使うのも手だけど,この場合は予め圧力項を消去しておく必要があるように思える.ではいっそのこと Mellin 変換を使うのをやめて, x \mapsto e^x と変数変換して Fourier 変換を使えばいいのではないか,という発想も浮かぶけど,この場合は  e^{2 x} (\lambda - \partial^2_y) なる項が現れるので,「いつも」と同じように解析することはできない.Prüss-Simontt (2007) や Maier-Saal (2014) の論文を想起すれば,operator sum の方法が有効に見えるけど,inhomogenous boundary data の場合を扱うには(たしか)boundary symbol を計算する必要があるし,operator sum の方法で考えようと思ったら,右上半平面の境界が自由境界,左上半平面の境界が slip boundary という奇妙な半空間における Stokes 方程式を考えなければならないように見える.これで上手くいくのかどうか知らなし,わからないけど,この場合は contact line における境界条件が重要になってくるような気がする.しかしながら,contact line における境界条件をどう定めるかは(物理的に)未解決問題の一つなので,「適当」だと思った条件が本当に正しいのかはわからない,という状況に陥ってしまう.


一方で,contact line problem を「解いた」とされる,Wilke 先生の論文は証明にギャップがあってよくわからない.なんで Dirichlet boudanry data が偶拡張や奇拡張できるんだ......本当に正しいのか疑問.一方で,Köhne 先生の論文で扱われている reflection argument は Wilke 先生とは少し異なるけど,これも議論が足りないと思う.ざっくり言うと,boundary data を領域に拡張して,その後(別の)boundary に trace する,というものだけど,Mitrea-Mitrea (2007) の論文を読む限り,その正当化は結構大変な気がするんだよな.領域の制限とかもしっかり考える必要があるし,作用素が isomorphism なのかも証明する必要があると思う.じゃあ,Mitrea-Mitrea と同じようにすれば上手くいくかというとそうでもなくて,contact line problem の場合は自由境界に圧力項が現れるから注意が必要になると思う.Reflection argument の場合は boundary そのものを「消し」て,半空間の問題に帰着させるという手法だけど,boundary が「消える」ことの証明が容易ではないと思う.もしこれができれば後は難しくないと思うけど,その証明方法は私にはわからない.まあ,これは私の実力不足だし,勉強不足ってことなんだろうけど.


はあ,本当に contact line problem は解けるのだろうか.定常の問題で精一杯であるような気がするんだけど.もちろん,boundary data を 0 である場合はめちゃくちゃ簡単なんだよな.んー,自由境界問題に対応する固定境界問題を考えない方が簡単なのかな.わからんな.はい,というわけでアメリカ滞在中の研究進捗は zero です~~~.悲しいなあ.


というか,今日も院生室は騒がしかった.院生室でなかなかの大音量で映画見るのはやめてほしい.雑談もかなり盛り上がったりしているし,みんな学生気分が抜けていない気がする.まあみんな学生だし,自分も他人のことは言えないけど.でも修士以上の学生だったら,大学時代の同級生は普通に仕事しているわけだし,もっとプロフェッショナルに研究に向かうべきなんじゃない?って思う.たとえ勉強や研究の内容がプロとは程遠い内容だったとしても.ちなみに,雑談の内容はTAに関することだった.そんなに嫌ならやらなきゃいいなのに.時間の無駄じゃない?とか思ったけど,授業料免除とか美味しい話の変わりにやらなければならない duty なのかもしれない.


はい,というわけで,しばらくお世話になった机ともおさらばです.


夜は Thomas 君とバーに行ってハンバーガーを食べようと約束していたので,お互いニコニコしながらバーに行った.入店してすぐ店員に「身分証の提示をお願いします」と言われてしまった.Thomas 君はパスポートをさっと出す一方で,私はじっと彼を見つめるだけ.そう,パスポートを忘れてしまったのだ.先週末の彼と

私「バーに行ったら年齢確認ってされるのかな」

T「いやーされないと思うよ.3週間前ぼくが行ったときはされなかったし,お互い20歳以下には見えないさ」

という会話を交わしたから,てっきりパスポートは要らないのかと思っていた.もちろん,部屋に戻ればパスポートはあるんだけど,往復で30分くらいかかるし,彼をそんなに待たせるのは申し訳ないので,結局私はずっとコーラを飲んでいた.居酒屋でアルコールが飲めない人の気持ちがわかった気がする.


バーで3ヶ月ぶりにビールを飲みたかった私はそこそこショックを受けていたが,そんなショックを飛ばすくらいハンバーガーは美味しかった.

追加で注文したオニオンリングも美味しかった.Thomas 君とはスポーツと数学の話をした.ちなみに,来春,Farwig 先生がオーガナイザーの研究集会があるよと教えてもらった.

08月31日(Day 99 / 100)

明日は朝6時くらいには空港に居なければいけないので,実質上今日が滞在最終日.今日は元気に散歩した.


最後の昼食は,せっかくだしレストランで食べようとか考えていたけど,昼食時に近くのレストランには家族やカップルみたいな人しかいなくて,そんな中ボッチで行くのは少々気が引けたので,仕方なくハンバーガー屋さんで食事を済ませた.

二日連続のハンバーガー.これは太る(確信).大学の近くにあるアイスクリーム屋さんに一度も行っていなかったなと思い,アイスクリームもいただいた.

チョコとストロベリー.これは太る(確信).ちなみに夜はピザを食べた.

美味しかった.アメリカでの最後の晩餐にふさわしいな(?).これは太る(確信).


明日は朝8時発の便だけど,朝ちゃんと起きれるか不安だし,それ以上にバスがちゃんと来るのかどうか不安だったので,今夜空港に行くことにした.というわけで,3ヶ月ちょいお世話になったお部屋とも今日でお別れです.

どう考えても一人で寝るには大きすぎるベッド.

広々とした机.立派な机なのに研究の進捗を出せなくてごめんよ.君は何も悪くない.


空港に着いて,寝どころを確保した後,今日どのくらい歩いたのかなって iPhone を開いてみたところ,13キロくらい歩いたらしい.

まあまあかな.今後も休日はこのくらい歩くようにしたい.


09月01日(Day 100 / 100)

空港で寝ようと思ったが,案の定熟睡とまではいかなかった.思ったよりも寒かった.まあ,4時間くらいは寝れたのでよしとしよう.寝不足の方が飛行機の中でぐっすり寝れるような気がする(?).ピッツバーグ空港は朝6時から飛行機が離陸し始めるので,4時くらいには人がぞろぞろスーツケースを持って空港にやってきた.その音で目が覚めてしまったといっても過言ではない.


4時くらいに起きて,いろいろネットサーフィンしたあと,5時くらいにチェックインした.スーツケースが制限重量を数キロ超過していたので,荷物を二つに分けた.ロストバゲージになりませんように.さすがにカウンターや保安検査は空いてた.


保安検査を済ませた後,コーヒーを買ってこの記事をつらつら書いた.いよいよ帰国かと思うとわくわくする.帰国後,やるべきことはたくさんあるけど,機内にいる間はその存在は忘れよう.



今回で『アメリカ滞在記』の連載は終了となります.今回に海外派遣のレポートについては近日中にスーパーグローバル大学創成支援「Waseda Ocean 構想」活動報告 |スーパーグローバル大学創成支援 早稲田大学 数物系科学拠点にて公開される予定です.今まで読んでいただきありがとうございました.

研究進捗2019/08/27

早いもので8月も最終週となりました.ピッツバーグの滞在も残り1週間です.もし帰国を1週間ずらせれば群馬で開催されている発展方程式若手セミナーに参加できましたが,私に時間を操る能力もなければドラゴンボールも持っていないし,タイムマシンもまだ開発していないので残念ながら叶うことはありませんでした.同世代の学生や歳の近い先輩や後輩と交流や情報交換できる貴重な機会に参加できないのは本当に残念に思います.来年こそは参加しようと考えています.この調子でいくと,私は隔年に参加する変な人に勘違いされそうです.



<これまでの進捗>

・秋の学会のスライドを作成した.明らかに10分で発表できる量ではないけど仕方ない.

・この結果はポスドクだった Patrick Tolksdorf さんとの共同研究に基づくものであるけど,彼はこの秋からドイツのどっかの大学の Junior Professor になるそうだ(注:日本の准教授とは違う).学位取得して2年で Junior Professor になるのはすごいなあって思う.やっぱり優秀な人は違うなって思った.

コリオリ力を伴う圧縮性粘性流体の解析は,いろいろ勘違いしていた上に,望みたい結果を出せないことがわかったので諦めた.しょうもない結果は得らそうだけど,論文にする価値はない.小さい初期値に対する時間大域解を構成しても何も面白くない.残念.もし初期値を,コリオリパラメータに拠らずに一様に「絞る」ことができればいい結果になるけど,難しいと思う.もしこの場合は空間無限遠方で増大する初期速度場に対する時間大域解を構成することができるようになるけど,私にはわからない.もっと勉強したり,経験をつんでから再チャレンジしよう.

・仕方ないので,ナビエ・ストークス・コルトベーグ方程式の時間大域解の論文を書いて投稿した.あまりびっくりするような結果でもないし,証明に少し不備が見つかったので(指摘していただいたTさんありがとうございます),興味がある人以外は読まないでください.でも,個人的には,イントロだけは面白いかなと思います.

・Contact line problem の定式化は Solonnikov 先生の定常のモデルを非定常に変えるだけで良さそうなことがわかった.Wilke 先生も過去に contact line problem を研究しているけど,彼は自由境界が固定境界(rigid surface)と 90 度に接触しているという仮定を課していて奇妙なので信用できない.実際に,固定境界問題に書き直したとき,自由境界に対応する固定境界は rigid surface と直交するのは明らかだからである.つまり,彼の仮定は「余分」である.また,彼は reflection を用いて解を構成しているけど,証明にギャップがあり,とても信用できない.実際に,Galdi 先生にこのことを聞いたところ,たしかにギャップはあると仰っていた.よって彼の論文は読む価値は十分にあるけど,盲目的に信じてはいけないと思う.要は,証明は正しくないけど,結果は正しいと思う.

・Contact line problem を解決する鍵は "quarter" space,つまり angle が  90^\circ となるような infinite sector 領域で解を構成することである.もし半空間のときと同様に Fourier-Laplace 変換を用いて解表示を行おうと思うと,Mellin 変換が必要になる.具体的には,座標系を極座標系に直して,動径を  x \mapsto e^x と直していろいろ考える必要がある.この場合,微分作用素に指数関数を掛け合わせた作用素が出現する.そうすると Fourier 変換が使えないので,Parseval の等式を使うか,operator sum の方法を使って解析するしかない.しかし,operator sum の方法は半空間の結果に強く依存しているので,contact line problem のように mixed boundary condition の場合には機能しない.したがって,contact line problem に対する  L^p-theory を作ろうと思ったら reflection を考えるしかないように思える.そうすると,考える領域は「まっすぐ」なシリンダーしか考えようがないと思う.でも,このような領域だと自由境界を高さ関数を用いて表現することが可能なので,自由境界問題を扱おうと思ったらこのような領域で考えるしかないと思う.

・もちろん,非圧縮ストークス方程式を扱うので,Helmholtz-Weyl 分解を考えなければならない.Contact line problem の場合は,Laplace 方程式の弱 Neumann 問題ではなく,弱 Dirichlet-Neumann 問題を考える必要がある.特に,Neumann boundary と Dirichlet boundary が「接触」するような場合を考えなければならない.つまり,いわゆる Zaremba’s problem を解かなければならない.領域が Lipschitz である場合は Mitrea-Mitrea によって証明されているけど,contact line problem に応用するには領域が rough 過ぎる.実際に,Lipschitz 領域で考えているので,Sobolev の埋め込みを使うことが難しい.自由境界問題を扱う場合,Sobolev の埋め込みを使えないと話にならないので,彼らの結果は残念ながら役に立たない.

・Köhne 先生によると contact line を許すような領域を weakly singular domain と呼ぶらしい.でも他の文献でこのようなワードを見かけたことがないので,もしかしたら彼のオリジナルワードなのかもしれない.どうやら Simadar-Shor の本(?)に載っているらしいけど,アクセス権がないので何もわからない.帰国したら探そう.

・いずれにしろ,Stokes 方程式の半空間の結果が必要になる.いろいろな文献を読んでみたけど,(線型のレベルでは)解の一意可解性と既知関数に対する仮定は「必要十分条件」になっているべきだと昨日悟った.もちろん,非線型の問題に応用するなら十分条件でいいんだけど,少なくとも完璧ではないなと思った.

・Rigid motion を勉強した.ようやく「初期値が rigid motion と直交する」という柴田・清水の論文の意味を理解した(と思う).説明があまりないのはちょっと不親切な気がする.少なくとも Lagrange transform を使えるような領域ならこのような仮定を考えることができる......くらいは書いたほうがいいような気がする.まあ,相転移が生じているようなモデルの場合は rigid motion を考えることができない(できるかもしれないけど私にはわからない)ということがわかった.

ダルムシュタットからやってきた Mads Kyed 先生の学生と仲良くなった.特に,先週末彼とお出かけして親睦を深めた.私の文法めちゃくちゃな英会話を理解しようとしてくれた彼には感謝しかない.最近まで,英語はとりあえず話の意図が伝わることが大切!とか思っていたけど,そんなことを言っている場合じゃない.さすがに反省したので,なるべく早いうちに英語の勉強・練習を開始しよう.

・彼と自然に触れ合うことでメンタルがかなり回復した.

・彼の誕生日に Galdi 先生と彼と私でとても立派なレストランで食事をした.Galdi 先生ごちそうさまでした.Galdi 先生からたくさんの体験やエピソードを聞けた.大変ためになった.個人的には10回のミーティングより1回の懇親会の方がたくさん(の種類の)情報を得られるような気がする.今後の研究集会ではなるべく懇親会に参加するようにしよう.


<今後の目標>

・秋の学会の発表練習をする.

・11月に RIMS で発表することになったので,その準備をする.

・Contact line problem の線型の理論を証明して,まとめる.できれば時間局所解の存在くらいまで示す.

・去年書いた二相流の有界領域における時間大域解のちゃんと書き直す.

・学振PDで申請する研究内容を考えたり,受け入れ教員を探し始める.

・次の論文をきちんと丁寧に読む:

01. Hideo Kozono, Weak solutions of the Navier-Stokes equations with test functions in the weak- L^n space. Tohoku Math. J. (2) 53 (2001), no. 1, 55--79. MR1808641

02. John G. Heywood, On uniqueness questions in the theory of viscous flow. Acta Math. 136 (1976), no. 1-2, 61--102. MR0425390

03. Giuseppe Mulone and Franco Salemi, On the hydrodynamic motion in a domain with mixed boundary conditions: existence, uniqueness, stability and linearization principle. Ann. Mat. Pura Appl. (4) 139 (1985), 147--174. MR0798172

・次の本で英語の wrting を勉強する.

英語ライティングルールブック第3版

英語ライティングルールブック第3版




毎年秋は何かと忙しいような気がします.たぶん今年の秋も忙しくなるかもしれません.寝不足でぶっ倒れることのないよう,健康を優先して生活しようと思います.次回の研究進捗は10月下旬を予定しております.では.

アメリカ滞在記 part 13。

とうとう帰国まで残り1週間となりました.今週は新入生の学生や帰省していたであろう学生たちを見かけることが多かったです.新入生の顔を見るとみんなまじめで英語がぺらぺらそうだなあと思ってしまいます.新入生の顔を見て入学してから様々なことを経験したなあと記憶がフラッシュバックしました.自分が大学に入学したのはかれこれ7年前になりますが,入学当時から現在の姿を予想することはできなかったでしょう.私生活はたくさん谷があって少し丘があるような感じでしたが,数学に関して言えば,修士課程に進んでから,特に修士2年からたくさんのことを学んだなあと思います(主観).7年後の自分も「たくさんの研究したなあ」と思えるようにコツコツ頑張りたいなと思います.7年後だと私は32歳なのでまだフィールズ賞を目指せる(狙えるとは言っていない)資格ですが,名誉や栄誉をあまり気にすることなく,面白いと思える結果をたくさん残せていけたらいいなあと思います(願望).


前回の記事はこちら:

watanabeckeiich.hatenablog.com


目次:

08月18日(Day 86 / 100)

Contact line problem の論文をいろいろ探した.全く知らなかったけど,ステファン問題の場合は Radkevich 先生による結果があるみたいだ.

リンク:https://iopscience.iop.org/article/10.1070/SM1991v069n02ABEH001246

やっぱり旧ソ連,ロシアの数学者はすごいわ.証明はちゃんと読んでいないけど.他にもいろいろ文献を探したけど,ヒントになりうるものは見つからなかった.


さて,今日の昼食は,パンが美味しくないパン屋さんでサンドウィッチとマカロニを注文した.

驚くことに,サンドウィッチのパンが美味しかった.いつもおまけとして付いてくるパンもこれくらい美味しければお店の人気が出そうなのに.


帰宅後はグータラ過ごしていた.暇つぶしに賃貸をいろいろ探していたけど,やっぱり都内だと高いんだな.家賃として6万円は出さないと生活の質がかなり下がりそう.やはり毎月いただいている日本学術振興会サンからのありがたいお小遣いで宝くじや馬券でも買って一発逆転を狙わないといけないのかもしれない.


と,くだらないことを考えつつ,夕食を作った.

パスタは日本から持参したもの.まあまあ美味しかった.パスタを自炊するのもこれが最後かな.日本から持参した食材で残っているのが,レトルトカレーとお麩なんだけど,お麩の使いどころが全くわからないので,逆輸入する予定.


その後だらだら論文や MathSciNet を眺めていたら,上手い具合に方程式を「分解」する方法を思いついた.明日確認してみよう.


08月19日(Day 87 / 100)

昨日少し夜更かししたせいで,大学には10時過ぎくらいに行った.部屋に向かう途中で Galdi 先生に遭遇した.ダルムシュタットから来ているトーマス君とこれから議論するところだったらしく,「あとで君のところに行くよ.30分待ってて」と言われたけど,結局やってこなかった.ひょっとして30分後私の部屋に来いって言ってたのかな.わからない.でも Galdi 先生の性格だったら,"Please" come to my office と言うと思うんだよな.Please は言っていなかったと思うから,来いとは言われていないはず.


さて,昨日思いついた方法をちゃんと手を動かして確認したら,概ね正しそうなことがわかった.一歩前進.方程式系を熱方程式とポアソン方程式に分解できる,と言うのはポイントが高いと思う.もしかしたら見落としている部分や勘違いしている部分もあるかもしれないので,一応簡単に LaTeX でまとめて明日か明後日くらいに Galdi 先生にメールで報告しよう.表面張力がない場合しかまだ考えていないけど,ある場合も......きっとできるだろう(希望).


秋の学会まであと1ヶ月だなあと考えていたら,出張申請をしていなかったことを思い出した.今年度から出張申請が電子申請になったのはいいんだけど,レイアウトを何とかしてほしい.てか,5月の仙台出張の分のお金がまだ振り込まれていない気がするな.んー,帰国したらいろいろ事務作業がありそうで嫌だなあ.


夕飯は土日に買えなかったピザを買った.

このピザを食べるのも最後......かな.もしかしたらあと1回くらいは食べるかもしれないけど.


08月20日(Day 88 / 100)

どうしても印刷しなきゃいけない書類(3ページ)があるから,院生室の人に「プリンターある?」って聞いたら「知らん」って即答された.んー,やっぱプリンターないのかな.使っている人も見かけないしな.私が嫌われているから教えてくれなかった,ということではないと信じよう.日本ならコンビニでささっと印刷できるから困ることはなかったけど,海外だとそういうわけにもいかないので,帰国したらモバイルプリンターを買おう.何かおすすめがあれば教えてください.


昨日,一昨日で思いついたアイディアは,元の方程式系と「分解」した方程式系は同値ではないことがわかった.やっぱダメなんだな.Solonnikov 先生の最初の論文を読むと "quarter" space での解析がベースになっているので,やはりこの空間での解析をまずやらないとダメだな.ただ,この場合は inhomogeneous な boundary data を扱うのが大変なので,Wilke 先生のような reflection argument を使わざるを得ないのかな.わからないけど.


今日はダルムシュタットから派遣されているトーマス君とどんぶりを食べた.

彼と私の研究分野はほぼ同じなので,話に困ることはなかった(すらすら話せたとは言っていない).彼と話してて思ったけど,論文書けたら何かしら指導教員からフィードバックはもらうよね.ふつうなら.


そんな彼は明後日誕生日らしい.夜 Galdi 先生と食事するから一緒にどう?と誘われた.もちろん快諾した.


08月21日(Day 89 / 100)

一日中 contact line problem を考えていたけど,何もわからない.とりあえず,少し勘違いしていた部分の理解を訂正することはできたけど,結局何もわかっていない.Galdi 先生からも返信ないしどうすりゃいいんだ.


いろんな人から「わからないなら先生に聞けばいいんじゃない?」って言われそうだけど,たぶん先生もわからないんだよな.いろんな偉い先生が書いた論文を読むと「この問題(私が取り組んでいる問題)はかなり難しいので,この論文ではまず~~を証明する」って書いてあるから,やっぱり難しい問題なのだろう.なぜ一流の数学者たちが(難しすぎて)投げた問題に私は取り組んでいるのでしょうか.正直嫌になってきたな.


いろいろ考えたけど,方向性としては

① Wilke 先生の謎の reflection argument を使う.

② Mellin 変換+Parseval の等式で解をダイレクトに評価する.

③ Operator sum method で最大正則性を証明する.

④ その他

しかないと思う.一番いいのは①で,この場合は半空間における結果から最大( L^p - L^q)正則性が出せる.ただし,彼の証明が理解できないし,本当に正しいのか疑問.②は古典的な方法だけど,レゾルベント評価を出すとなると定常解の存在の証明と少し違う議論を行う必要があり,有効かどうかはわからないし,Mellin 変換の逆変換が少し厄介なので,Parseval の等式の力を借りる必要がある.そのため, L^2-framework でしか考えることができない.これに関連するのは③の方法だけど,Free boundary と slip boundary を「くっつけた」半空間における解の存在をまず証明する必要がある.その後,適切な変数変換と operator sum method により最大正則性を証明できるかもしれないけど,boundary data が inhomogeneous なのが厄介である.こう考えてみると①が一番いいんだけど,証明が意味わかんないんだよな.領域の対称性を用いていろいろ議論しているけど,「それはそうなの?」って思うところが多すぎる.まあ自分に知識がなさ過ぎるだけだと思うんだけどね.


本当に③の方法は「良い」のか再考してみた.ずっと考えてみたけど,やっぱり,動径が非負なので,これを  \mathbb R に拡張しようと思ったら  r \mapsto e^x なる変換を考えないとダメみたいだ.そうすると微分作用素に指数関数を掛け合わせたものを考える必要があって,Fourier 変換を施そうとする際にじゃまになる.なんとかしてこれを上手く解決できないか考えてみたけど,無理そうだ.一つ案として思い浮かんだのは,負の動径を導入する,というものだったけど,この場合は偏角をいじらないと負の動径が well-defined にならないのでだめ.困ったなあ.


08月22日(Day 90 / 100)

やっぱり contact line problem を解くには reflection しかダメかなあっていろいろ漁っていたら Köhne 先生の博士論文(?)に少し載っていることがわかった.

link.springer.com

いろんなことが丁寧に記述されていて,もっと早く知りたかったなあって思った.持っておいて損はないと思うから,帰国したら購入しよう.でも,この本ではどうやって証明しているのかなあって読んでみたけど,Wilke 先生とあんまり変わらなさそうだった.んー,やっぱ reflection はダメなのかなあ.


今日は Thomas 君の誕生日.そして,Galdi 先生と3人で見晴らしのよいところでディナーです.

うん.いかにも高級レストランという感じ.こういうところで食事をするのはいつぶりだろうという感じ.

ここのお店はシーフード.生牡蠣を(一人あたり)4つずつ食べ,烏賊のから揚げを少し食べたあとにこのメインを食べたのでお腹いっぱい.あとで調べてみたらハタを食べたみたい.初めて食べたような気がするけど,美味しかった.しかも骨はなくて食べやすかった.お皿の手前に転がっているのは海老.もちろんこれも美味しかった.


その後,じゃデザートを頼もうということになったのでチーズケーキを注文した.

Galdi 先生はチーズケーキが好きだけど,故郷のイタリアにはチーズケーキがないことを嘆いていた.ケーキの写真は暗かったけど,その代わり夜景がきれいになっていた.

ピッツバーグダウンタウンを一望できる.こんなところでイケメンとディナーしたら惚れてしまうことでしょう.ちなみにピッツバーグ大学はダウンタウンから車で15分走ったとこにあるので,写真には写っていない.せっかくなので3人で写真を撮った.

左から Galdi 先生,Thomas 君,私(プライバシー保護のため少し加工しています).超一流の数学者(サッカーで言うとイニエスタくらいすごい人)と写真が撮れるというのは感慨深いものがある.なんて贅沢な体験なんだ.


食事中,Galdi 先生からたくさんありがたいお話を聞くことができた.滞在中,私は何度も Galdi 先生「難しい問題だから取り組むんだよ!解けたら有名人だよ」って言われたけど,どうやら Galdi 先生が Serrin 先生のもとでポスドク(簡単に言うと下積み期間)をしていたときに言われ続けた言葉らしい.Galdi 先生が「こんな問題解けたよ」って Serrin 先生に報告したら「これは simple で面白くないので投稿する意味がない」っていうやり取りが日常茶飯事だったようだ.結局 Serrin 先生のもとでポスドクをしていたときは1本も投稿しなかったとのこと.日本でもこういうスタイルが現在でも通用するかと言われれば難しい部分はあると思うけど,欧米の若手数学者を見ているとこういうスタイルの人は多い気がする.前からうすうす気づいていたけど,「この人が書いた論文なら安心だ」と思われるくらいハイクオリティーハイインパクトな論文を書けるようにならないといけないと思う.まあ要は世界中の数学者に自慢できるような論文を書かなきゃ意味がないよねって思う.


あ,ちなみに食事の御代は3人で(チップ込みで)400ドルくらいだった(伝票がチラッと見えてしまった).Galdi 先生ごちそうさまでした!研究頑張ります!!


08月23日(Day 91 / 100)

昨日およそ3ヶ月ぶりにお酒を飲んで酔ってしまったので,ぐっすり寝てた.起きたら9時くらいだった.


昨日 Galdi 先生にいろいろ励ましの言葉をいただいたので妙に研究する気があった.ずーっと悩んでいる Wilke 先生の論文,ここ変じゃない?って Galdi 先生に質問したメール,Galdi 先生に無視されているなあと思ったら,ちゃんと読んでいて,たしかに証明にギャップがあるね,と言われたのが少し自信になったのかもしれない.まあ解決しなきゃ意味がないんだけどさ.


いろいろ考えてみた結果,どうやら Wilke 先生の方向性は正しいけど,証明が間違っているような気がしてきた.実際に,昨日たまたま見つけた論文は私が考えたい領域を扱っていて,Wilke 先生とほんの少し違う議論をしていた.ようやく光が見えてきた.たぶん(いわゆる) L^p - L^q framework で考えようとすると少し計算が大変っぽい.かといって,柴田先生の結果を引用すると行いたい議論を行えないから(昔の論文を引用できれば問題なそうに見える),たぶん時間と空間の両方が  L^p の枠で考えることになるのかな.扱いたい領域は有界領域だけなのでたぶん困らないでしょう.指導教員に「私は好きじゃない」とか言われちゃうかもしれないけど知ったこっちゃない.


今日はパンが美味しくないパン屋さんでサラダを食べ,

冷蔵庫に残っていた食材(玉ねぎ,冷凍のミックス野菜,豆をすりつぶした何か)を混ぜてご飯にかけて食べてみた.

うん,美味しくない.ピクルスを食べながら食べると味はまともになっていたので,もしかしたらお酢を少しかければおいしいのかもしれない.これが(ちゃんと)自炊する最後の料理(予定)だと思うと少し悲しい.


08月24日(Day 92 / 100)

今日と明日は Thomas 君と遠出(注:長期の出張ですが,土日は基本的に休日扱いで日当も出ません).どことは言わないけど.


遠出をするために,空港でレンタカーを借りようということになったんだけど,空港までバスで移動する際,バスがめっちゃ遅延してて笑った.来週の日曜日とうとう帰国だけど,朝6時くらいには空港にいなきゃ行けない.始発で行くと時間ギリギリな上に,バスが時間通り来ないということになると,空港に前泊するのが最適なのかもしれない.


自動車で移動してる際,Thomas 君といろいろお話ししたけど,英語がもう少し話せれば会話をもうちょい楽しめたのかなって思った.前から思ってたけど,英語が話せないというのは「もったいない」気がする.帰国したら英語勉強しよう(n度目).


遠出した先でたくさん自然に触れ合うことができた.写真等はインスタのストーリーに上げているので,私の知り合いは(見たければ)それを参照してください.



今週も研究の進捗はありませんでしたが,いろんなことを得られた,割と充実した1週間だったような気がします.帰国まで1週間,何とか contact line problem について結果や方向性を得たいものです.前回の記事では「更新が少し遅れます」と連絡しましたが,Wifi がつながったのでこうして記事を更新している次第です.ピッツバーグの涼しい気候に慣れてしまったので,酷暑の東京に戻るのは躊躇してしまいますが,やっぱり日本に帰りたい気持ちの方が強いと思います.次回の更新は09月01日を予定しております.なお,次回は『アメリカ滞在記』の最終回となります.では.

アメリカ滞在記 part 12。

あっとう間に8月も下旬に差し掛かろうとしています.滞在中に取り組んでいる contact line problem の研究を,かれこれ2ヶ月くらいまじめに取り組んでいるのですが,全く進捗がありません.したがって毎日憂鬱です.とても優秀な人ならば「なんて難しい問題なんだ!このやろー(にっこり)」と楽しんで研究に取り組めるのかもしれませんが,私のような未熟者の場合は憂鬱になってしまいます.この問題が「解けた」ということは,半世紀以上に渡って私の専門分野の研究を牽引してきた Solonnikov 先生(86歳・現役)を超えたといっても過言ではないので,もともと私にとっては無謀すぎるチャレンジだったのかもしれません.この研究を通じていろいろ学ぶことができたのはいいことだと思いますが,悪く言うと「ただお勉強しただけ」だと思います.そろそろお勉強から研究に進歩したいものです.


前回の記事はこちら:

watanabeckeiich.hatenablog.com


目次:

08月11日(Day 79 / 100)

朝ブログを更新した.最近更新時間が(日本時間の)夜になっているのは,単純に土曜の夜にパソコンを開かなかったというだけで,特に深い意味はない.でも頑張って(日本時間の)昼に更新できるよう善処します.


いつも通りスーパーに買出しに行こうかなって思ったけど,買うものがせいぜいレタスくらいしかなく,そのためにわざわざ片道 2.75 ドルかけてバスに乗るのはアホらしいので,結局買出しには行かず.残りの滞在日数を考えるともう行かないかな.まだお米とかパスタ少し残っているし.


研究を考えようと思ったけど,気づいたら YouTube を見ていた.どうやら研究に対する拒絶反応が出ているらしい.YouTube はお友達.最近はまっている動画は飛行機のファーストクラスの搭乗レビュー.ファーストクラスに気軽に乗れるくらい(態度は謙虚な)ビッグな人間になりたいね.


さて,無性にハンバーガーを食べたくなった.今日はマクドナルドではなく,Five Guys というチェーン店にやってきた.どうやら注文を受けてからパティを焼いてくれるらしい.

店内を見渡すと「今日のポテトは〇〇産です!」って書いてあった.

ハンバーガーにはトマトとかレタスをはさむのにそれらの情報よりもジャガイモの方が上位にくるあたり,アメリカ人はフライドポテトを野菜だと本気で思っているのかもしれない.いろんなハンバーガーがあるようだけど,無難に「ハンバーガー」を注文した.店員に何かトッピングしますか?とかサイドメニューはいかがですか?とか言われたけど,店員とあまり会話したくない(というより極力英語を話したくない)ので,「大丈夫です(I'm fine, thank you)」と断った.そうして出来上がったハンバーガーがこちら.

うん,どうやら何かトッピングしなきゃダメだったらしい.パティしかない.これだから初見のお店は嫌なんだよな.そう,注文システムがわからないんだよな.んー,普通にマクドナルド行けばよかった.ちなみに,このハンバーガーのお値段は8ドルちょい.これがアメリカの(田舎の)物価である.やっぱ日本の物価は安すぎるのかな.


これだけではちょっとお腹が満たされなかったので,ドーナツでも買って帰るかと思ってドーナツ屋さんに行ったら,改装工事中でやっていなかった.悲しい.ついていない.後厄は終わったはずなんだけどな.


08月12日(Day 80 / 100)

今日で滞在も残り20日.ふつう20日の海外出張となると「長いね」ってなるけど,なんかあっという間に終わりそうな気がする.


日本ではちょうどお盆休みが始まったらしい.インスタグラムとか見ているとみんな夏を満喫していていいなあって思う.うらやましい.ひさびさにハンバーガーを食べて喜んでいる私とは雲泥の差だ.いままで田舎に住んだことなかったけど,田舎に住んでいる人はこのような気持ちなのだろうか.そりゃ都会に憧れますわ.


さて,今日はちょっと用事があっていつもとは違う大学のビルに行ったんだけど,エレベーターで降りていて,エレベータに乗り込もうとしている人に "What are you doing?" と言われてしまった.どうやら違う階のボタンを押してしまったらしく,その階に到着した何も関わらず降りない私を不審に思ったらしい(乗り込もうとした人は上の階に行こうとしていたらしい).そりゃ "What are you doing" ですわ.言われたとき "I don't know" と言わなかった私偉い.


まじめに頑張って Wilke 先生の論文読んでたけど,明らかに間違っている気がしてきたな.Reflection でいろいろ上手く考えていく,という気持ちは理解できるんだけど,reflect したときに「消える」境界における条件を無視しているような気がする.正直,あまり引用されていない論文だし,どこかのジャーナルに載っている論文じゃないし,信じないほうがいいのかな.


やっぱり極座標で考えてメリン変換を使ってやるほうがいいのかなあ.でも一部の人の論文でしか見かけたことがないし......と思っていたら,超有名な本に普通に書いてあったわ.

link.springer.com

いやあ無知ってだめだね.時間をロスする.人生を無駄にしている.この本では  L^2-theory しか書いていないような気がするけど,この方法で  L^p の場合でも上手くいくかなあ.どうなんだろう.ということを未熟な学生が考え込んでも仕方ないので,Galdi 先生に報告してみた.


さて,今日の夕食はこちら.

ピクルス意外と美味しいな.はまりそう.もぐもぐ夕食を食べ終わったところで Galdi 先生から返信がきた.

I found Wilke's Habilitation. Please have a look at it, because it brings much more details than the paper.

Please, let me know.

とのこと.え,Habilitation って何?いろいろ調べてみたけどよくわかんないな.これがリハビリを表す比喩なのか教授になるために必要な Habilitation なのかどっちなんだろう.一応 Wilke 先生の Habilitation 論文を読んだけど,arXiv にアップロードされているほうが詳しいような気がするんだけどな......真意がわからない.


08月13日(Day 81 / 100)

今日は久々に雨が降っていた.ふつうに肌寒い.どう考えても冷房は必要じゃない気温なのに冷房をつけるのはなぜなんだ.別に動物や植物を飼育しているわけでもないし,スパコンみたいなやつがあるわけでもないのに.


Mellin 変換についていろいろ調べていた.学部4年のとき少し勉強したけど,すっかり忘れてしまった.もう全然覚えていないな.いつもと同じように,Mellin 変換を施したあと,いろいろ形式的な計算をしたあと,その逆変換を施して,multiplier にあたる部分を計算して......という感じのストーリーを描いていたけど,① 逆変換の "定義" はよく考える必要がある,②  L^p の元に対する Mellin 変換がどう定義されるかよくわからない,③ Mellin 変換と Fourier 変換の関連がわかりにくい(関連がないわけではない)の3点がネックなんだなってことがわかった.たぶんいくつか面倒な点を回避するために  L^2-framework で考えるのが常套手段って感じなのかな.たぶん.


慶大の谷先生とかは昔,非斉次の境界条件を伴う定常ストークス方程式の解の存在を2次元の場合に示しているので(リンク:https://www.worldscientific.com/doi/abs/10.1142/S0219530506000826),これを3次元かつ非定常の場合に拡張する,というのがファーストステップになるのかな. L^2-framework で考えるならば,Mitrea-Mitrea によってすでに対応するノイマン問題とヘルムホルツ分解の成立は示されているから,contact line problem に応用すること自体はさほど難しくないように思える.


いろいろ考えてみたけど,やっぱり Wilke 先生のような reflection argument は上手くいかない......というか失敗すると思うんだよな.一応 Wilke 先生にメールしてみようかな.正直 Galdi 先生に質問するよりも適切な気がするし.


08月14日(Day 82 / 100)

Wilke 先生にメールを送ってみた.返信来るといいな.


今日のお弁当はから揚げ弁当.

もちろん(?),チキンは冷凍.本当はふりかけをかけたかったけど,ないので,仕方なくレッドペッパーとコンソメのもとをかけてみた.意外と悪くない.


さあ午後も頑張ろうと思ってたら,院生室内でマリオカート大会がはじまった.最近ここの学生は毎日マリオカートやっているな.以前はバーベキューがある金曜日だけだったなのに.まあ気持ちはわかる.やっぱりお盆の時期は研究や数学を忘れてのんびり過ごしたい気持ちはあるよね(アメリカにお盆はないけど).なんか最近昼にすごい眠くなるのはなぜなんだろう.疲れているのかな.ちゃんと寝ているはずなのになあ.


と,ぼけーっと考えていたら Wilke 先生から早速返信がきた.Wilke 先生いわく「〇〇は明らかで,△△から~~が従う」ってことなんだけど,〇〇の部分が知りたいんだよなあ.そんなに「明らか」と言うのならばきっと明らかなのだろう.もう少し考えてみることにしよう.


今日は無性にピザを食べたくなったので,6ドルの美味しくて安いピザ屋にきた.

前回(Day 70 / 100)はトッピングの注文が少なく,店員に「え,おまえこれだけしかトッピングしないの?」みたいな顔されたので,今日は店員が「もういい?」って顔をするまでトッピングをしてみた.サブウェイでもそうだけど,基本的にトッピングに制限はないんだな.ここのピザ屋,渡米後早めに見つけていればもう少し充実した食生活を送れていたのかもしれない.


08月15日(Day 83 / 100)

Wilke 先生の証明,たぶん正しいし,オーソドックスだと思うんだけど,理解できない.Gladi 先生からも返信がないし,どうすりゃいいんだ.思ったけど,Galdi 先生から文献を紹介されることがあっても,アドバイスはされていない気がするな.私にアドバイスをするのは時間の無駄とでも考えていらっしゃるのかな.これがアメリカン・スタイルなのかもしれない.


上手い解表示を行うために,領域を円柱(軸対称)の場合に何ができるか考えてみた.いろいろ調べたけど,「底面」が存在するような場合の研究ってほとんどないんだな.おそらく底面が存在すると領域が滑らかでなくなるからってことだと思うんだけど.でも,それ以上にフーリエ変換を軸の方向に施せないってことがあるのかな.なんかいろんな方法を考えれば考えるほど,結局はどうやって上手く reflection(拡張)を考えるかってことに帰着される気がする.


さて,今日のお弁当はリゾット.

いつもは前日の夜にお弁当を作っているけど,今日は朝に作ってみた.そのためほんのり温かかった.


夜も MathSciNet とかでいろいろ文献を探していたけど,上手い方法が見つからないな.唯一 Zajączkowski 先生の方法が参考になるのかなって思ったけど(前にも考えたけど),少しテクニカルすぎて気が引ける.一方で "bounded" なシリンダーで考えるのを止め, "semi" infinite なシリンダー(底面が1つだけあるような無限に伸びているパイプ)ならば上手く考えられそうなので,cut-off で上手くつなぎ合わせるばいけるかなって思ったけど,圧力の decay を出すには Lipschitz 領域で考える必要があり,可積分性をかなり制限しないといけなくなるから,結局この場合は  L^2-framework でしか理論が作れないのかなあ......とはいえ,この方法なら,半群の decay の導出が(optimal ではないけど)少し簡単になるので,検討する余地はあるのかな.Farwig 先生がこのような領域で研究していたみたいなので,明日は彼の論文を読んでみよう.ちなみに,Mellin 変換によるアプローチは一般に  L^p-framework では機能しないことがわかったので断念.



08月16日(Day 84 / 100)

母から自宅で飼っている猫の写真が久々に送られてきた.

写真を見ただけだと小顔に見えるけど,体がでかいだけなんだよな.たぶん運動不足.帰国したら近所のホームセンターでキャットタワーでも買ってあげようかな.


今日も Wilke 先生の論文を読んでいたけど,全く意味がわからなかった.この記事を閲覧している人の中には,私と同じ研究分野の方もいらっしゃると思うので,悩んでいる点をちゃんと書こうと思います(わかった方はコメント欄に書き込むか,メールしていただければ幸いです).


まず,私は,シリンダー領域における二相非圧縮性粘性流体の Rayleigh-Taylor instability について扱った Wilke 先生の論文(arXiv:1703.05214)を読んでいます.この論文ではいわゆる contact line problem が生じているような場合を考えている点が特徴的です.Contact line が生じているので領域は滑らかでない(いわゆる Lipschitz 領域)ものの,contact line 「以外」のところは滑らかなので,領域の単位分解を考えて解のパラメトリクスを構成することが可能であり,そのためには全空間,半空間,Quarter space における解析が本質的かつ重要になります.Quarter space とは半空間の半分の空間のことを指し,より厳密には infinite sector 領域の agnle が  \pi /2 のことを指します.この angle が  \pi / 2 であるという利点から,Wilke 先生は折り返しの方法(reflection argument)を使っていろいろ上手く考えています.一般に,infinite sector 領域で考える際には,原点で singularity が生じるので,重み付き sobolev 空間を考える必要がありますが,angle が  \pi / 2 の場合は重みを「外す」ことが可能です.


さて,私はこの論文を読んでいて,いろいろ疑問に感じる点は多いのですが,この論文の最初のほうに議論されている Theorem 1.1 の証明を理解することをまずは目指しています.この証明は,Wilke 先生の論文の p. 6--7 に書いてあります.方程式 (1.8) の解を見つけることができれば,Theorem 1.1 の証明が完結することはわかっています.しかし,方程式 (1.9) の解が方程式 (1.8) の解になっていることが理解できません.Wilke 先生にこのことを問い合わせたところ,下記の返信をいただきました(原文ママ).

this is due to the following reason: It is easily shown that the function

v(t,x_1,x_2,x_3)=[\hat{u}_1(t,x_1,-x_2,x_3),-\hat{u}_2(t,x_1,-x_2,x_3),\hat{u}_3(t,x_1,-x_2,x_3)]

is also a solution of (1.9). Hence, by uniqueness, it follows that \v=\hat{u} or equivalently

\hat{u}_1(t,x_1,-x_2,x_3)=\hat{u}_1(t,x_1,x_2,x_3)

\hat{u}_2(t,x_1,-x_2,x_3)= - \hat{u}_2(t,x_1,x_2,x_3)

\hat{u}_3(t,x_1,-x_2,x_3)=\hat{u}_3(t,x_1,x_2,x_3)

which means that \hat{u}_1 and \hat{u}_3 are even and \hat{u}_2 is odd with respect to the variable x_2. Now it is obvious that the restriction of \hat{u} satisfies the boundary conditions on S_1 in (1.8).

個人的には,v がなぜ方程式 (1.9) の解になっているのか全く理解できませんが,この説明を読む限り,既知関数  f, f_d, g f_1, f_3, f_d, (g_3)_1, (g_3)_2 については偶拡張, f_2, (g_3)_2 については奇拡張しているという点が重要であるように思います.しかしながら, f_d, g は空間に関してそれぞれ  H^{1,p}, W^{2 - 2/p} の元であるので, f_d を偶拡張, g_3 を偶拡張・奇拡張することは不可能かと考えています.つまり,それぞれの拡張  \tilde f_d, \tilde g_3 H^{1,p}, W^{2 - 2/p} の元になっていないような気がするのです.そうすると,「拡張した」方程式 (1.9) の一意可解性が成り立ちません.このような難点を回避するためには, C^\infty_0 の関数を用いた density argument が有効に見えますが,Lebesgue 空間の場合とはことなり,一般に  C^\infty_0 (\Omega) W^{m, p} (\Omega) で稠密ではないので,density argument が機能するかは不透明です(もしかしたら可能かもしれませんがこのことに全く言及していないのはあまりにも不親切であると思います).一方で, f_d, g_3 に対して,偶拡張や奇拡張ではない「適切な」拡張を考えた場合は,方程式 (1.9) の解を quarter space に制限した際に,境界  S_1 で vanish することを示すのが難しいように思えます.


長くなってしまいましたが,要は「方程式 (1.9) の解を制限したものがなぜ方程式 (1.8) の解になっているのか?」ということについてずっと考えているわけです.Wilke 先生のような reflection argument に頼らずに何とかできないか考えていましたが,上述の通り,上手くいきません.ちなみに, L^p-framework で考えることにこだわっているのは,単に馴染み深いから考えやすいというだけで,最悪の場合は  L^2-framework で取り組もうと思います.おそらく,私はとても基本的なことを見落としてるだけであるように思えますが,未だに全くわからないので,親切な方は教えていただければ幸いです.


と,まじめに書いたら憂鬱になってしまった.やはり「面白い」研究と「取り組める」研究は別物だなと実感した.テレンス・タオや小薗先生みたいにもりもり研究できる人になりたかった.


08月17日(Day 85 / 100)

今日のお昼ご飯のモチベーションはピザだったので,最近行っていなかったピザ屋に行ってみたら開店していなかった.営業時間のはずなのに.仕方ないので,マクドナルドでハンバーガーを頼んでみた.ビッグマックは飽きたので,頑張ってクォーターパウンダーを頼んでみた.せっかくだし,普通のではなく,deluxe のほうを頼んだ.思ったよりも多くてお腹がいっぱいになってしまった(当たり前).


その後,大学のギフトショップでお土産を探していたけど,どれもふつうだなあ......個人的にはパーカーを見つけたかったけど,Tシャツみたいにぺらぺらなパーカーばかりった.やはり暑がりなアメリカ人は上着というものを着ないのかもしれない.一応いろいろ聞いてみてから買うことにしよう.


その後ささっと帰宅し,研究についていろいろ考えてみたけど,なんかもうだめな気がしてきた. L^2-framework ならすぐできるだろうと高をくくっていたら,圧力があるので,ほとんど同様に解けるわけでもないことが判明した.んー,Mellin 変換を施して計算すればいい,と思っていたけど,レゾルベントパラメータの扱いに注意する必要がありそう.熱方程式でできたなら Stokes 方程式でもできると信じていたのが間違っていた(Dirichlet-Slip の mix boundary なら Helmholtz 射影を施すだけなのでたぶんできるけど,これだけでは面白くない).最終手段として Zajączkowski 先生の方法を考えてみようと思って,論文を読んだけど,Neumann B.C. だと機能しないって書いてあった.ちーん.いったいどうすりゃいいんだ.


八方塞になったので,定常の contact line problem はどのようにして解かれたんだろうと思って,Slonnikov 先生や Padula 先生,Jin 先生の論文を改めて読んでみたけど,3次元で解析する際に,2次元の結果を使っていることがわかった(いままでまじめに証明を読んでいなかった).んー,やはりまずは2次元で取り組んだほうがいいのかな.そういえば2次元の場合は Schweizer 先生が well-posedness を証明していたなと思い,彼の論文を読んだけど,本当に正しいのかよくわからないな.時間微分を離散化して考えているあたり,もうよくわからない.途中で領域を periodic に拡張しているし,本当に証明は正しいのかなあ.わからない.あと思いつく手段としては,semi-infinite な cylinder 領域で自由境界問題を考える,ということが挙げられるけど,Dirichlet の場合を扱った Farwig 先生らの論文と違って,boundary data の扱いに苦労しそうなんだよな.結局は Wilke 先生のような reflection を考えることが本質的であるように思える.


さて,今日の夕食はリゾット.

そう,一昨日のお弁当と全く同じ.あと2週間くらいの滞在だけど,お米がそこそこ余っているので頑張って消費しなければならない.



あっという間に1週間が経ちました.早いものです.今までつらつら書いてきたように,最近数学の論文を素直に信じられなくなってきました.それだけ研究に参っているのかなと自己分析をします.あまり良くない症状だと自覚していますが,不透明な論文が少なからず存在するのも事実かなとも思います.もうなんか早く帰国したい気持ちになってきました.葉加瀬太郎の Another Sky が聞こえてきます.さて,次回の更新は08月26日(日本時間)を予定しております.諸事情により更新が少し遅れる見込みです.では.