べっく日記

偏微分方程式を研究してるセミプロ研究者の日常

イギリス滞在記 part 2。

2週間におよぶ Kick-Off Camp が終了しました.先週は英語が話せなくてもう帰国したいと切実に思っていたわけですが,今週は意外と楽しめたと思います.また,私が英語を話せないことをみんなに知ってもらえた(?)ので,聞きなおしたときにわかりやすく説明しなおしてくれるようになりました.みんな親切すぎて泣いちゃう.


前回の記事はこちら:
watanabeckeiich.hatenablog.com


目次:

09月16日(Day 08 / 98)

今日は "Terry's" Reading walkabout tour というオプショナルなイベントがあった.10時に駅前ということで,09時10分に寮の玄関に集合だった.早いわ.オプショナルなイベントなので,参加者は非常に少なかった.10人ぐらい.事前のアンケートだと16人くらい参加するって言ってたのにね.


"Terry's" Reading walkabout tour はその名の通り,Terry というおじいちゃんがレディングの歴史とかを紹介する(チャリティー)ツアーである.ちなみに,何を言っているのかほとんどわからなかった.イギリスの歴史どころかヨーロッパの歴史すらよくわからないから当たり前といえば当たり前です(?).まあ,世界史も少しは勉強しようかなとは思った.


お昼はドイツ人のフィリップ君がカレーが食いてぇというのでみんなでネパール料理のお店に来た.なかなかおいしかったけど,何より安かった.ちなみにフィリップ君は水餃子入りのラーメン的なものを食べていた.いやカレー食えよとは思ったけど,そのように物申す英語力はなかった.かなしみ~.また,フィリップ君が「Terry の話は興味深いけど,情報量が 20 % 多いんだよな」って言ってみんな爆笑.まあ,実際そんな気がしたけどね.ちなみに,この Terry のネタはこの後数日にわたって盛り上がった.


寮に戻ってきた後は,ツイッター見たり,Python の復習したり,流体力学の復習をするなどをした.お昼に長時間歩いていたとはいえ,まあまあリフレッシュできた一日だったと思う.


今日は(新入生の)寮の入居日っぽくて,いつもよりも多くの人を見かけた.中国人っぽい人を多く見かけた.彼らはエリートなんだろうな.みんな見るからに賢そうだった.


09月17日(Day 09 / 98)

Kick-Off Camp 後半戦スタート.ちなみに失踪したマイケル君(part 1 参照)は今日も姿を現すことはなかった.ひょっとして離脱したのかな.


最初のセッションは Valerio Lucarini 先生による気象モデルと数値計算についての講義.数学では「いかに厳密に詳しく解析するか」が求められる気がするけど,応用上は「いかに簡単に計算するか」が求められているような気がした.先生が言った "Simple model is a good model""All models are wrong, but some are usuful" が非常に印象に残った.


その後,Python の講義があった.配列とかファイルの読み込みの方法とかを学んだ.時間の関係上ところどころ説明を省略していたところがあった.Kick-Off Camp が終了したら勉強しよ.講義中いろいろな質問が飛び交っていて,「Matlab だと〇〇だけど Python では△△なんですか?」みたいな質問が多かった気がする.まあなんか Python は見易さを重視しているんだみたいなことを言っていたと思う.MIT が開発している Julia は Python とは方向性がやや異なるとも言っていたと思う.欲張っていても仕方ないので,とりあえずは Python を使えるようになるよう勉強しよ.


最後は,Math refresher だった.今日もベクトル解析についての解説だった.忘れていることも少しあったけど,ほとんど知っている内容だった.残った時間で木曜のプレゼンの準備をした.4人グループでどうやって TeX ファイルを共有するんだろうなあって思っていたら,美女のロビンちゃんが sharelatex を使って作業しようと提案してくれた.


ja.sharelatex.com


なにこれ.便利すぎて笑う.Latex をインストールしていなくても OK というだけでなく,tex ファイルを常に同期してくれるというのは最強だと思う.今後共同研究することがあったら使ってみようかな.


夜はプレゼンの準備をした.グループワークのときに,物理屋さんのルイスちゃんがほとんど内容を考えてくれたんだけど,数学的にまずい箇所を発見したので,それをどう修正するかを考えた.ようやく私の出番って感じかもしれない.


先週に比べると,非常に楽しい一日だったと思う.そういえば,こっちに来てから食事の栄養バランスを考えるようになったんだけど,どうしても塩分過多になりがち.気をつけないと.


09月18日(Day 10 / 98)

気づいたら10日目.2桁目!でも先はまだまだ長いです.何せまだ "Kick-off" だからね.


午前は Math refresher の講義.内容はベクトル解析と確率論について.まあ,余裕.


お昼は食券をいただいたので,学食的なところに行ったけど,新学期がスタートするからか,めっちゃ混んでた.この日,イギリスに来て初めてフィッシュ・アンド・チップスを食べる.まあ,ぶっちゃけ大しておいしいというわけではなかった.昔食べたことあるけど,好んで食べるものではない気がする笑.


午後は木曜のプレゼンの準備.だいぶ準備が進んで,ほぼほぼOKという段階まで来た.あとは練習のみ.


夜はフィリップ君の提案でインド料理店へ.フィリップ君カレー好きすぎでしょ.良さげなお店でとてもおいしかった.ただナンは日本のカレー屋さんの方がおいしいかな.ちなみにイギリスに来てから一番高い夕飯となった.写真はインスタグラムに挙げたので見たい人は見てください.前から思ったけどキャッシュ(現金)で払おうとすると嫌な顔されることが多い気がする.イギリスではデビットカードを(何枚も)所有するのがふつうみたい.特に,contactless タイプがスタンダード.めっちゃ便利そうだなと思いながら現金で払った.


09月19日(Day 11 / 98)

朝メールチェックしてたら,Imperial College のほうから「大学のオンラインシステムでビザの登録した?してなかったらやって」ってメールが来てた.初耳でびっくりだわ.大学のオンラインシステムの注意書き見ると,外国人はちゃんと登録しないと移民局に報告することになっているから気をつけてねって書いてあった.毎日ちゃんとメールをチェックすることは大事だよね.うん.


午前はいろんな先生の(短い)講演を聞いた.興味をそそられるような発表はあったけど,数学解析には不向きかなあって感じだった.でも,雲とかについての理解を深めることができたのはよかったと思う.今日で Kick-Off Camp における先生の講義が終わるわけだけど,個人的な印象として,University of Reading は気象学にめちゃくちゃ強い気がする.世界の大学ランキングはそこまで高いってわけじゃないけど,気象学をガチで勉強したい人にはぴったりな大学だと思う.


午後はプレゼンの準備......の合間に個人面談(各5~15分)があった.相手は受け入れ先の教員である Dan Crisan 先生だった.みんな何を聞かれたのかはわからないけど,私は,Kick-Off Camp を楽しんでいる?とか,ロンドンの滞在先はどこなの?みたいなことを聞かれた.Airbnb で滞在先を確保したといったら「××じゃなくて Airbnb だったら安心だ」といわれた.いや,それ事前に教えてくれよと思った.ちなみに,「わからないこととかあったらオレに聞け.君の面倒はちゃんとみるから」みたいなことを言われた.頼りどころができてよかった.やっぱりね,外国に長期滞在していると誰かに頼りたくなるのよね(経験談).


午後の最後のセッションは keynote の講習ってことになっていたけど,誰かの講義に入れ替わっていた.みんな知っていたみたいだし,私だけそのお知らせメールをいただいていない説.話の内容はぶっちゃけよくわからなかった.ただ,「難しいので toy model を導入します」っていうのはどうなんだろうとは思った.んー,"toy" model を考えて何か面白いことでもわかるのかなあ.個人的には「意味のある」方程式を研究して初めて意味のある結果が出ると思うんだよな.


さあ部屋に帰ろうかなあってときに,Crisan 先生が「みんなバーに行って飲もうぜ.場所を知らない?じゃあオレについて来い」といった.それで,バーに着くや否やみんなの飲み物とスナック(ポテトチップス)をおごってた.プロフェッサーはんぱねぇ.イケメンか(実際イケメン―気になる人はググろう).


さて,バーを1~2時間であとにした.明日はプレゼンの発表ということで,メンバーで集まって発表練習をした.いや~私が一番説明が下手ですねぇ.やばいなあ発表練習しなきゃなあと思いながらテレンス・タオ先生のブログを読んでしまった.近い将来,時間周期解について研究したいからそれについていろいろ勉強するのは仕方ないよね(?).


09月20日(Day 12 / 98)

今日はいよいよグループ発表の日.そして Kick-Off Camp の(実質)最終日.まだ2週間もたってないのにここまでメンバーと親しくなれたのはすごいなあと思います.外国人のコミュ力すごい.昨日 Crisan 先生にも言われたけど,Kick-Off Camp こそ一番重要なんだといわれた.たしかにそんな気がする.


午前中は一つ上の世代の方(3人)の研究発表......というか修論発表かな.内容はさておき,発表の仕方が上手いなあって感じだった.鍛えられているんだろうな.いい発表は強い自信から生まれる気がする.


午後はいよいよ発表だった.いつも通り(?)たどたどしい発表だったけど,まあなんとか乗り切った.なんかグループで何かを成し遂げるというのは達成感があるよね.てか,発表の準備期間が1週間しかなかったのにみんなの発表のクオリティーが高くてびっくりした.みんなスペック高すぎ.


夜は,夕飯行くなら今日は早めに17時に集合ね!って言われたので,17時に集合場所に行ったけど誰も来ない.しかたないので,誰か連絡しに来てくれるのかなあって期待しつつその後部屋で待機してたけど,19時になっても何も連絡がなかったので,夕飯を生協で買って食べた.そしたら,20時くらいにご飯食べに行かない?と誘われた......遅すぎるんじゃ~.みんなビール買って上の階のキッチンで飲んでたらしい.みんなは WhatsApp で連絡を取り合ってて,その結果時間が変更になってたらしい,私はインストールできない(というか,電話番号の認証があるので使えない)ために,みんなが企画したイベントの詳細を知りにくいのは結構つらい.地域に応じたチャットアプリをあらかじめインストールしておくことは非常に重要なんだなと思う.最後ぐらいはみんなとご飯食べに行きたかったなあ.行けばよかったじゃんって声が聞こえてきそうだけど,20時に寮を出発して,食べ始めるのが21時,戻ってくるのが24時近く......と考えると行く気になれなかった.実際に,彼らが戻ってきたのは1時を回った頃だったしね.


初日はマジで帰国したいと憂鬱になっていたけど,気づいてみれば意外と Kick-Off Camp を楽しめた気がする.みんなとめっちゃ話したりしたわけじゃないけど,少しは打ち解けあうことができた気がする.聞き直したら(たぶん)少しゆっくり話してくれたりするし,とりあえず話してみることが大事なのかなって感じがした.もっと英語は上手くならないとだめだね.あと50年くらいは使うわけだし.

09月21日(Day 13 / 98)

今日は移動日.いよいよロンドンへ移動.2週間弱滞在したレディングともお別れ.次に来るのは10月10日.


チエックアウトをささっと済ませてバスに乗った.バスに乗るとき,"アフタァ?" って聞かれて「はあ?」みたいな顔をしたら "single?" と聞かれた.一日乗車券もあるから,ちゃんと "single" 言わなきゃダメだったみたいね.レシートもなんかもらった.来るときそんな感じじゃなかったのに.


駅に着いて久しぶりに朝ご飯を食べた with コーヒー.やっぱ朝コーヒー飲むというのはいいよね.個人的な印象としてレディングはそこまで都会ではないかなあって思ってたけど,レディング駅広すぎて笑った.


電車に乗ろうと思ったら,電子掲示板に delay の文字がたくさん.まあ海外ではよくあることだよなあって思ってたけど,電車が到着する(予定)のホームが2度変わってびっくりした.ちゃんと放送聞いててよかった.


電車に揺られること25分,パディントン駅に到着.やはりレディングと違ってギフトショップとかあった.少し早く到着したので,バーみたいなところに入ってコーラを飲みつつお昼ごはんを食べてのんびりしてた.さあそろそろバスに乗るかなあって思っていたら突然の雨.そしてバスに乗ろうと思ったらバスが発車してしまった.バス停にいたのに......


散々な思いをしながら宿に到着.道に迷わなくてよかったけど,ブザーを鳴らしてもホストの方が出てこなかったのは焦った.もう2度鳴らしてようやくホストの方が出てきた.事前に伝えていた時間とほぼ同じなんだけどな.いわゆる民泊は初めてだけど,本当に他人の家の部屋に泊まるって感じなんだなあと思った.リビングとかキッチンは生活感があふれていた.また,ホストが思っていたよりもフレンドリーな人でよかった.


博士課程の学生なんですよーって言ったら,私大学で講師してたよみたいなことをカミングアウトされて,そこからその方の仕事の話に.なんかいろいろ話してくれたけど,いやああなたの仕事の内容にはそんなに興味ないよって思いながら聞いてた.どうやら言語学を専攻していたらしい.ホストの方がマルチリンガルだと言ってたから,母語はなんですか?って聞いたらそんな概念は言語学にはないよって言われた.初耳だわ.そういえば,方言やラテン語のように「死んだ」言語も含めて世界には7000以上の言語があるって言ってた気がする.


夕方は,近所を散歩しながら,ホストが(なぜか)強く推してた日本のお店へ.日本の食材とかお酒がたくさん売ってた.値段は想定の範囲内.フードコートもあったので,カツカレーを食べた.味は普通.値段は日本に比べるとちょっと高いかなって気はするけど,ロンドンの物価を考えるとふつうかちょっと安いくらい.ちなみに,場所はBBCテレビジョンセンターの近く.治安は悪くないって気がするけど歩きタバコは多い気がした.


うん,今日もめでたしめでたし......と思ったら,風呂上りに髪を乾かしてたらヘアドライヤーが突然止まった.ふつうに使っていただけなのに......しかも使い始めて2週間しか経っていないのに.ふつうになえた.とてもつらい.はあ.なんて日だ.


......と,かれこれ10分ぐらい頭を抱えていたけど,ふと「ひょっとしてコンセントの方が壊れたんじゃないか?」という疑問がわいた.ためしにコンセントを代えてみるが,それでもだめ.ところが,だめもとで変換プラグを変えてみたら見事復活した.壊れていたのは変換プラグだった.変換プラグって壊れるものなのか.念のため2つ持ってきてよかったあ.


09月22日(Day 14 / 98)

気づいてみればイギリスに来てから今日で2週間.なんかあっという間だね.今日は目覚ましをかけなかったので8時くらいに起きた.久しぶりにぐっすり寝た気がするけど,先週もぐっすり寝たんだった.


今日は,部屋用のスリッパと食材などを購入するべく,IKEATescoに出かけた.White City 駅から Central Line に乗って,Hanger Lane 駅で降車.その後 112 のバスに乗って,Brendfield Load というところで降車した.バスを乗り継ぐ方法もあったけど,迷子になりそうだったからやめといた(その場合は裁判所の近くで乗り換えだったけど,絶対に初見じゃわからない気がした).


ロンドン市内のバスに乗るにはオイスターカード(日本における SuicaPASMO のようなもの)が「便利」って言われたけど,注意書き見たらオイスターカードやコンタクトレスのカードじゃないと乗車できないという注意書きがあった.そう,バスの料金を現金で払えないのである.公共機関で現金使えないのは生まれて初めて見た.ロンドンを訪れる人は気をつけよう.ちなみに,オイスターカードは駅の売り場などですぐに買える.


イギリスはデビットカードで割り勘するほどのキャッシュレス社会と聞いてたけど,これほどまでとは思っていなかった.イギリスに来てから思ったことだけども,街のあちこちに現金を手数料無しで下ろせる ATM があるので,あらかじめ両替せずに,デビットカード(もしくはクレジットカード)だけ持ってきて,必要に応じて現金を下ろすのが一番賢い気がした.ただ,日本で発行されたカードは清算時にサインが必要なので,会計がスムーズに行かないことも多々あっていろいろめんどくさいなあって思うことがあるのは事実.日本もコンタクトレスのカード(参考:Visa contactless | Visa)が流行ればいいのにねと思った.日本ではカードお断りってことが多いけど,イギリスでは現金お断りってことが多いので(Univ. of Reading の食堂も現金 NG だった),イギリスを訪問する予定のある人は気をつけよう.


ロンドンは,レディングと違って,様々な国籍の人がいるなあって感じ.中国はもちろん,中東系の人が思ってたよりも多かった.また,行った場所が日本人が多く住む地域から多いということもあって日本人もちらほらいた.久しぶりに日本語聞いたわ.


買い物を終えた後,いろいろ散策してみてもいいかなあって思ったけど,寒いし,雨が降っていたので帰宅.まだ9月なのに最低気温が10度を下回りそう.Kick-Off Camp 中は外食ばかりでお金を使いすぎてしまったので,今日から自炊.今日はスパゲッティを茹でて,パスタソースをかけて食べた.興味本位でグルテンフリーのやつを買ったけど,普通のやつ買えばよかった.


夕飯を食べた後は,テレンス・タオ先生のブログ常微分方程式のところを読みつつ LaTeX でまとめてた.2月ぐらいにまとめたやつ(常微分方程式の pdf)もそうだったけど,こんなこと書いてあるテキストどこにあるの?って思う.知っている人がいたら教えてください.来週の水曜から講義がスタートするので,それまでには全部理解できたらいいなあと思う.



と,今回も長くなってしまいました.最後まで読んでいただきありがとうございました.次回の更新は09月29日を予定しております.では.