べっく日記

偏微分方程式を研究してるセミプロ研究者の日常

イギリス滞在記 part 14(最終回)。

イギリス滞在も最後の週となりました.しかし,そこには衝撃の事態が待ち受けていた!......と書きたいなと思いましたが,特に何事もなく,いつも通りなんてことのないふつうの1週間でした.何も起こらない平穏な毎日......私の人生を象徴しているような気がします.先日,親から「フランスは暴動がすごいし,夜は気をつけるように」とメッセージをいただきました.こうして,いま振り返ってみると「何事もなかった」というのは良かったことなのかもしれません.


前回の記事はこちら:

watanabeckeiich.hatenablog.com


目次:

12月09日(Day 92 / 98)

今日は友人のお使いとお土産購入とお散歩の日.日曜日なのにお店が開いているのはすごいなあって思う.実際に,去年ダルムシュタットに滞在したときは,日曜日はどこのお店も閉まっていて苦労した思い出がある.やっぱり都会だと日曜日も開店せざるを得ないのかな.店員およびスタッフのみなさんお疲れ様です.


友人のお使いは,お店を見つけることができずに失敗したけど,お土産をいろいろ買うことができた.満足.結局,今日は一切数学をしなかった.とても久しぶりな気がする.気分転換となってよい休日となった.明日からは頑張ろう.


前から思っていたんだけど,犬を連れて地下鉄に乗ることができるってすごいと思う.というより,しっかりとしつけられているのがすごいなって思う.地下鉄はもちろん,公園とかでも犬が吠えているところは見たことがない気がする.


12月10日(Day 93 / 98)

午前中はSDEの講義.主に前回までの復習と,数値シュミレーションの結果の紹介,演習問題の解説だった.ちょっと難しかった.水曜のチュートリアルは引き続き演習問題を扱うとのこと.演習問題の類題が試験に出るということでみんな真剣に聞いていた.


午後はレポート課題を進めようと思っていたけど,よくわからないので断念.半分やったからいいかなあ.というより,わからないものはわからないよねって感じ.


ということで,その後は共同研究者からの「仕事」をやった.まあ自明だろうなあってことを証明するだけなんだけど,自明ではなかった.というよりも違っている説もある......やっぱり,証明は丁寧にちゃんと考えなきゃだめだなあって思った.


コーヒー飲もうと思っていたけど,タンブラーが割れて使い物にならなくなったので,新しく購入した.


いままでよりも一回り大きくてちょうどいい大きさ.帰国してからも積極的に使おう.


さて,夕方はジムに行った.そこそこ空いていた.試験中だからかな.体重は微減.体重が減らなくなったのは筋肉ムキムキになったってことにしておこう.


さて,夕飯は,荷物を整理するために,サラダと日本から持ってきたカップ麺.食べるだろうなあって思ってカップ麺を持ってきたけど,結局食べようとは思わなかったな.今日食べたけど.というか,カップ麺しょっぱすぎてびっくりした.あんなにしょっぱいものだったかな.自炊も明日で終わりかな.木曜日と金曜日も自炊してもいいんだけど,右手だけあかぎれになってとても痛いんだよな.なんでだろう.


12月11日(Day 94 / 98)

夜中の3時半に目が覚めて,二度寝に失敗してしまった.寝れなかったので,ホームページを更新した.


昨日の夜に,研究室の後輩(修士1年)にゼミで何やっているかって聞いたら(粗っぽく言うと)修論の研究の準備,とのことだった.もうそういう時期なのか.私は解析する方程式をモデリングするところでかなり苦労したけど,彼らはすでにモデリングされている方程式をやるみたいで安心.たまに,このブログにつらつら書いた研究進捗見返すと「何を頓珍漢なことを考えているんだ」って思うけど,なぜか「無駄な時間だった」とは思えないんだよな.ああいった「もがき」や「寄り道」を経ることでさまざま知識を得ることができたと思うし.まあでも効率的ではないから後輩たちにはおすすめできないな.というより,後輩たちは私より賢いと思うので研究はスラスラ進むだろうな.私も彼らに負けないよう頑張らねば.


ということで午前中は共同研究を進めた.リース・ポテンシャルの性質をいろいろ調べた.昨日間違っていると思っていたことはやっぱり間違っていそう.ピンチ~.


ところで,ほかに書くことがないので今日のお弁当を紹介しよう.


うん.健康的.たぶん最後のお弁当かな.我ながらよくお弁当作ったなって思う.ほとんどパスタかジャガイモだったけど.


午後は確率・統計の講義.内容は主にマルコフ連鎖モンテカルロ法MCMC)について扱った.さらさら~って説明されたけど,理解が追いつかないよって感じ.スライドでの講義だとこうなっちゃうんだなあって思った.内容は面白そうなのにな.帰国したら趣味として少し勉強してみよかな.


ジャガイモとにんじんが残っていたので,夕食はコンソメスープとサラダ.


今日で冷蔵庫が空になった.ロンドンにおける自炊生活も今日で最後だな.木曜日と金曜日も自炊していいんだけど,あかぎれがひどいので自炊生活は今日で終わり.ちなみにデザートでエッグタルトを(2個も)いただいた.太りそう.


12月12日(Day 95 / 98)

朝,トム君からクリスマスカードをもらった.


中身はちょっとした手紙とチョコ.


やっぱりヨーロッパではクリスマスはお祭りみたいな感じね.1ヶ月くらいクリスマスやっているイメージ.みんな人生楽しそう.滞在先のホストの人が言っていたけど,12月になるとみんなクリスマスのことで頭がいっぱいで思考で停止するらしい.


一方で私は,共同研究が上手くいったりいかなかったりで......正直つらい.正しいと思っていたことが正しくなさそうなんだよなあ.仕方ないので共同研究者にいろいろメールで報告した.別の研究室の優秀な後輩K君がまた論文書けそうっていうのを見ると私はなんて研究遅いんだろうなあって嫌になってくる.扱っている問題が難しいせいだと思いたい.


午前はPDE......というよりは微分幾何チュートリアル.今日は浅水波方程式についていろいろ説明があった.気象モデルで粘性を無視してオイラー方程式を主に扱うっていうのは一見合理的に見えるけど,温度変化は無視しているんだよなあ.地球規模の場合,垂直方向の「近似」が成り立つから大気の運動は(粗っぽく言うと本質的には)2次元になるっていうのは納得しうるんだけど,さすがに温度変化を無視するのはどうなんだろうとは思う.でも,もしかしたら,温度変化が無視できるほど(地球規模からしたら)小さい領域で考えれば十分ってことなのかな.もちろん,この時間は「微分幾何」のチュートリアルなのでそういった説明はなかった.ちなみに,イタリア人のイケメン,ニコロ君は今日もいつも通り遅刻してきた.今日は35分の遅刻(いつもはだいたい 15 分くらい).(毎度のことだけど)サングラスかけて手振って笑顔で教室入ってくるのは笑っちゃうからやめてほしい.まあ,もしかしたらあれがイタリアンスタイルなのかもしれない.


その後は Remus Gabriel Hanea 先生の講演.講演のタイトルは "Decision making under uncertainties" で,内容はタイトルの通りだった.ただ,正直なところ,講演の方向性が見えなかった.やっぱり,数学以外の講演って扱っている内容が「ふわっと」している(ような気がする)から,場合によっては聴衆の「受け止め方」がさまざまになるのかなあって気がした.まあ,もしかしたら,私がちゃんと聞き取れなかっただけってだけかもしれないけど.スライドで,All models are wrong, but some are usuful という言葉が書かれていた.キックオフキャンプ(Day 9 / 98 参照)で見たものと全く同じだ.誰かの名言なのかなって思って調べてみたら George E. P. Box 先生というイギリスの統計学者の格言らしい.

tjo.hatenablog.com


こういう背景を知ることは大切だと思うけど,「勉強」するときは軽視されているような気がするんだよな.気をつけよう.


昼食は食券をもらったので学食へ.本当はお肉食べたかったけど,行列がすごかったので,ベジタリアン用のコーナーのところへ.ニョッキをいただいた.


そういえば,ベジタリアン用のメニューって日本の学食にあるのかな.あると思うけど,わかりやすく明記されていない気がする.今日は食券で清算したからいいけど,これで5.42ポンド(約800円)って高いよね.学食なのに.ちなみに味はまあまあおいしかった.フィリップ君曰く「今日は当たり」の日らしい.


その後はSDEのチュートリアル.演習問題の簡単な解説......って感じだったけど,半分くらいの人は上の空だったと思う.たぶん「夕方のクリスマスパーティーまだかなあ」って思っていたと想像する.まあでも扱っている内容がちょっと難しいということもあるかもしれない.わずか5週間でSDEを理解しろって言われても厳しいような気がする.ちなみに,チュートリアルは予定よりも12分早く終わった.


その後は確率・統計のチュートリアル.先生からメールで送られてきた課題に取り組みましょうとTAの人が言っていたけど,私はそのメールをもらっていなかった.やらなくていいってことなのかな.課題が何かわからなかったので,とりあえず私は数値解析のスライドの復習をしていた.んー難しいなあ.学部生のとき講義をサボりまくっていたツケが今になって回ってきている気がする.もっとちゃんと講義に出席していればよかったなあ.


最後は数値解析のチュートリアル.1次元ポアソン方程式の数値解の求め方についての(理論的な)演習問題.なんかアルゴリズムって頭を使わないとわからないんだなって思った.大変そう.みんなまじめに取り組んでいて,質問も多かったように思う.フィリップ君もまじめに取り組んでいたけど,ちょくちょく「ピザ~ピザ~」ってつぶやいていたのは笑っちゃった.


チュートリアルの様子.こう見えても,決してふざけているわけではないってことを明記しておく.メリハリはしっかりしていたと思う.


年内のすべての講義・セミナー・チュートリアルが終わった後はクリスマスパーティー.分野と学年が違う人たちが交流する機会があるのは良いことだと思う.乾杯の挨拶はコーディネーターの Dan Crisan 先生.正直なところ,挨拶が長いと思った.でも,9月まで秘書を勤めていた方への労いから始まり,私が参加したプログラム: MPECDT を通じて博士号を取得した人へのお祝いのメッセージなど,内容は豊富だった.


今回プログラムに参加して思ったのは,研究費が豊富だからこのようなプログラムが成り立つってことかな.よく,「日本は研究費が少ない!もっと増やそう!」って言われるけど,(額が十分でないのもそうだけど)一番の問題点は毎年いくらもらえるか固定されていない(わからない)ことだと思うんだよな.まあ,残念ながらこれは私が考えたところで解決できるような問題ではない.偉い人たち頑張って.


実はクリスマスパーティーの前に,メンバー間でのプレゼント交換会があった.交換の方式はシークレットサンタ.私は(参加する?って言われたときは)仕組みがよくわからなかったっていうのと,もうちょっとで帰国しちゃうから......ってことでシークレットサンタには参加しなかったから,プレゼント交換会をやる場所から離れてパーティー会場のほうに行こうとしたら,「ケイイチも来て!」とロイスちゃんに言われたので,言われるがままについていったら,急に私にプレゼントを渡してきた.「あれ?シークレットサンタに参加するって言ったっけ?」って戸惑っていたら,みんなからのプレゼントらしい.中身はインペリアルのシャツをもらった.手紙も入っていた.


サプライズ過ぎてちょっと理解できなかった.「日本に帰っても私たちのことを思い出せるようにインペリアルのシャツにしたんだ」って言われてちょっと泣きそうになってしまった.サイズがSだったけど,ぴったりだった.痩せてよかった.ずっと着られるよう帰国後も体型を絶対に維持しよう.それにしてもいつ用意したんだろう......私はみんなよりも長く大学にいたつもりだったんだけどな.


英語が苦手なせいで上手く意思疎通できないことあったけど,ちょっとはプログラムのメンバーのみんなと仲良くなれたのかな.というか,そうであってほしい.ほとんどの人と研究分野が異なる(PDEはオリバー君ぐらい)から,よほどのことがない限り,もう二度と会えなくなると思うと別れがつらくなっちゃうな.あれほど帰国したいって言っていたのに.渡英前に WhatApp をインストールしておいて,もっと英語が得意だったら,もっとみんなと仲良くなれたのかな.そう思うといままで英語の勉強をサボっていたのが本当に悔やまれるな.今後はもっと英語を勉強して気軽に意思疎通できるようになろう.


ちなみに,クリスマスパーティーのご飯は主にピザ.私はピザを食べ過ぎたせいで,途中からその気持ち悪さがプレゼントをもらった喜びを超えてしまった.また,ピザはおいしかったけど,残念ながらお酒は微妙だった(ちなみにこれはみんな言っていた).

12月13日(Day 96 / 98)

今日は大学の近辺を散歩した.外はちょっと寒かった.マフラーを着用すればよかったな.散歩しつつ,後輩に頼まれたお使いをこなした.その後は大学に用事があったので,大学に戻り,用事をこなした.その後はジムに行って運動した.毎回恒例の体重測定は前回よりも「増」.まあ,昨日あれだけピザ食べたからなあ.ということで,今日はいつもよりも運動した.インペリアルのジムに行くのは今日で最後.帰国後も継続して運動するようにしよう.


食べすぎとリバウンドするんだなあ(当たり前).とか思いつつ最寄の駅の近くのパブでハンバーガーを食べた.


このハンバーガーを食べるのも今日が最後かな.帰国したらハンバーガーは食べないだろうなあ.さよならハンバーガー.ただ,終電逃したときはお世話になるかもしれない.

12月14日(Day 97 / 98)

のんびりロンドンで過ごせるのも今日が最後.明日の昼には飛行機に乗っていると思うと信じられない.午前中は荷造りした.この前買った人形3体が大きすぎる.


お昼ご飯はサンドイッチでも食べようかなあって思ったけど,せっかくなのでトラディショナル・ブレックファスト食べた.


写真じゃ伝わりにくいけど,結構量が多い.目玉焼きの下にもう一つ目玉焼きあるしね.またソーセージも,ウィンナーというよりフランクフルトって感じ.ブランチでもちょっと多いくらいの量.


今日も用事を済ませたあと散歩した.街のあちこちに戦争の戦没者の追悼碑があるのはロンドンの特徴かもしれない.戦没者は国ために戦ってくれた「英雄」という考えは戦勝国らしいなって思った.


日本だと戦争のお話はタブーみたいな感じがするけど,ちゃんと戦没者を追悼することはやっぱり大切なことなんだなって思った.こういう話になると「戦争は良くない!」ってなりがちだけど,そういう議論をする前に戦没者を追悼することが先だと思うんだよな.ちなみに,イギリスでは第一次世界大戦が終わった11月11日が休戦記念日になっている.これは第二次世界大戦よりも第一次世界大戦で亡くなった方の方が圧倒的に多いため.


さて,夜はイギリス名物(?)のフィッシュ&チップスを食べた.


ザ・あぶらの暴力といった感じ.これは太る(確信).


帰宅後は冷蔵庫に残っていたニューヨークチーズケーキを食べた.


写真は 1 / 4 ホール.おいしい.ちなみに,残りの 1/ 4 ホールは今朝,1 / 2 ホールは昨晩いただいた.1ホールで 2.1 ポンドって安いと思うんだよな.売っているのに気づいたのがこの前の日曜日だったんだよな.もっと早く気づいていれば......という気持ちもあったけど,たぶん気づいていたらめちゃくちゃ食べていただろうから,気づかなくてよかったのかもしれない.


12月15日(Day 98 / 98)

ついに最終日.過去の『イギリス滞在記』を見返してみるといろんなことがあったなあって思う.脳内で動画が再生できるほど記憶に残っている出来事ばかりだな.いまとなってはいい思い出.こうして過去は美化されていくのかな.


今日で3ヶ月くらいお世話になったお部屋ともお別れです.


空港にはちょっと早く着いて,VATの免除申請しようと思ったら,必要な書類がなくて申請できなかった.ロンドン行く予定がある人は事前にしっかり予習しておこう.


手荷物の検査を終えたあとはいろいろお土産を買った.途中サンタさんに遭遇した.


サンタさんまた来ないかな.


そうこうしてるうちに搭乗時刻となりました.離陸が13:50なのに搭乗時刻が12:50なのはちょっとびっくり.大きい空港ならではって感じ.


ということで,これから飛行機に乗ります.みなさん日本で会いましょう!


終わりに

派遣先である Imperial College London の EPSRC Centre for Doctoral Training のプログラム Mathematics of Planet Earth のホームページにてプログラムに対する私のコメントが紹介されました.

URL: MPE welcomes Keiichi Watanabe (visiting PhD student) and Prof. Martin Guest as part of its collaboration with Waseda University | Mathematics of Planet Earth

リンク先にもあるように,今回の海外派遣はゲスト先生や指導教員である柴田先生,派遣先の大学の Crisan 先生,Darryl 先生など多くの方のおかげで実現しました.この場を借りて厚く御礼申しあげます.


今回で『イギリス滞在記』の連載は終了となります.今回に海外派遣のレポートについては近日中に 活動報告 |スーパーグローバル大学創成支援 早稲田大学 数物系科学拠点 にて公開される予定です.これまで読んでいただきありがとうございました.