べっく日記

偏微分方程式を研究してるセミプロ研究者の日常

研究進捗2019/04/25

このブログは私が思っていたよりもいろんな人に読まれているようです.今後は,読まれても恥ずかしくないようにもうちょっとまじめに書いていこうと思います.


<これまでの進捗>

・去年の春投稿していたLocal theoryの論文がリジェクトされた.まあダメもとで投稿していたので仕方ない.もう少し丁寧に書いた後に別のジャーナルに投稿しよう.

コリオリ力を伴う圧縮性ナビエ・ストークス方程式の線型化問題の解の低周波部分のストリッカーツ型の時空評価の導出に成功した.解の減衰評価を導出しようと思っていた時期もあったが,初期速度場の大きさを制限せずに時間大域解を構成したいので,解の減衰評価は必要なさそうである.重要な点は,解の時空評価が,コリオリパラメータに依存しないような定数を用いて書くことができる点にある.中周波部分および高周波部分については, TT^*-argument を用いることなく,直接計算することで導出できそうである.これはまだ計算中である.特筆すべき点は,compressible Euler の場合と異なり,解の時空評価が  L^p_t L^\infty_x with  1 \le p \le \infty ノルムで得られる点にある.すなわち, p < 2 の場合も許容する点にある.これは流体の粘性に起因するものであり,これによって時間大域解の構成が可能になると思われる.実際に,compressible Euler の場合は,粘性がないために, p \ge 2 の場合しか時空評価が得らない.そのために,回転速度を  \Omega \to \infty とすると解の lifespan は  T \to \infty となるものの,時間大域解の構成は不可能であった.本研究は,粘性を加えれば時間大域解の構成が可能であることを目指すものである.先月までは,何の結果も得られずとても困っていたが,解決の糸口が見えてきた(気がする).

・指導教員から Q-tensor モデルの研究を一瞬勧められたが,その後何も言われなかったので放置した.

・全空間における圧縮性ナビエ・ストークス方程式の結果をまとめ,ホームページに載せた.また,昔(Google)翻訳した Solonnikov-Shchadilov の有名な論文も公開した.電通大の伊藤先生が最近これと関連した論文を書いたという噂を聞いたが,詳細は知らない.ちなみに,ホームページで公開しているレクチャーノートは誤植がところどころあるのでご注意ください.

・外部リプシッツ領域におけるナビエ・ストークス方程式の mild solution をスケール不変な関数空間  L^\infty_t L^3_x で構成した.すなわち,時間局所解および小さい初期値に対する時間大域解の一意存在を証明した.ただし,Bogovskii lemma に関して解決すべき点が若干あるので,現在いくつかのギャップについて考察中である.なお,これはフランスの Patrick Tolksdorf さんとの共同研究である.私だけじゃこんなに考えることはできない.

・解決すべき点は,具体的には,外部領域で方程式の解を構成において全空間と有界領域の結果を切り落とし関数を用いてつなぎ合わせた際に用いる Bogovskii 作用素で,Geissert et al. では切り落とし関数を2つ用いて解を構成しているが, B_2 ((\nabla \eta) f) = 0 on  K_1 という主張にギャップがある.これを解決すべくいろいろ考えているが,切り落とし関数を2つではなく1つにすれば解決できそうである.

・優秀な同期のT君が今年の夏に学位を取得するみたいで,先生から君も頑張ろうみたいな煽りを受けてしまった.頑張って論文を書かねば......

・来月末からアメリカに派遣されることになったのでビザの手続きをした.ビザの申請はおりたのでたぶん大丈夫なはずだけど,大学のオンラインシステム上でもいろいろ手続きが必要みたいだ.これはさっき知ってかなり焦っている(一応手続きは申請したが,まだ受理はされていない).

・ダウンロードしたPDFファイル(論文)を整理した.今後は毎週整理するようにしよう.


<今後の目標>

・適切なジャーナルに論文を投稿する.

コリオリ力を伴う圧縮性ナビエ・ストークス方程式の時間大域解を,初期速度場の大きさを制限せずに構成する.

・Solonnikov 先生の,表面張力のない,圧縮・非圧縮2相流の自由境界問題の時間大域解に関する論文を読み,密度関数の可微分性の損失をどのように解決したのかを理解する.

アメリカに行った後に精神を病まないようにする.


今年度より,正式に,日本学術振興会の特別研究員(DC2)に採用されました(先程学振のホームページで確認した).今後も頑張ります.いろいろ間違っていても,温かい目で見守っていただければ幸いです.