べっく日記

偏微分方程式を研究してるセミプロ研究者の日常

アメリカ滞在記 Part 02。

渡米して2週間が経ちました.時差ボケもようやく克服し,生活にも慣れてきました.でも,スーパーなどの店員との会話に慣れません.店員と会話をするというのは欧米(?)ならではの文化ということは知っていますが,"How are you?" って言われても「別に」としか思えないのはどうしてなのでしょうか.周囲の人を見る限り,皆さん感情豊かに会話していますが,なぜあんなに感情をこめて話すことができるのかとても不思議です.


前回の記事はこちら:

watanabeckeiich.hatenablog.com


目次:

06月02日(Day 09 / 100)

Galdi 先生からもらった問題の定式化はなんとなくわかってきたけど,やはり難しい問題だなあ.いわゆる  L^2-framework で考えれば領域の滑らかさを全く考えずに圧力の消去とかは可能だと思うんだけど,領域を localized することは可能なのだろうか.って思ったけど,Rayleigh-Taylor instability の論文ですでにやられてたわ.まああんまり深刻な問題ではなさそうだ.


今日は天気がよかったので食材の買出しに出かけた.40分くらいかけて Giant Eagle に行った.いかにもスーパーって感じのスーパー.こういうお店が滞在先の近く―少なくとも大学の近く―にあればいろいろ楽だったのになあって思った.今日はパスタソース,スパゲッティ,ジャガイモ,玉ねぎ,レタスなどを買った.行きは道路の(進行方向に対して)右側を歩いてので,じゃあ帰りも(進行方向に対して)右側を歩いて帰ろう......って思っていたら,徒歩では渡れない道を歩いていたということもあり,帰りたい方向とは全く違う方面に向かってしまった.前から思っていたけど,歩行者に優しい道路設計ではない気がする.ドライバーは歩行者に優しいのに.


やや萎えつつ全く違う方向に歩いていたけど,どうやら大学の方向には向かっていたようだ.多少回り道になるけど無事に帰れそうだ.J1 オリエンテーションが行われた建物が見えてきて安心したけど,(簡易的な)スーパーがあることを発見してしまった.

Googleストリートビューだとセブンイレブンになっているけど,スーパー的な感じなものになっていた.種類は少ないけどとりあえず食べ物に困らなさそうだ.ちょっと安いというのもポイントが高い.これで一安心.今度からここ行こう.レタスはないけど.


なんかふと「あ,大学の写真撮れって言われていたな」と思い出して,大学の写真を撮ってみた.

資金援助を(部分的に)受けているから当然の義務とはいえ,自分が広告材料になるのはなんか腑に落ちないんだよな.


さて,昼食をサブウェイ(3日ぶり3度目)で食べた後,帰宅.帰宅後は Jin-Padula (Math. Ann., 2004) の論文を少しまじめに読んでいた.重みつきソボレフ空間とかは参考になった.論文読んで思ったけど,contact line problem は Finn 先生も結構精力的に研究していたんだな.気が向いたら彼の本と論文を読もう.


06月03日(Day 10 / 100)

滞在10日目.なんだかんだ滞在日数の10%が過ぎてしまった.朝,Galdi 先生から「明日私のオフィスに来い」というメールが来た.私の経験上,こういう場合は質問をもう一度説明する感じになるんだよな.ということで,今日はわかったことをまとめよう.


と思って大学に行ったら,初めて会った人に,「そのディスプレイ僕が使っていたやつなんだけど」と言われてしまった.仕方ないのでディスプレイは彼に返却し,代わりに床に放置されていた(いかにも古そうな)ディスプレイを使うことにした.先週院生室に来たとき念のため周りの人に使っていいかどうか確認したんだけどな.やっぱりアメリカ人はいい加減なのだろうか.


今日は領域の localization について考えていた.Wilke 先生の論文をちらちら見た感じだと,二相問題の場合,いわゆるモデル問題として

(1) 全空間(一相);

(2) 半空間(一相);

(3) 全空間(二相);

(4) 1/4 (quarter) 空間(一相);

(5) Contact line 付きの半空間(二相)

を考えれば良いみたい(?).Contact angle が90度だと normal 微分が境界上で vanish するから (4) と (5) の問題はそれぞれ (2) と (5) に帰着されるみたいだ.うーん,個人的には contact angle を 90度に限定せずにいろいろ考えてみたいけどやはり無理なのだろうか.モデル問題を経由せずに考えることは出来るのだろうか......圧力の消去もよくわからないし,明日 Galdi 先生にいろいろ聞いてみよう. L^2-framework で考えれば上手くいくってことはあるのかな.


06月04日(Day 11 / 100)

朝はちょっとのんびりしつつ,Galdi 先生に質問したい内容を整理していた.滞在先のキッチンにコーヒーメーカーあるのはめっちゃ助かる.コーヒーうめえ.


しばらくしてから大学に行き,Galdi 先生とのミーティング.Galdi 先生から「君の進捗を聞かせてくれ(意訳)」と言われた.いや,1週間でそんなに出るわけないでしょって思った.そんなことできるのは九大のT先生みたいな人だわ.見栄を張っても仕方ないので,正直にいろいろ頭を悩ませていると報告し,

・自由境界は動くのか?動かないよね?

・圧力の消去はどうするのか?(Edge が気になる)

・通常と同じように領域を localize していいのか?

ということを聞いた.結論からいうと,最初のやつは「動く」で,残りの2つは通常と同じようにしてできるはず,とのことだった.自由境界は動かなくない?って思ったけど,自由境界なんだから動くでしょ(意訳)とのことだった.これに関しては,物理的な説明ではなかったので,個人的には正直納得できないけど,偉い Galdi 先生が動くと言っているのだからきっと動くのだろう.まあ,動くと信じて境界条件をもう一度考察することとしよう.また, 理科大の K さんにも質問メールを送ってみよう.


ミーティングのあと,リジェクトされた論文はどこかに投稿しなおしたのかってことを聞かれたので,まだ書き直している途中です(ちょっとサボっているけど),って言った.まあ確かに「新しい問題」を考えているから,論文は書きなおし終わったって思われても仕方ないな.さすがにそろそろちゃんとやらなきゃな.頑張って今月中には投稿しよう.


ところで,夕方はたまった PDF ファイルを整理していた.とても地味でつまらない作業だけど,役に立つ.一応バックアップとしてメモリースティックと外付けのハードディスク以外にも Mendeley にバックアップを取っているけど,ストレージ大丈夫かな.もりもり溜めた論文ももうすぐで500だけど,まじめに読んだのは20にも満たない気がするんだよな.少しずつでもちゃんと読まなきゃな.まあでもたまに「100本の論文よりも1冊の本」という先輩のLさんの言葉が頭をよぎるんだよな.


06月05日(Day 12 / 100)

ちょっと夜更かししてしまったけど,9時くらいには目が覚めてしまった.部屋にカーテンないから日が出ると自然と目が覚めちゃうんだよな.まあ健康的でいいことだ.


朝起きたらKさんからメールが来ていた.めっちゃ丁寧に説明してくれてて笑ってしまった.やはり優秀な人は性格も良いみたいだ(P値=1%).Hieber 先生と Saal 先生のサーベイ論文で contact line problem について言及されているのは初めて知った.Kさんありがとう.というか Saal 先生も少し取り組んでいるみたいだな.やっぱり Dirichlet 境界条件は「嫌われ者」みたいだな.でも境界の regularity が Lipschitz なのは "too general" って書いてあるけどほんまかいな.ところで,Saal 先生の論文はちらっとしか(2分)論文読んでないけど,contact angle が一般の場合は極座標で考えると上手い具合に処理できるっぽい(?).後でちょっとまじめに読んでみよう.


今日の夕飯はコンソメスープ.

見た目は微妙だけど意外とおいしい.


06月06日(Day 13 / 100)

今日は朝スタバに行ってみた.コーヒーをテイクアウトするために.コーヒーにいろいろ入れられるのは困るので,「コーヒー,アメリカーノ,ブラック」と言ったらちゃんとブラックコーヒーが出てきた(当たり前).店内は空いてたけど,レジは結構混んでた.平日の夜,夕飯食べたあとスタバで作業できるかなって思ってたけど,どうやら19時に閉まってしまうらしい.


今日は論文の修正していた.意外と直さないといけないところが見つかった.頑張って仕上げないとなあ.というか修正しないといけない論文が2本,書き途中の論文が1本だから,とりあえずこれらを片付けてから新しい問題に取り組むほうが効率的な気がするんだよな.


ところで,contact line の問題は,たぶん contact angle を固定しないと解けないんだろうな.実際に,contact angle も未知関数だった場合,contact angle についての発展方程式がないと「つじつまが合わない」と思う.シリンダーで slip boundary の場合はすでにちょっとやられているから,slip の代わりに Dirichlet を考えるだけでも十分良い結果になるだろう.とりあえず,Jin 先生の結果を,非定常かつシリンダーではない場合に拡張することを試みよう.まあでもそのためには重み付きソボレフ空間について勉強しなければいけない.


さて,今日の夕飯はカルボナーラ

先日よりもおいしくできた.そろそろお嫁にいけるかもしれない.


06月07日(Day 14 / 100)

今日はいつもよりも早く目がさめたので,少し早く大学に来た.といっても9時過ぎくらい.それでもすでに何人か院生室にいた.彼らは何時から居るのかはしらないけど,たぶん結構早く来ているんだろうな.今度から8時くらいに大学行くかな.


今日も論文の修正をした.もう少しで終わりそう.今日はもうちょっと頑張ろうかなって思ったところ,院生室内でマリオカートバトルが始まった.うるさいからイヤホンつけて作業していたけど,それでもやっぱうるさかったので,今日はかなり早く帰宅した.マリオカートをやっていない他の人たちは全く気にせず集中していたのはすごいなあって思った.むしろ真剣に議論していた人がいたぐらいだし.いや,普通のゲームだったら早く帰ろうとは思わないけど,マリオカートのアイテムボックスを取ったときの「ぴろぉぴろぉん~ぴろぉぴろぉん」っていう効果音が気になって仕方なかった.まあ,集中力がなかったと言われればその通りだったのかもしれない.ちなみに,今日も先週に続きバーベキューに誘われた.即答で断ったけど.ひょっとして毎週やっているのかな.


夕食はソーセージを焼いてみた.

んー,なんかこげちゃうんだよな.やっぱ一度ボイルしてから焼き目をつけるのがいいのだろうか.


06月08日(Day 15 / 100)

今日も論文を直していた.iPad との併用,かなり便利だな.なぜ今まで気づかなかったんだろう.そろそろ論文の修正が終わらないと指導教員に怒られそうだな.


ただ,週末は息抜きがしたいので,今日は解析関数の零点についてまとめてある,ヘルマンダー先生の本の付録を少し読んでみた.よくわからない部分もあったけど,とりあえず LaTeX でまとめた.まだ公開はしないけど,いずれ公開すると思う.


さて,今日はピザを食べてみた.

LサイズもMサイズも値段があまり変わらなかったのでLサイズを買ってみたけど思ったよりも大きかった.実際に

これくらい大きい.これで10ドル(+税)は安いと思う.今後毎週通うことにしよう.滞在先の(アパートじゃないけど)家に,新しい住人(?)がやってきた.彼の夕飯をチラッと見たけど,めっちゃおいしそうだった.ジャガイモとスパゲッティばかり食べている自分が惨めに思えてきた.今後はもう少し工夫しよう.



振り返ってみると,今週はブログに書くような面白いことがありませんでした.すみません.ところで,ようやく共著論文が完成しました.

arxiv.org

研究がスタートしてから完成までに2年くらいかかったけど,無事完成してよかったなあと思います.共同研究者のパトリックさんありがとうございます.共同研究者から学ぶことは非常に多かったように思えます.というより,やっぱ英語は大事だなあって思いました.英語で会話するようなお友達はいないですが,帰国までに,少なくともスーパーなどの店員と会話できるよう,英語を勉強しようかなって思いました.さて,次回の更新は06月17日(日本時間)を予定しております.では.