べっく日記

偏微分方程式を研究してるセミプロ研究者の日常

研究進捗2019/12/23

先日26歳の誕生日を迎えました.うれしいものです.メッセージをくれた方々,ありがとうございました.誕生日だったので,妹や母とケーキを作りました.

すごい正直なことを申し上げると,この歳になるまでに曾祖母が生きているとは思いませんでした.私も長生きしたいものです.


<これまでの進捗>

・いろいろ発表した.感触は悪くないような気がする.

・Contact line problem の定式化をした.「新しい」境界条件を考えることなく,エネルギー散逸は示せることがわかった.特にエネルギー散逸を保証するために,Contact line の moving speed を仮定している論文が多いけど,特定のシチュエーションでは不要なことがわかった.実際に,自由境界は a priori に未知であるから contact line の動き方を仮定するのは変だなあと思っていたので,個人的には納得しうる結果(定式化)を得ることができた.

・特に,contact angle に制限を加えることなく定式化したので,任意の初期接触角に対して,接触角が変化しているような時間局所解の存在を示せると思う.たぶん重力が働いていないというのが本質的に重要で,重力が働く場合は自由境界に対応する固定境界の平均曲率が定数でないため,平衡状態における自由境界の特徴づけが難しくなると思う.もちろん,重力が働く場合を解析するのは不可能ではないと思うけど,もう少しいろいろ勉強しないといけないと思う.ちなみに,重力が働かない場合,surface energy が最小となる曲面は一意的でないという結果が Finn によって示されているけど,流体の非圧縮性条件から曲面の uniqueness が従うと思う.

・Contact line (point) problem に対する研究は重み付きの関数空間で解析されているものがほとんどだけど,証明をちょろちょろ読んだ限りだと,境界に角があるような領域上での楕円型偏微分方程式に対する一般論を援用しているような気がする.でも,angle が90度の場合は singularity がなくなることは知られているから,彼らの結果は(自由境界問題に応用する観点から考えると)optimal ではないと思う.実際に,自由境界問題では,自由境界を対応する固定境界に変換して解かないといけないため,本質的に重要なのは固定境界における contact angle である.もし固定境界が 90度の contact angle しか持たないならば,面倒な関数空間を導入しなくても解析はできるはず.

・博士論文を加筆・修正した.

・投稿していた論文を少し直した.リジェクトされなかったので望みがありそう.頑張って直そう.

・圧縮・非圧縮二相流の研究は,表面張力がある場合,圧縮パートに起因する難しさが顕著になることがわかった.たぶん,まだ手をつけるべきでない問題だと思う.

・同期の優秀なT君が2次元全空間における定常ナビエ・ストークス方程式の適切性に関して部分的に解決した,という話を本人からいろいろ聞いた.いろいろ勉強になった.

・外部 Lipschitz 領域における Stokes 半群の評価について,いろんな人から,local energy decay で gradient 評価で  q = n とできないのかと聞かれた.Local energy decay を使っていないし,知らなかったので少し勉強した.ただ,local energy decay の証明は,関数の(空間変数についての)2階微分をあちこちで考えているので,証明の方法を変えたからといって解決できるわけでもない気がする.

・ということで,共同研究者にメールして,この課題について考えたことがあるか聞いてみた.ありがたいことに,彼からいろいろな提案を受けた.メールの最後に "I hope I could help you!" と言われたので,自分の頑張り次第では共同研究を続けられるのかもしれない.


<今後の目標>

・名古屋で講演するので準備を頑張る.

公聴会の準備を頑張る.もちろん公聴会も頑張る.

・Contact line problem を考える.Slip のときは問題ないけど,Navier slip の場合でも reflection で解けるかどうか考えてみる.

・Stokes 作用素 H^\infty-calculus を持つことを示す.本質的には Helmholtz projection の mapping property を明らかにすることが重要.

・Stokes 半群の gradient 評価を考える.

コリオリ力を伴う圧縮性 Navier-Stokes 方程式に対する研究を再開する.特性根を求めようとすると失敗することがわかっているので,特性根を求めることなく解の評価の導出を頑張る.たぶん,Danchin-Mucha の2次元に対する議論を応用できると思う.



忘年会シーズンで,いろんな人から「ブログ読んでるよ」と言われます.ありがとうございます.もうちょっと面白いことを書ければいいなあと日頃思っていますが,なかなか書けるような話題が見つかりません.強いて申し上げるならば,やんちゃな弟 a が結婚したことくらいでしょうか.次回の研究進捗は2月下旬を予定しております.次回の更新までに面白い話も提供できるよう頑張ります.では.