べっく日記

偏微分方程式を研究してるセミプロ研究者の日常

よくわかるLaTeXの書き方入門。

前期は授業を7つもとっていて更に毎週2時間ゼミの発表があるという,なかなか鬼畜な院生生活を送っていたが,しかしそんな生活もあと1カ月のようだ.さて,各授業でレポートの提出が求められている.この時期になれば期末レポートの提出を求められることが多いと思うが,レポートはLaTeXで書くときれいに書ける.

 

LaTeXで書く,ということは最初は難しいが,要領さえつかめば簡単である.ネットで調べてみるとアンナことコンナことできますよーみたいなのが多いが,それらがLaTeXで書くことに慣れるのを妨害しているように思う.そこで今回はLaTeXでどのように書けばいいのかを最小限説明することにしよう.

 

 以前も説明したように,LaTeXで書くためにはTeXをインストールしておく必要がある.そのやり方については,

watanabeckeiich.hatenablog.com

を参照してほしい.また,エディタはTeXstudioを強く推奨します.

 

1.文章を記述する前に

LaTeXで文章を記述する前に準備することが少しある.まずはフォルダを作成しよう.

f:id:watanabeckeiich:20160621230310p:plain

このフォルダの中にソースファイルとかを保存する.さてTeXstudioを起動して左上にある新規作成のボタン(緑の+のやつ)をクリックすると次のようになる.

f:id:watanabeckeiich:20160621230709p:plain

最初に

\documentclass[11pt,a4paper]{jsarticle}

\usepackage{amsmath,amsthm,bm,amssymb,extarrows}

を入力しよう.理由はあるけど,最初はわかんなくてもいい.これを書いておくことで都合がいいのである.

もし脚注を入れたい場合は

\renewcommand{\footnoterule}{
\vspace{0.5pt}
\noindent\rule{\textwidth}{0.4pt}
\vspace{-0.5pt}
}

も入力しておく.

さらに専門書のように,定義や定理に番号を付けたい場合は

\newtheorem{theo}{定理}[section]
\newtheorem{defi}[theo]{定義}
\newtheorem{lemm}[theo]{補題}
\newtheorem{rema}[theo]{注}
\newtheorem{corr}[theo]{系}
\newtheorem{exam}[theo]{例}
\newtheorem{prop}[theo]{命題}

も入力する.ここで

\newtheorem{abcde}[theo]{あいうえお}

は,\abcdeと入力したら「あいうえお」に番号を付けたやつを表示させるおまじないである.また,数学のように証明を付けて,「証明」と漢字で表したい場合は
\renewcommand\proofname{\bf 証明}

も入力するとよい(デフォルトはproof).レポートの提出や論文の提出のように,タイトルや自分の名前を入れたい場合は

\title{タイトル}
\author{名前}
\date{\today}

も入力する.日付を入れたくなければ,\date{\today}は入力しなくてもよい.

以上をすべて入力したい,という場合は結局,

\documentclass[11pt,a4paper]{jsarticle}
\usepackage{amsmath,amsthm,bm,amssymb,extarrows}

\renewcommand{\footnoterule}{
\vspace{0.5pt}
\noindent\rule{\textwidth}{0.4pt}
\vspace{-0.5pt}
}

\newtheorem{theo}{定理}[section]
\newtheorem{defi}[theo]{定義}
\newtheorem{lemm}[theo]{補題}
\newtheorem{rema}[theo]{注}
\newtheorem{corr}[theo]{系}
\newtheorem{exam}[theo]{例}
\newtheorem{prop}[theo]{命題}

\renewcommand\proofname{\bf 証明}

\title{タイトル}
\author{名前}
\date{\today}

 

をコピペすればよい.

 

f:id:watanabeckeiich:20160621232441p:plain

 

さて最後に

\begin{document}

\end{document}

と入力しよう.この間に書きたい文章を記述していくのである.

ここまでで,次のような感じ.

f:id:watanabeckeiich:20160621232441p:plain

 

2.文章を記述しよう

さて,下準備が終わり,いよいよ文章を記述する.Wordのように直観的な操作ではないので,最初は戸惑うが,慣れれば大丈夫.

 

 《 改行 》

例えば,「今日はいい天気だった.明日は雨だ」という文を,ピリオドのところで改行したい場合,LaTeX

 

今日はいい天気だった.

明日は雨だ

 

と入力しても改行されない.この場合は

 

今日はいい天気だった.

(空行)

明日は雨だ

 

と入力するか,

 

今日はいい天気だった.\\

明日は雨だ

 

と入力すればよい.ここで前者はインデントされるが,後者はインデントされないので,場合に分けて用いることが推奨される.

 

《 数式 》

数式をきれいに書けるのがLaTeXの特徴であった.記述したい数式の量や大きさ,長さによってLaTeXの書き方が異なってくる.

ーA.文章中に数式を書きたい場合

基本的には $数式$ と入力すればよい.数式のコマンドは覚えるべき.もし,覚えてなかったり,忘れたりした場合は,

f:id:watanabeckeiich:20160621234739p:plain

上のように左下の部分をクリックして,

f:id:watanabeckeiich:20160621235141p:plain

左のボタンをクリックするといろいろ出てくるので,目的のものをクリックすればOKである.

 

ーB.長い文章を独立して書きたい場合

横一列に書きたい場合は $$数式$$ と書く.一方,式変形が多く,改行を要する場合は

\begin{align*}

数式1&=数式2\\

&=数式3=数式4

\end{align*}

と入力する.\\のところで改行され,&のところが揃えられる.この場合は数式2のところで改行されて,数式2の下に数式3がくる.また,数式3と数式4の間は改行されない.

 

以上から,例えば,関数の極限に関する記述をLaTeXで書くと次のようになる.

関数$f(x)$の極限
$$\lim_{x\rightarrow a}f(x)=b$$
の定義は,任意の$\varepsilon$に対してある$\delta>0$が存在して,
任意の$x\in\mathbb{R}$に対して$|x-a|<\delta$ならば
$|f(x)-f(a)|<\varepsilon$が成り立つことである.

これを入力すると,

f:id:watanabeckeiich:20160622001244p:plain

となる.キーボードの上にあるF5ボタンを押して,OKをクリック(またはEnter)すると,

f:id:watanabeckeiich:20160622001401p:plain

 となり,右側に,出来上がるPDFファイルの様子が見える.LaTeXのソースを書く場合,見にくいとタイプミスの原因になるので,適度に改行が必要である(ただの改行は出力結果には無関係).

 

一方,式変形を行う場合,例えばsinxの3倍角の公式を記述する場合は次のようになる.

\begin{align*}
\sin 3x&=\sin(x+2x)\\
&=\sin x\cos 2x+\cos x\sin 2x\\
&=\sin x-2\sin^3 x+2(1-\sin^2 x)\sin x\\
&=-4\sin^3 x+3\sin x
\end{align*}

これを入力すると,

f:id:watanabeckeiich:20160622002356p:plain

となる.もし,式に番号をふりたい場合は

\begin{align*}

数式

\end{align*}

の代わりに * を取り除いた,

\begin{align}

数式

\end{align}

を用いる.そうすると,今の式は

f:id:watanabeckeiich:20160622002638p:plain

となる.もし,すべての式ではなく,一部の式にのみ番号を付けたい場合は,番号を付けたくない式の最後に \nonumber と入力する.今の場合,最後の式だけに番号を付けたい場合は,

\begin{align}
\sin 3x&=\sin(x+2x)\\
&=\sin x\cos 2x+\cos x\sin 2x\\
&=\sin x-2\sin^3 x+2(1-\sin^2 x)\sin x\\
&=-4\sin^3 x+3\sin x
\end{align}

と入力すればよい.そうすると,

f:id:watanabeckeiich:20160622003020p:plain

のようになる.

先程の $$数式$$ では,数式に番号が付けられないので,数式に番号を付けたい場合はこの方法をとるしかない.

 

3.図を挿入しよう

図を挿入する場合,挿入したいファイルを最初につくったフォルダの中に入れておくのがよい.LaTeXで図を挿入する場合は新しいパッケージが必要で,2行目の\usepackage~の次の行に

\usepackage[dvipdfmx]{graphicx}

を入力する必要がある.一般に,LaTeXで図を挿入するのは難しいとされているが,TeXstudioなら簡単に済む.

 

まずは上のウィザードをクリックする.その次に画像の挿入をクリック.

f:id:watanabeckeiich:20160622004543p:plain

その次に,右上のボタンをクリックして挿入したい画像を選択.

f:id:watanabeckeiich:20160622004948p:plain

選択できたら下のOKをクリック.そうすれば図の挿入は完了.

 

以上でLaTeXの書き方は終わるが,やはり数をこなせばどうってことないので,普段のレポートからLaTeXで書くのがよいのかな.理系の場合は卒論や修論を含む論文はすべてLaTeXで書かれることが多いので,慣れておいて損はないと思う.