べっく日記

偏微分方程式を研究してるセミプロ研究者の日常

研究進捗2017/2/3

毎週恒例?の進捗報告のお時間です。やったね。

 

・ゼミで発表した内容に少し誤りがあったので、修正した上でPDFにまとめた。

・Lopatinski 行列式を計算した。あと少し、詰めなければならないところはあるが、計算がほぼ終了した。4×4行列なのでかなりタフだった。我ながらよく頑張ったと思う。これは今考えている問題の折り返し地点を回ったことを意味する。

修論計画書を助教の先輩に見せ、助言をもらい、修正した。我ながらよく書けたと思う。

 

<来週の目標>

・Lopatinski 行列式の計算をもう少し詰め、証明を完成させる。

・高さ関数を含めたレゾルベント問題を考える。

 

 

修論では、一般領域(「曲がった」領域)まで含めてやる予定だったのですが、相転移が発生する場合は、自由境界を固定領域に変換する際、Lagrange変換は使えず、代わりに半沢変換を用いなければならないが、そうなると多様体上で定義された関数を考える必要があるという点から、一般領域までやるのはやめようとなった(と助教の先輩に言われた)。博士における研究のお楽しみですかね。

さて、年が明けてはじめて中本に行ってきました。

f:id:watanabeckeiich:20170203214507j:image

大変美味しかったです。そういえば店員にまだ学生なの?と言われてしまいました。院生の名に恥じぬよう研究に勤しみたいと思います。では。

 

数学は役に立たないのか。

最近研究の進捗ばかり書いてるのでたまには寄り道してみようと思う。

 

数学は役に立つかどうかというのはまあ古くからある議論の一つだが、今まで納得したようなしないような、そんな気がする。ここでは、数学は役に立つと主張する立場(以後略して役に立つ派)と数学は役に立たないと主張する立場(以後略して役に立たない派)の両者からこの問いの本質を探っていこうと思う。

 

まず、役に立つ派の主張を抜粋してみると、

・数学は基礎学問であり、工学へ幅広く応用されている。工学が役に立っているのだから、数学も役に立っている。

・数学で培った論理的思考は生活や仕事の役に立つ。

・毎日目にする天気予報だって統計学の研究に基づくものだ。

・数学に役に立たないと主張するお前が社会の役に立ってない。

 

まあ、最後はさておき、どれもそこそこ納得し得る主張である。では、一方で役に立たない派の主張を抜粋してみると、

・数学できなくても今まで何の苦労もなく生活できた。

・日常生活で2次方程式を解いている人を見たことがない。

・数学は役に立つかもしれないけど、自分にとって数学は役に立たない。

・そもそも数学は嫌いだ。

 

まあ、役に立たない派の主張をまとめると、私は数学できなくても何も困らない、である。ちなみに、私も日常生活で2次方程式を解いている人を見たことはない。これは少し前に機内で微分方程式解いてた人がテロリストと勘違いされる事件があったので、みんな数式の取り扱いには注意していることに因るものであると考えられる。

 

このように、そもそも役に立つ派と役に立たない派の数学に対する「視点」が異なる以上、役に立つ派と役に立たない派がうまく「和解」するのは困難である。この場合、以前書いたように、クリティカルシンキングの知識が活きてくる。

 

watanabeckeiich.hatenablog.com

 

まず、役に立つ派、役に立たない派はどちらも人間である以上、どこかで共通の認識を持っているはずである。この場合、両者は「数学が役に立ってくれたらうれしい」という点で一致していると、私は考える。

 

役に立たない派の主張で「算数は役に立たない」というのは聞いたことがない。つまり、役に立たない派も算数は役に立つと(暗に)認識しているわけである。しかし、よく考えてみれば、算数で習う、速さや割合などは生活では当たり前のように登場しているから、算数が役に立つかどうかというよりも、使っているかどうかということが、算数に対する認識に影響を与えていると考えられる。

 

このような視点から、役に立つ派と役に立たない派の主張を再考すると、役に立つ派は数学に対して「能動的な」認識を、役に立たない派は数学に対して「受動的な」認識を持っていると分類できるような気がする。

 

では、なぜこのような認識の違いが生まれるのか。まあこれは単純に中学高校の数学が得意だったかどうかというだけな気がする。実際に、役に立つ派は数学が得意だった人が多いし、役に立たない派は数学が不得意だった人が多いような気がする。

 

しかし、中学高校で数学がかなり苦手だったのにもかかわらず、役に立つ派に所属している人もよく散見する。この人たちに共通しているのは、数学に対してきちんと敬意を払っているということだ。すなわち、数学が苦手だったからといって、それが数学を批判する理由には当たらないと考えているということだ。

 

さて、役に立つ派も役に立たない派も、「数学は役に立ってくれたらうれしい」という点で認識は一致しているのであった。つまり、役に立つ派と役に立たない派が「和解」するには、役に立たない派を説得することが必要になる。

 

役に立たない派を説得するにあたり、そもそも、数学が役に立つとはどういうことなのか。そもそも、数学とは何か。ということから始めよう。

 

「数学とは何か」

 

一見哲学のように思えるが、もうすでに答えは出ている。アメリカ数学会(AMS)は数学の分野を以下のように分類している:

00 General / 01 History and biography / 03 Mathematical logic and foundations / 05 Combinatorics / 06 Order, lattices, ordered algebraic structures / 08 General algebraic systems / 11 Number theory / 12 Field theory and polynomials / 13 Commutative algebra / 14 Algebraic geometry / 15 Linear and multilinear algebra; matrix theory / 16 Associtive rings and algebras / 17 Nonassociative rings and algebras / 18 Category theory; homological algebra / 19 $K$-theory / 20 Group theory and generalizations / 22 Topological groups, Lie groups / 26 Real functions / 28 Measure and integration / 30 Functions of a complex variable / 31 Potential theory /32 Seveal complex variables and analytic spaces / 33 Special functions / 34 Ordinary differential equations / 35 Partial differential equations / 37 Dynamical systems and ergodic theory / 39 Difference and functional equations / 40 Sequences, series, summability / 41 Approximations and expansions / 42 Harmonic analysis on Euclidean spaces / 43 Abstract harmonic analysis / 44 Integral transforms, operational calculus / 45 Integral equations / 46 Functional analysis / 47 Operator theory / 49 Calculus of variations and optimal control; optimization / 51 Geometry / 52 Convex and discrete geometry / 54 General geometry / 55 Algebraic topology / 57 Manifolds and cell complexes / 58 Global analysis, analysis on manifolds / 60 Probability theory and stochastic processes / 62 Statistics / 65 Numerical analysis / 68 Computer science / 70 Mechanics of particles and systems / 74 Mechanics of deformable solids / 76 Fluid mechanics / 78 Optics, elecromagnetic theory / 80 Classical thermodynamics, heat transfer / 81 Quantum theory / 82 Statistical mechanics, structure of matter / 83 Relativity and gravitational theory / 85 Astronomy and astrophysics / 86 Geophysics / 90 Operations research, mathematical programmig / 91 Game theory, economics, social and behavioral sciences / 92 Biology and other natural sciences / 93 Systems theory; control / 94 Information and communication, circuits / 97 Mathematics education

ここで特筆すべきは番号が連続しているわけではなく、ところどころ飛んでいることである。これは新しい分野が登場することを期待しているのである。さて、こんなに分野があれば、全く知らない分野もたくさんあってもおかしくない。私は解析系の人間なので、例えば、結び目理論の話を聞いてもよくわからないし、それが何の役に立つかもわからない。でも、自分の研究に役に立ってくれたらうれしいなとは思う。これは役に立たない派の立場ではないだろうか。

 

つまり、「役に立ってくれたらうれしい」のは、自分にとってそれがプラスに働くことが期待されるときのことを指している。

 

さて、有名な話を紹介したい。グレゴリー・ペレルマン氏は位相幾何の問題であるポアンカレ予想微分幾何統計力学を組み合わせて解いたのは有名な話である。位相幾何を専門とする人からすると、統計力学は「役に立ってくれたらうれしいけど、自分には役に立たない」のである。ところが,ペレルマン氏は統計力学は「役に立つ」ことを示したのである。その結果、位相幾何の専門家にとって統計力学は「どうやら位相幾何の役に立つらしい」という認識に変わったはずである。ここで重要なことは、統計力学が「役に立たない」という認識から「役に立つ」という認識に変わったことである。これは自分の身近な範囲に対して「役に立つ例」を提示され、それが自身にとってプラスに働いたことに因るものと考えられる。

 

例えば、量子力学における基礎方程式であるシュレーディンガー方程式も、実は弾性体を表す方程式と関係があったり、周期関数の解析の為に導入されたフーリエ変換偏微分方程式の研究には欠かせないなど、研究を進める上で、他の分野の助けを借りる事はよくある。

 

これらに共通するのは、役に立つことがある日突然わかった、ということである。

 

結局のところ、役に立つ派が役に立たない派と「和解」するには、役に立たない派が数学は役に立つ、自分にとってプラスに働く、ということを認識するまで役に立つ派は辛抱強く待ち続け、さらに、「数学は役に立つ」ということの啓蒙活動を頑張るしかないのかなと思う。

 

まあ一番いいのは争わないことだと思うんですけどね。両者の意見を尊重し、立場を中立に保つことが一番平和だと思います。

 

眠くなってきたので、今日はこの辺で。おやすみなさい。

研究進捗2017/1/26

・Lopatinski行列を整理することはできなかったが、各成分の分母はすっきりとしているので、オーダーを考えることにより上手く評価することはできそうだ。

・先週計算した内容をゼミで発表した。私はレゾルベント方程式の右辺がとりあえず 0 として、そこが f の場合はあとで考えようと思ったが、先生から別に右辺を 0 にする必要はないのではないかと言われた。証明のアイディアは昨年の秋に読んだ先生の論文からパクっているのだが、何故だろうか。もう少し計算をしてみてどっちにするか考えてみたいと思う。たぶん 0 にしておかないとLopatinski行列式のオーダーを考えるのがめんどくさくなると私は考える。

修論計画書を先生に見せたところ、表(研究目的・先行研究)は大丈夫だったが、裏(研究計画)はもう少し具体的に何をするのかを書くように注意されたので、つい先程研究計画を大幅に書き換えた。

・ゼミで発表した内容はまだ1/3程しかPDFにまとめていない。

 

<来週の目標>

・ゼミで発表した内容をPDFにまとめる。

・Lopatinski行列式を計算する。

 

 

もう少しすると研究室配属が発表されるようです。今年は私に後輩ができるのでしょうか。さて、自動車学校の進捗ですが、ようやく技能教習の予約を取り終わり、順調に行けば来月中旬くらいには卒業できそうです。そんなわけで路上教習が何回かあったわけですが、我ながら自分の運転にはハラハラします。ハラハラするのはゲームアプリのガチャくらいにしておきたいものです。そういえば中本の北極をしばらく食べてない気がします。誰か一緒に食べに行きましょう。では。

研究進捗2017/1/21

・参考文献リストを更新した。

・Korteweg テンソルをきちんと導出した。それに伴い、エネルギー保存則の式を書き直し、それが先行研究と一致していることを確認した。

モデリングをまとめたPDFファイルを更新した。

・応力テンソルを分解して jump condition を一つ追加した。

・x_n に関しての常微分方程式については、致命的な計算ミスが発覚したので計算をやり直し、Lopatinski 行列を求めた。

修論計画書を書き上げた。

 

<来週の目標>

・Lopatinski 行列をもう少し整理し、その逆行列を求める。

・ゼミの発表後、発表内容をPDFにまとめる。

・先生に修論計画書を見せ、コメントをもらう。

 

 

先日の数学Q&Aにおいて解析半群に関しての質問あり、かなりビビってしまいました。去年、一昨年に勉強したことを復習することが求められているような気がします。復習といえば教習所もそうですね。何回も同じことを注意されてしまいます。もしかしたら私は復習が苦手なのかもしれません。誰かいい復習の仕方があったら教えてください。では。

テレンス・タオ著の『ルベーグ積分入門』を立ち読みした。

UCLAのテレンス・タオ先生が書いた測度論の教科書を翻訳した、『ルベーグ積分入門』が生協の本屋に並んでたので少し立ち読みしてみた。以下、個人的な「感想」です。

 

内容は至って普通だった。測度論の一般的なテキストと大して変わらないと思う。レイアウトはかなり見やすい方だと思う。

 

この本の特徴として、後半に「問題の解き方」が載っていることが挙げられる。ツイッターを眺めてみると、この「問題の解き方」が載ってるからこの本を買った、それぐらい素晴らしいんだ。と力説してる人がいた。でも、全く同様の内容がタオ先生のブログに書いてある(もちろん英語だけど)。ちなみに私は、ブログのその記事を印刷してファイリングしてある(まあ、それくらいよくまとまっている)。

 

私としては、数学の解き方を学ぶために本を買うなら、タオ先生の "Solving Mathematical Problems: A Personal Perspective" という本の方がいいかと思います。この本は「難しく」はないので「楽しく」読み進めることができ、どんな人にもオススメです。

 

タオ先生のブログ: 245A: Problem solving strategies | What's new

タオ先生の本:  

Solving Mathematical Problems: A Personal Perspective

Solving Mathematical Problems: A Personal Perspective

 

 

こう言っては怒られてしまいそうだけど、すでに測度論・ルベーグ積分のテキストを持ってる人は「わざわざ」買う必要はないかと思う。やはり数学は1冊の本を完璧に理解し、その内容を再構成できるくらいまで読み込むことが大切なのかなと思います。

 

そういえば、最近論文等を読んでばかりでじっくり本を読んでない気がします。誰か一緒に自主ゼミをやりましょう。ご連絡お待ちしております。では。

研究進捗2017/1/14

・方程式をフーリエ部分変換して x_n についての常微分方程式にした。

・未知関数8つに対して方程式が6つしか出てこなかったので、モデリングを再考した。

・以前発表した部分の仮定で誤っている箇所があり、それを訂正したら Korteweg テンソルの係数がきちんと定まらなかった。すなわち、よく知られた Korteweg テンソルの形にならなかった。

・以上のことをゼミで発表、というよりは先生と助教に報告した。

・先生から Bulk における方程式は間違ってないはずなので、もう一度 Heida-Marek の論文を読めと言われた。また、もしかしたら変形速度テンソルの定義が間違っている(1/2 をつけるかどうか)のでそこももう一度チェックしろと言われた。

・とはいえ、Korteweg テンソルの係数を正しく定めることができたとしても、interface condition すなわち jump condition はやはり1つまたは2つ足りない。ゼミで先生から  \nabla \rho \cdot \mathbb{n} の jump が0と仮定しろと言われた。この仮定は物理的にどのような意味を持つのか、いまだによくわからないが、おそらく質量保存のようなものを表すのだろう。

・もし、それだけでは足りない場合、応力テンソルを分解して、通常の Navier-Stokes-Fourier のときの結果に沿うような形で新しく jump condition を作ろうといわれた。確かにこれは heat flux の仮定に Korteweg テンソル由来のものが含まれることを考えれば自然な仮定なのかもしれない。

・先生の言われた通り、論文を読み直した結果、変形速度テンソルの仮定を間違えたのではなく、圧力の仮定を間違ってたことが判明した。圧力は内部エネルギーを密度で微分したものに密度を2回かけたものであることが熱力学の第1法則からわかるが、今回の場合、内部エネルギーを密度と温度だけでなくさらに密度の gradient を加えた 2N+1 変数関数と仮定しているので、その結果、密度の gradient の分の「ずれ」が Korteweg テンソルに影響してくることがわかった。まあ要はもっと丁寧に論文を読めば解決できた話である。

修論計画書を少し書いた。

 

<来週の目標>

モデリングを調べた際に様々な論文をダウンロードしてPCに保存したので、きちんと分類する。すなわちファイル名をきちんと書き換えて、参考文献リストを更新する。

・もう一度丁寧にエントロピー増大則について計算し、Korteweg テンソルを正しく導出する。

モデリングをまとめたPDFファイルを修正する。

フーリエ部分変換により得られた常微分方程式を解き、方程式の解表示を出す。

・可能ならば Lopatinski 行列式について解析する。この行列式は 4×4 の行列式で大変だがめげずに頑張りたい。

 

 

最近になってようやく路上教習が始まりました。教習所の近くは違法駐車が多いばかりか道も狭くてさらに歩行者も多くて泣きたくなってきます。マニュアル車の運転ってこんなにも大変なんですね。さて話は変わりますが今日は寒いですね。こんな日は中本の北極が食べたくなってきますね。うん、食べたくなってきた。お腹すいてきた。誰か一緒に食べに行きましょう。では。