べっく日記

偏微分方程式を研究してるセミプロ研究者の日常

よくわかるフーリエ変換。

今日は暑い.ということで,カキ氷のシロップを買いに行ったが,まだ売ってなかった.少々気が早かったみたい.

 

さて,最近ブログを更新できていないから,そろそろ更新しようと思って,いまパソコンにむかっています.こつこつ書いていた研究進捗ですが,4月から研究ノートを(初めて!)作るようになり,わざわざブログに書く必要がなくなったので,今後は不定期に更新します.

 

ところで,ついさっき,ちょうど去年フーリエ級数について書いたのを思い出した.

watanabeckeiich.hatenablog.com

この記事を書いたあと,フーリエ変換について書こうと思っていたけれども,すっかり忘れていました.最近,Twitter を見ていると,フーリエ級数フーリエ変換の違いについて活発に(?)議論されているようなので,今日はフーリエ変換定義について説明しようと思う.もちろん,フーリエ変換の持つ性質はバラエティーに富んでいるが,ここで説明すると長くなるので,やめておきます.

【目次】

1. Why フーリエ変換?

フーリエ級数とは何かを思い出そう.フーリエ級数は周期関数に対して考えられるものであった.周期  2\pi の周期関数  f (t)

 \displaystyle f (t) = \sum_{n = -\infty}^\infty c_n e^{i n t},

 \displaystyle c_n (t) := \frac{1}{2\pi} \int_{- \pi}^\pi e^{-int} f (t) \mathrm{d} t

と書けるのであった.特に,周期が  T であれば,

 \displaystyle f (t) = \sum_{n = -\infty}^\infty c_n e^{i n \omega t}

と書くことができる.ここで, \omega = 2\pi /T は周波数を表す.つまり,周期関数  f(t)単振動  e^{i\omega n t} の重ね合わせで表現できるというのがフーリエ級数の意味することであった.

 

もし, f(t) が実数直線上  \mathbb{R} で定義された関数で,しかも周期的かどうかわからない場合に対してもフーリエ級数展開が成り立つのか?というのがフーリエ変換のモチベーションである.

2. フーリエ変換の定義

勝手な有限区間  a \leq t \leq b で定義される関数  f (t) は変数変換

 \displaystyle t = \frac{b-a}{2\pi}t'

により,周期が  2\pi である関数  f(t')に変換することができる.実際に,

 \displaystyle \frac{2a}{b-a}\pi \leq t' \leq \frac{2b}{b-a} \pi

である.よって,

 f(t) = \displaystyle f\bigg( \frac{b-a}{2\pi}t'\bigg) = g(t')

とおけば,形式的に

 \displaystyle g(t') = \frac{1}{2\pi} \sum_{n=-\infty}^\infty \bigg(\int_{\frac{2a}{b-a}\pi}^{\frac{2b}{b-a} \pi} e^{-in r'} g(r') \mathrm{d}r' \bigg) e^{i n t'} ,

すなわち,

 \displaystyle f(t) = \frac{1}{b-a} \sum_{n=-\infty}^\infty \bigg(\int_a^b e^{-i \frac{2\pi n r}{b-a}} f (r) \mathrm{d} r \bigg) e^{i \frac{2\pi n t}{b-a}}

と書くことができる.ここで,b-a は有限であることに注意しよう(有限でないと上式は無意味になる).

 

ここで, b-a は非常に大きいとして,

 \displaystyle s = \frac{2\pi n}{b-a}

を考える.いま, n は整数であるから, \Delta n = (n+1) -n =1 とおくと,

 \displaystyle \frac{1}{b-a} = \frac{\Delta n}{b-a} = \frac{\Delta s}{2\pi}

であるから, f(t)

 \displaystyle f(t) = \frac{1}{2\pi} \sum_s e^{ist} \Delta s \int_a^b e^{-irs} f(r) \mathrm{d} r

と書ける.これに対して, a\to -\infty,  b\to \infty とした極限を考え,さらに和  \sum積分に置き換えることにより得る式:

 \displaystyle f(t) = \frac{1}{2\pi} \int_{-\infty}^\infty e^{ist} \mathrm{d} s \int_{-\infty}^\infty e^{-irs} f(r) \mathrm{d}r

 f(t)フーリエ積分という.このフーリエ積分が収束するためには,関数  f(t) に条件を少し課す必要があるが,ここでは言及しない.

 

さて, f(t)

 f(t) = \displaystyle \frac{1}{\sqrt{2\pi}} \int_{-\infty}^{\infty} e^{ist} \bigg(\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty} e^{-ir s} f(r) \mathrm{d}r \bigg)\mathrm{d} s

と書くことができる.このとき,

 \displaystyle\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty} e^{-ir s} f(r) \mathrm{d}r

 f(t)フーリエ変換といい, \mathcal{F}[f](s) と書く.よって, f(t)

\displaystyle f(t) = \displaystyle \frac{1}{\sqrt{2\pi}} \int_{-\infty}^{\infty} e^{ist} \mathcal{F}[f](s)\mathrm{d} s

と書ける.関数  g に対して,そのフーリエ逆変換  \mathcal{F}^{-1}[g](t)

 \displaystyle \mathcal{F}^{-1}[g](t)=\frac{1}{\sqrt{2\pi}} \int_{-\infty}^{\infty} e^{ist} g(s)\mathrm{d} s

と定義すれば,結局,

 f(t) = \mathcal{F}^{-1}[\mathcal{F}[f]](t)

を得る.これは,関数  fフーリエ変換して,さらに逆変換すればもとに戻るということを表す.これを反転公式という(もちろん,このときも  f に条件が必要だが,ここでは言及しない).もちろん,順番を変えた

 f(t) = \mathcal{F}[\mathcal{F}^{-1}[f]](t)

も成り立つ.

 

ここでは,簡単のために,1次元の場合についてのみ説明したが, N 次元の場合も同様に定義することができる.実際に,関数 f (x) に対して,そのフーリエ変換  \mathcal{F}[f](\xi) およびフーリエ逆変換  \mathcal{F}^{-1}[f](\xi) をそれぞれ

 \displaystyle \mathcal{F} [f] (\xi) = \frac{1}{(2\pi)^{N/2}}\int_{\mathbb{R}^N} e^{- i x \cdot \xi} f(x) \mathrm{d}x

 \displaystyle \mathcal{F}^{-1} [f] (\xi) = \frac{1}{(2\pi)^{N/2}}\int_{\mathbb{R}^N} e^{- i x \cdot \xi} f(x) \mathrm{d}x

と定義する.ただし, f (x) \mathbb{R}^N 上可積分関数である.

 

もし, \mathbb{R}^N 上可積分でない関数  f(x)フーリエ変換フーリエ逆変換)をしたい場合は,超関数を導入する必要がある.これについては,例えば,

ogyahogya.hatenablog.com

がわかりやすいと思う.

3. フーリエ変換偏微分方程式にどう使うか

フーリエ変換の定義がなんとなくわかったところで,フーリエ変換を実際に用いることを考えよう.いま,簡単のため熱方程式を考える(簡単に考えたいので,以降「変なこと」は生じないと仮定する).ユークリッド空間  \mathbb{R}^N における熱方程式は,点  x\in\mathbb{R}^N,時刻  t\geq 0 での温度を  u(x,t) と表せば,

\displaystyle \frac{\partial u(x,t)}{\partial t} - \Delta u(x,t) = 0,

 u (x,0) =f(x)

と書くことができる.ただし, x\in\mathbb{R}^N は空間変数,t\geq 0 は時間変数であり, f t=0 での初期温度分布, \Delta = \displaystyle \sum_{j=1}^N \frac{\partial^2}{\partial x_j^2}ラプラス作用素を表す.

 

まず,空間変数についてフーリエ変換を施すと,熱方程式は

 \displaystyle \frac{\partial}{\partial t} \widehat{u}(\xi,t) + |\xi|^2 \widehat{u}(\xi,t) = 0

 \widehat{u}(\xi,0) = \widehat{f}(\xi)

と書き直される.ただし, \widehat{u}(\xi,t) \widehat{f}(\xi,t) はそれぞれ  u fフーリエ変換を表す.重要な点は,フーリエ変換を施したことで,空間微分が「消えて」方程式が「常微分方程式」のように変わったことである.

 

すぐわかるように, \widehat{u}(\xi,t)

 \widehat{u}(\xi,t) = e^{-|\xi|^2 t} \widehat{f}(\xi)

と表せるので,フーリエ逆変換を施すと,

 u(x,t) = \mathcal{F}^{-1} [e^{-|\xi|^2 t} \widehat{f}(\xi)](x)

と書ける.実は,フーリエ変換のいい性質を用いれば,

 \displaystyle u(x,t) = \frac{1}{(4 \pi t)^{N/2}} \int_{\mathbb{R}^N} e^{-|x-y|^2 / 4t} f(y) \mathrm{d}y

と書き直せることがわかる.特に,

 \displaystyle E(x,t):=\frac{1}{(4 \pi t)^{N/2}} e^{-|x|^2 / 4t}

熱核といい,いろいろいい性質をもつことが知られている.

 

初学者は,空間変数についてフーリエ変換を施せばいいことがあると思っておけばいいと思う.一方,時間変数については,ラプラス変換を施すといいことがある.

4. 参考文献

今回は,めんどくさいところを省略した.しかし,やはりちゃんと勉強したほうがいいと思うので,勉強する上で参考になる文献を紹介することで,今回の記事を終わろうと思う.

 

ルベーグ積分の知識を要求しない本として.中村周先生のフーリエ解析を挙げる.知っておくべきことが満遍なく載っていると思う.

フーリエ解析 (応用数学基礎講座)

フーリエ解析 (応用数学基礎講座)

 

 

フーリエ解析整数論にも用いられるが,整数論への応用を意識した本として,スタイン先生・シャカルチ先生のフーリエ解析入門を挙げる.いろいろ書いてあって,読んでて面白いと思うが,ささっと勉強したい人には向かない本だと思う.

フーリエ解析入門 (プリンストン解析学講義)

フーリエ解析入門 (プリンストン解析学講義)

 

 もし,この本を英語で読みたければ

Fourier Analysis: An Introduction (Princeton Lectures in Analysis)

Fourier Analysis: An Introduction (Princeton Lectures in Analysis)

 

を読んでください.

 

フーリエ変換が出来上がるまでの「ストーリー」を読みたい場合はケルナー先生のフーリエ解析大全を挙げる.ただし,この本は少し確率論の知識を要求するので,確率論を全く知らない人は読まないほうがいいと思う.

フーリエ解析大全〈上〉

フーリエ解析大全〈上〉

 

 

超関数を用いたフーリエ変換をしっかり勉強したい人には垣田先生のシュワルツ超関数入門をお薦めする.この本は記述が丁寧である.

シュワルツ超関数入門

シュワルツ超関数入門

 

 

フーリエ変換偏微分方程式にどのように応用するかを意識して書かれた本として,垣田先生・柴田先生のベクトル解析から流体へを挙げる.ちなみに,私が学部生のときに一生懸命読んだ本です.ただ,絶版(?)になってしまったみたいなので,図書館で借りよう.

ベクトル解析から流体へ

ベクトル解析から流体へ

 

 

フーリエ解析を実解析に使いたいという人には次の2冊をお薦めします.

Fourier Analysis (Graduate Studies in Mathematics)

Fourier Analysis (Graduate Studies in Mathematics)

 

少々古い本ですが,

Introduction to Fourier Analysis on Euclidean Spaces (Mathematical Series)

Introduction to Fourier Analysis on Euclidean Spaces (Mathematical Series)

 

 

今日はこのくらいで失礼します.では.