べっく日記

偏微分方程式を研究してるセミプロ研究者の日常

人は「なぜ」に動かされる。

自分をアピールする機会は意外と多い。しかし、必死のPRにもかかわらず、なぜか胸に響かないことが多い気がする。就活の自己PRですごいこと書いてあっても「それでなんなの?」と思われちゃう、アレである。

 

人は「なぜ」に動かされる。これはどういうことなのか、次の動画が教えてくれる。

 

www.ted.com

 

これはまだAppleiPadを発表してない2009年にアップされた動画である。TEDを見て英語を勉強しようと思った時期があって、そのときにこの動画を発見した。まあ結局三日坊主で英語は勉強しなくなったわけだけれども。

 

学部3、4年のとき、私はテニスの学生連盟の役員をしていて、大会の企画や運営をしていたが、一番の悩みの種は大会に選手がエントリーしてくれないということだった。この動画を見た後、PRの仕方がよくなかったことがわかった。なぜなら、人は "What" ではなく "Why" に動かされるからだ。

 

以下、備忘録を兼ねて、動画を要約しておく。

 

まず、情報は What - How - Why の3つの階層から成っている。具体的に「テレビ局」という情報がどうなってるか考えてみる。

 

What はテレビ局が何をしているのか。

→ テレビ局は情報を提供してる。

 

How はテレビ局がどのようにして What を実現しているか。

→ 電波とテレビを用いて実現してる。

 

ここまでは多くの人はすぐわかる。しかし、最後の Why にあたる部分、すなわち「なぜ」それをやるのかをわかっている人は本当に少ない。ここで注意したいのは、「利益」は「なぜ」の答えにならないということである。利益というのは結果であって、目的ではないからだ。何のために、何を信条としているのか、テレビ局の存在意義が何か、またなぜそれが大切なのかということ、これが「なぜ」の答えになる。

 

多くの人は What → How → Why という順で情報を伝えている。つまり、明確なものから曖昧なものへ向かっている。しかし胸に響く伝え方はこの真逆なのであり、 Why → How → What という順なのである。

 

例えば、コンピュータを宣伝する場合を考えてみる。

 

 「私たちのコンピュータは素晴らしい。美しいデザインで簡単に使えて、しかも親しみやすい。どうですか、ひとつ買ってみませんか?」

 

これを聞くと「いや、買わないよ」と即答してしまいそうである。なぜなら買わなきゃいけない「理由」が見当たらないからである。ではAppleならどう宣伝するのか。

 

「私たちのすることはすべて世界を変えるという信念で行っています。私たちが世界を変える手段は美しくデザインされ簡単に使えて親しみやすいものを作ることです。こうして素晴らしいコンピュータが出来上がりました。ひとつ買ってみませんか?」

 

このいい例と先程の悪い例、伝え方の順が逆である。さらに、いい例の方は相手に行動を期待しているということが挙げられる。相手に行動を期待する、すなわち相手の心を動かすということである。

 

人は「何を」ではなく「なぜ」に動かされるのである。

 

人間の脳というのは大脳新皮質が外側にあって、その内側に大脳辺縁系がある。大脳新皮質では、合理的、分析的思考、言語を処理する。大脳辺縁系では感情、信頼、忠誠心を処理する。つまり、What と How は大脳新皮質が、 Why は大脳辺縁系が処理すると言える。

 

What → How → Why という順だと、大量の情報を処理することができる。ここでいう情報とは、機能やメリット、事実、数値などである。しかしこれらは行動には結びつかない。なぜなら行動を制御するのは大脳辺縁系だからである。大脳辺縁系で処理した情報で意思決定し、行動を起こすのである。

 

Why → How → What という順の場合、行動を制御する脳の部分に直接働きかけることができる。言葉は行動によって、理由付けはあとからでもできるのである。

 

動画ではこの後ライト兄弟などの例を挙げながら、このことについて具体的に説明している。ここでは書かないので、知りたい人は動画を参照してほしい。

 

信念を持った会社経営者、スポーツ選手などがかっこよく見える理由がわかった気がする。私も何らかの信念を持って研究していきたいな。