べっく日記

偏微分方程式を研究してるセミプロ研究者の日常

アメリカ滞在記 Part 01。

ピッツバーグに来てから1週間が経ちました.生活に徐々に慣れてきた......といいたいところですが,なかなか慣れません.大学から近いという理由で滞在先を決定しましたが,これがそもそも間違っていたような気がしてきました.滞在先の周辺にスーパーがないので生活がとても不便です.多少大学から遠くても生活しやすい場所に滞在できればよかったなあと思います.まあ治安は良さそうなので良しとしましょう.ところで,日々思ったことをブログの記事として書き溜めていたら,ところどころ研究日誌のようになってしまいました.研究に興味がない人は適宜読み飛ばしてください.


前回の記事はこちら:

watanabeckeiich.hatenablog.com


目次:

05月26日(Day 02 / 100)

起床後,ブログを更新した(これが前回の記事).今日は大学までの道順の確認と大学周辺のお店のチェック.大学まで15分だと思ったけど,数学科がある棟までは20分だった.だまされてしまった.大学までの道はほぼ平坦で,思ってたよりもシンプルな道順だった.大学の周辺にスーパーとかあればいいなあとか思ったんだけれども,全く見当たらない.ドラッグストアみたいなお店があったので入ってみたけど,冷凍食品とお菓子しか食料がない.一応サンドイッチと思われるもの(ハムをパンでサンドしてあるだけのやつ)が売ってたけど,4~5ドルくらいだった.この国の物価はどうなっているんだ.いや,ドラッグストアだから高いんだろうか.


今日は日曜日ということもあって,閉まっているお店が多かった.レストランで食事をするのはいろいろと(店員とコミュニケーションやチップとか)めんどくさいので,仕方なくマクドナルドで昼食を済ませた.マクドナルドでも,いろいろなメニューがあって「あれ食べてみたいなあ」と思ったやつもあったけど,結局一番発音が簡単なビッグマックを食べた.もうちょっと英語勉強していればよかったなあって感じる.


午後は雨予報だったので,昼食を済ませたあとは帰宅.大学の周りにお店がなさ過ぎて,このままでは生活がやばいなと思い,数年前ピッツバーグに1ヶ月ほど滞在したことのある先輩のMさんにメールしてみた.すぐ返信が来たけど,やっぱり生活に不便な街だそうだ.この国は本当に自動車社会なんだなあって思う.自動車に乗れない人はマジで生活弱者って感じだ.帰宅後は眠気がすごかったのでがっつりお昼寝した.起きた後は夕飯を食べ,すぐ寝た.時差ボケがかなりひどい気がする.数年前アメリカ(ロスとラスベガス)に旅行したときはそれほどひどくなかったのにな.


05月27日(Day 03 / 100)

当然ながら,よく寝れなかった.夜はほとんどずっと起きていた気がする.スマホばかりいじっていたけど.でもそのおかげで(?),滞在先の近くにそこそこ評判のいい,個人経営のスーパーがあることがわかった.ただ,営業時間が朝8時から夕方5時か6時までなので,帰宅途中に寄って買い物をするというのは難しそうだ.今度土曜日に行ってみよう.


今日は雨予報だったので,家から出なかった.今日は二相流の論文をいろいろ書きなおしていた.お昼ご飯はジャガイモを食べた.

このままでは味がなさ過ぎるので一応ケチャップとマヨネーズをつけて食べた.昼食後は眠気がやばくて,このまま寝てしまったら時差ボケが解消されない......起きなきゃ......!とか思ってたけど,気づいたらベッドの上でがっつりお昼寝してしまった.昨日と同じだ......起きたのが21時だったので,夕食を食べず,お風呂入って歯を磨いてすぐ寝た.この1週間は時差ボケとひたすら戦う感じになるのだろうか.


05月28日(Day 04 / 100)

昨日は祝日だったので(渡米してから初めて知った),今日から大学に行く.ピッツバーグ大学は理科大と同じような感じで,大通り沿いに大学の建物が並ぶという感じのようだ.特に撮りたい写真があるわけでもないけど,写真を撮って来いとSGUの秘書の人に言われているので,今日はとりあえず1枚撮った.

昨年 Imperial に行ったときの写真(大学の建物とか)が少なすぎてちょっと注意されてしまったので,本当はもっと撮らなきゃいけないんだろうけど,暑いのでまた今度にしよう.


10時に Galdi 先生と会うことになっているので5分前くらいに先生の部屋の前に着いたけどまだ来てなかった.やっぱイタリア人は時間にルーズなのかなあって思ってたらちょうど10時に先生がやってきた.どうやら Galdi 先生は時間ぴったりに行動する人みたいだ.自己紹介しようと思ったら,以前に何回かあったことあるよねって言われた.たしかに数回会ったことあるけど,2016年の秋に早稲田で行われた研究集会と2017年の夏のCIMEのサマースクールでしか会ったことないよな?どんだけ記憶力がいいんだよ.やはり,いろいろな研究集会に出席することは先生に顔を覚えてもらうという点で重要なのだろう.


先生から事前に,会ったときは自分の研究についての説明よろしくねって言われていたので,一応準備していたけど,先生の頭の回転が速すぎて,あまり説明しなくても研究内容を理解してもらえた.個人的にはコリオリ力付きの圧縮性ナビエ・ストークスを渡米中に完成させようと思っていたけど,ほとんど興味を示してもらえなかった.悲しい.つまらない問題なのだろうか.結局,ある自由境界問題を提示された.問題もらえたのはうれしいけど,CIMEのサマースクールで見たのと全く同じ問題(Future work として提示されていた問題)だった.なんか普通に難しくて草生える.この問題の難しい点は,大雑把に言うと,自由境界が「2つ」ある点と contact angle problem を考えなければならない点の2つ.もちろん,「空洞」がない場合はすでにいろいろやられているけど,どうやらほとんど L2 framework を経由しないと解けない問題みたいだ.Contact line problem は過去に Solonnikov 先生とかによる結果がいくつかあるみたいだけど,全部2次元の結果なんだよなあ.3次元の場合だとなにか違うんだろうか.せっかくだからいろいろ悩んで,わからないことがあったら積極的に Galdi 先生に質問することにしよう.


と,数学の話ばかりではつまらないので,夕飯の写真でも挙げておこう.

ちなみに,昼ごはんは Subway だった.おいしかった.

05月29日(Day 05 / 100)

今日の午前中はホームページスケジュール欄を見やすく直していた.だいぶ見やすくなったと思う.また,今日からお弁当男子になった.

うん.スパゲッティは安定.


午後は contact line problem についていろいろ調べてみたりしたけど,なんかよくわからないなあ.Solonnikov 先生いわく「(contact line problem の場合)2次元と3次元の間にはさほど違いがあるわけではないけど,問題の formulation が簡単だから2次元で考える」ってことらしいけど,だったらなぜ3次元の結果がこれほど少ないんだろうな.Bothe-Prüss はちゃんと formulation を考えているから参考になりそうだけど,数学解析するにはちょっと仮定があいまいな気がする.しばらくは(領域の設定なども含めて)問題の formulation を考えるのが課題かなあ.でもこんなことする前に書き途中の論文を仕上げないといけない.頑張れば金沢の学会で発表できるかもだけど,そんなに無理する必要はない気がしてきた.学会には行くけど.


05月30日(Day 06 / 100)

朝起きたら父親から Line がきていた.


父「食べ物はイギリスよりいっぱい選択肢あるよね?アメリカは,ピザとフライドチキンとドーナツがうまいぞ」


数年前にアメリカに旅行に行くときに,アメリカはピザとドーナツがおいしいって聞いていたけど,フライドチキンもおいしいのか.でも大学の周りにケンタッキーないんだよなあ.そういえばドーナツが売っているのも見ていないな.ピザはよく見る.


今朝は昨晩と同様に,雨が降ったり止んだりしていたので,雨が止んでいる時間を見計らって大学にきた.渡米前は「梅雨を回避できる......!」って喜んでたけど,日本より雨が降っているような気がするのは気のせいだろうか.今日は昨日よりも早く大学に行ったけど,思ったよりも多くの人が作業していた.明日は無理だけど,今度からもう少し早く大学行こうかな.まあでも,院生室の部屋の鍵がもらえればあんまり気にしなくて済むんだけどな.今度鍵がもらえるかどうか聞いてみよう.


今日も昨日に引き続き contact line について考えていたけど全くわからなかった.んー.本当に「解ける」問題なのだろうか.阪大にいるKさんは「Contact line が存在するような自由境界問題を解くには30年早い」って言っていたし,まだまだ未熟な私が手をつけるのは危険な気がするんだよな.Galdi 先生もいろんな人に問題を投げてるけど誰もやってくれないみたいなことを言っていたしな.


よくわからないことを考えていても埒が明かないので,帰宅後は気分転換に,考えたい問題の図の「お絵かき」をした.私が考えたい問題の図は次の通り:

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なんてことのない図だけど,描くのに1時間くらいかかった.数学が専門でない,このブログの閲覧者に問題を説明すると,ここでは「水が入っていたペットボトルを振る」問題を考えている.この問題は見かけによらず非常に難しい問題になっている.難しい点は水が「中途半端」に入っている点にある.なんでこんなに難しい問題を考えなきゃいけないんだろうな.できたらすごいんだろうけど,どんなに早くても「解く」のに2年はかかりそう.


05月31日(Day 07 / 100)

今朝は J1 ビザのオリエンテーションに参加.家を出る前に洗濯していたら遅刻しそうになった.危なかった.めんどくさいから J1 ビザのオリエンテーションサボろうかなって一瞬思ったけど,出席しないと SEVIS(アメリカのビザ情報的なもの)が有効化されないってことを思い出し,頑張って出席した.


オリエンテーションではいろいろ説明されたけどよくわからなかった.たぶん日本語で説明されてもすぐ理解できないと思う.出席して初めて知ったんだけど「24ヶ月ルール」というものがあるらしい.これは J1 ビザを保持した人が再度新しく J1 ビザを申請する場合,最低でも24ヶ月空けなければならない,というルール.ただし,私のように6ヶ月未満の短期滞在用(?)の J1 ビザには適用されないらしい.まあ知ったところで,私がアメリカで研究者として生きる可能性は極めて少ない(というかもう海外に住みたくない)ので,あまり関係ない話だろう.


そういえばオリエンテーションで,ピッツバーグプロスポーツの紹介があった.どうやらアメフトは強いらしい.野球はあんまり強くないらしく,ひどい試合もよくあるけど,観客席からの「街の景色」はすばらしいとのこと.いや,何のためにスタジアムに行くんだよって思った.まあでも昨年ロンドンに滞在したとき,大学からチェルシーのスタジアムまで近かったけど一度もサッカーの試合を見に行かなかったのでたぶん今回も行かないんだろうな.


その後は院生室に行き,contact line 上の境界条件について考えた.ただ,ほとんどの論文では contact angle を固定するか,2次元で考えるか,定常状態を考えるか,(partially) slip 境界条件を課すか,のどれかなんだよな.なんかこれ以上考えても何も生まれなさそうなので Galdi 先生に境界条件について何か知っているかどうかメールした.


今日は早めに帰宅したけど,なんか疲れていたので夕食も食べずに寝てしまった.時差ボケはだいぶ治ってきたと思ったけどまだ残っているのだろうか.


06月01日(Day 08 / 100)

気づいたら6月.今日の最高気温は27度だし,日本と同じような気候だなあって思って明日の天気予報をチェックしたら明日の最低気温は9度らしい(震え).上着を除くと半袖のシャツしかないので,明日はおとなしく家に居ようかな.そういえば今日は妹の13歳の誕生日.たしか中間試験の最中だけど,ラインの返信が秒で返ってきたのでたぶん勉強していないんだろうな.勉強していたらごめん,と先に謝っておこう.


今日は行こうと思っていた,個人経営のスーパーに行ってみたけど,野菜はほとんど売っていなかった.たぶん評判が良いのはサラミとか生ハムなのだろう.何も買わずに店を出るのは(お店が狭いということもあり)気が引けるので,人参と玉ねぎだけ買った.会計のときカードで払おうとしたら「カードが使えるのは10ドル以上の支払いのみ」って言われた.アメリカ来てカードでの支払いを断わられたのは初めてだ.現金は350ドル(3.5万円)しか持ってきていないから極力使いたくないんだよなあ.でもまあ仕方ない.


いろいろお店を調べた結果,どう考えても Giant Eagle に行くのが正解なんだけど,徒歩50分くらいなんだよなあ.自動車だったら一瞬なのに.滞在先に自転車があるから,自転車で移動するというのは一つの手なんだけど,アメリカの交通ルールよくわかんないんだよな.ロンドンほど厳しくはなさそうだけど.仕方ないから,徒歩30分のところにある Aldi に行くことにしよう.帰り道はめっちゃ上り坂だけど.


さて,今日も contact line 上における境界条件を考えていたけど,もしかしたら Dirichlet (no-slip) 境界条件の「おかげ」で contact line は動かないと考えることで導出できるかもしれない.具体的には Blake モデル(T.D. Blake, Dynamic Contact Angles and Wetting Kinetics, in: J. C. Berg (Ed.), Wettability, Marcel Dekker, 1993, pp. 251--309)から,contact line が動かないための contact angle に対する必要十分条件がわかる.もしこのアイディアが正しいとすれば,contact angle は fixed として問題を考えれば良さそう(理論的にはこれで正しいが,実際には contact angle が fixed した値の近傍であっても contact line は動かないことという実験結果がある;これを contact angle hysteresis と呼ぶらしい.まだ物理的な裏づけは出来ていないらしい(?)ので,私はこのケースには絶対に手を出さない).ところで,Young の法則の観点から contact angle が 90 度と仮定するのはおかしい気がするので,別の角度  \theta と固定して考える必要があるけど,Pukhnachov と Solounikov の有名な論文(1982)で指摘されているように,contact line 上では Dirichlet 積分,すなわちエネルギー散逸が非有界になるという singularity があるので,重みをつけたソボレフ空間を考える必要があっていろいろ面倒だなあ(これを回避するために境界条件に "slip" を考えることが多いけど,たぶん slip させると contact angle が動くようになるので,かえって境界条件が複雑になるのかもしれない).まあ,そもそも Dirichlet (no-slip) 境界条件を課せば contact line は動かないとしていいのかどうかよくわからん.てか,Galdi 先生からまだメールの返信ないし,メールの返信がきたらこのことをメールしてみよう.


と,数学ばかりでは飽きるので今日のご飯を紹介しよう.まずは昼食.

んー,写真が少し暗いなあ.なんかほぼ毎日スパゲッティを食べている気がするな.味にも少し飽きてきたので,唐辛子を少しかけた.一方で,夕食はコンソメスープとサラダ.

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見た目はしょぼいけど意外とおいしい(はず).ちなみに,夕食の写真をインスタグラムに投稿したら,アメリカのジョージア州に住んでいるイケメンの友人柿沼くんからラインが来て,スーパーでこういうものが買えるよって教えてもらった.うん,たぶん Giant Eagle に行けば買えるはずなんだよな.自転車の利用を強く勧められたし,今度ホストの人に自転車の交通ルールを聞いてみよう.自転車ならたぶん15~20分くらいで行けるはず.



今日,バージニア州バージニアビーチで銃の乱射事件があったようです.被害者の方々に哀悼の意を表します.私が滞在しているペンシルベニア州は,銃規制が割と緩めな州なので他人事じゃないなあって思います.実際に昨秋ピッツバーグでも銃乱射事件があったし(場所はカーネギーメロン大学から徒歩20分弱のところにあるシナゴグ).銃の乱射事件は頻繁に起こるものではないですが,私は「アジア系の外国人」ということもあり,自分の身に何が起こるかわからないので,休日はおとなしく大学か家で過ごそうと思います.まあ,そのおかげでブログの更新も昨年と同様に行うことができそうです.ここまでこの記事を読んでもらってもわかるように,非常に地味なことしか書いていません.なんか私の正確を表しているかのようです.もし書いてほしいことがあれば Peing で質問してください.なお,次回の更新は06月10日(日本時間)を予定しております.では.