べっく日記

偏微分方程式を研究してるセミプロ研究者の日常

アメリカ滞在記 part 11。

立秋が過ぎました.東京では連日猛暑のようですが,ここピッツバーグでは過ごしやすい天気が続いております.というより朝は少し肌寒くなってきました.最低気温は17度,最高気温は28度です.数週間前まで猛暑だったのが嘘のようです.これならば,確かに,滞在している家の部屋にエアコンがないというのはうなずけます.ただ,それほど暑くないのに大学などの屋内では冷房ががんがん効いているのはとても不思議です.アメリカ人はそんなに暑がりなのでしょうか.私はいつも上着が欠かせません.


前回の記事はこちら:

watanabeckeiich.hatenablog.com


目次:

08月04日(Day 72 / 100)

朝起きたらオハイオ州でも銃の乱射事件が発生したというニュースを目にした.そんなに銃乱射事件は日常茶飯事なのかと思って,2019年アメリカで発生した銃乱射事件を調べてみたら,255件あった模様.

www.gunviolencearchive.org

うん.たぶん将来どんなに良いオファーがあったとしても,喜んでアメリカに住むことはないだろう.やっぱ日本が一番いいよ(体験談).


今日は放物型偏微分方程式の抽象論について少し勉強した.簡単にまとめたものをホームページに挙げた.少々理解不足な点もあるけど,本質的な部分は理解できたように思う.


お昼はサンドイッチを作ってみた.

夜はから揚げみたいなやつを食べてみた.

そういえば最近サブウェイに行っていない気がするな.そろそろ食べたくなってきた.


08月05日(Day 73 / 100)

最近,卒入学に伴うお引越しシーズンということもあって,部屋のクリーニング業者とか部屋の荷物を車に詰め込んだりする人をよく見かける.不必要になったソファーとかベッドを処分する,というのはわかるんだけど,歩道は塞がないでほしい……

(ちなみにわざわざ道路を渡った)アメリカ事情はよくわからないけど,ゴミに大きさという概念は存在しないらしい.今までに観測した一番大きいゴミはダブルベッド.


Slip boundary condition を課した Stokes 方程式の論文を漁っていたら,Zajczkowski 先生が contact angle が生じているような領域で時間局所解の証明をしていた.証明はテクニカルで自由境界問題の場合に適用できるかはわからないけど,参考にはなりそう.


さて,今日は無性にピザを食べたくなった.

もちろん,全部食べるのは大変なので,食べきれない分は翌日のお弁当になった.

お弁当がピザというのは人生で初めてかもしれない.


08月06日(Day 74 / 100)

Solonnikov 先生の論文を読んでいたけど,contact angle が90度なら重みをつけた関数空間で考える必要がないなってことと,contact "line" が動かなければ singularity は発生しないなってことがわかった.少しずつだけど,研究の方向性がわかってきたような気がする.午前中たまたま Galdi 先生が部屋にやってきたので,わかったことを伝えてみたら「知ってるよ.それは自明だね(意訳)」と言われた.いや,知ってたら最初から教えてくれよと思ってしまった.


今日はまじめに Wilke 先生の論文を読んで,ノイマン問題について考えていたけど,途中から全くわからんな.まあ完全に自分の知識不足なんだよな.関数解析の本,1冊くらい持ってくればよかったな.スペクトルがどうこうとかいう話,正直全部しっかり覚えているわけじゃないんだよな......勉強しなきゃ.一応 Danchin-Mucha の論文(2015)でも扱っているけど,Wilke 先生の証明とは別だから少し注意して読まないといけないんだよな......面倒だなあ.

08月07日(Day 75 / 100)

朝,ブログの記事を書こうと思ったら,全然アクセスできなかった.結局しばらくしたらアクセスできるようになったけど,原因は何だったのだろうか.思えば,ブログのバックアップみたいなのは今まで全く考えたことがなかったので,これを機に少し考えてみよう.


この前投稿した論文が一向に査読に回らないから,

I have not received any update regarding the status of my manuscript, although it has been three weeks since my submission. I understand that peer review is a voluntary working and it will take time to find suitable reviewers. However, I am wondering what the current status of the manuscript is. Although I hope the editor is finding the reviewers, I began to question that the editor leaves my manuscript unattended. I appreciate if you could notice me when my paper will be sent for review.

とチーフエディターに連絡してみたら

It is holiday season in Europe now, so not everybody is dealing with editorial (or any other) business at the moment. An editor was assigned to your paper, but the editor must be in vacation.

と返信がきた(原文まま).んー......マジかよ.ちょっと困るなあ.論文がリジェクトされるのは苦じゃない(でも悲しい)けど,まともに査読されないのは辛いんだよな.トラウマ.まあ査読されているのを忘れるくらい論文をぽんぽん投稿すればいいだけの話なんだけどね.


夕食はカレーを作ってみた.

久々のカレー.一応分量通り作ったつもりだけど,水の量が多すぎたような気がする.

帰国まで3週間半なのに12皿分作ってしまった.

というわけで,今後1週間くらいは昼食・夕食はカレー.


08月08日(Day 76 / 100)

朝起きたら阪大のTさんから論文についての質問が届いていた.Arxiv にあげておくといろんな人に読んでもらえるのはよいことだなと思った.Tさんの指摘,本当だとしたら割と深刻なんだけど,指摘してもらった点がちょっとよくわからないんだよな......もしかしたら,指摘された通り証明の修正が必要なのかもしれない.ただよくわからないのは事実なので質問に対して質問を返してしまった.自分の知識が浅はかで,上っ面で,付け刃なのは悲しい.ただ,こうしてまじめな指摘をしてくれるのは感謝です.ふつうの学生なら指導教員がしてくれる(はず)なんだけど,私の指導教員は忙しいから仕方ない......のかな.とはいえこの論文が正しいかどうかは自身の学位取得に少し関わってくるので,帰国後頑張ってアポを取って先生に会い,先生の意見も頂戴してちゃんと考えよう.部屋隣だし,会おうと思えば会えるはず.


今日は Wilke 先生の論文をまじめに読んでいたけど,本当に reflection argument は成り立つのかな.Qurter space における解を構成するのに,偶拡張を使って半空間に直して考えているけど,関数は Lebesgue 空間ではなく Sobolev 空間の元だから偶拡張じゃだめだと思うんだけどな......でも Wilke 先生がそのことを知らないはずがない.いったい真意はなんなんだ.やっぱり解表示をちゃんと導出して,Green 関数の reflection を考えないとダメなのかな.んー,わからない.わからない.いやあ,思ったんだけどね,私にとってこの研究難しすぎるよ.難しすぎてうつになりそう.もっとニコニコしながら楽しく研究したいな.鏡見ながら研究してないからわからないけど,いつも顔が険しい気がする.


さて,夕食はカレーをいただいた.

カレーライスだと飽きそうだし,カレーの消費が鈍るので,スープとしていただいた.本当はカレーうどんにしたかった.


08月09日(Day 77 / 100)

Tさんからめっちゃ丁寧な返信がきた.たしかに指摘の通り,ちょっとまずい気がするな.少し勘違いしている点があった.圧力の微分に関して, P'(1) = 0 だと減衰が変わるのは気づかなかったな.勉強および考察不足だったな.問題点を解決するには初期値にもう少し仮定を加えないとダメだけど,そうすると論文を全体的に書き加えないとダメだな.はあ,なんてクソな論文を書いてしまったんだ.あんまり好きじゃないけど,問題点を解決するもう一つの方法としては,係数に仮定を加えるというのが挙げられるな(たぶんこれで解決はできるはず).論文の査読はまだまだだけど,査読者から指摘されたら係数に仮定を加える,ということにしよう.係数に対する仮定は,数学的には微妙だけど,物理的な観点からすれば自然なのでたぶん大丈夫だろう.全空間で考えているだけだし.まあ最悪の場合,いつも通り  P'(1) > 0 を仮定すればいいや.この場合の結果はまだ出ていない(はず)なので,一応新しい結果ということになるだろう.


そんなことを考えつつ,大学に歩いていたら,今日はベッドのマットレスが捨てられていた.

たぶん引越すから要らない!ってことで捨てたのだと思う.先月はあちこちでソファーやベッドが捨てられていたし,この国には人に譲るという文化があまりないのかな.要らないものは捨て,ほしいものは新品で買う,ということが普通だからアメリカ経済は発展し続けるのかな.わからないけど.


ドイツから来ている学生が部屋に来た(彼は別の部屋に滞在している).あれ?どうしたんだろうとか思っていたら,今度の週末滝を見に行こうとのこと.大きい滝は個人的に見に行きたいなと思っていたけど,レンタカー借りないといけないし,一人で行くのは無理だなと諦めていたところなので,うれしいお知らせである.どことは言わないけど,今度の週末,有名な滝を見に行くことになりそうです.そのあと少し雑談をした.そのなかで,Kyed 先生の学生も私と同様の研究に取り組んだけど,結局諦めて,periodic B.C. の場合に研究を進めたらしい.こうした情報交換ができるというのは海外派遣のよい点である.いまさらだけど,ピッツバーグではなく,ダルムシュタットに行くのはありだったかもしれない(注:指導教員からピッツバーグダルムシュタットのどちらかに行くことを勧められていた).


昼はパンが美味しくないパン屋でサラダとマカロニをいただいた.

個人的にはスパゲッティを食べたかったけど,メニューにないから仕方ない.ちなみに夜はひさびさにサブウェイでサンドイッチを食べた.


08月10日(Day 78 / 100)

カレーが大量に残っているので,ラザニアを作ってみた.

うん,水が多すぎてしまった.

完全にカレーのルーにラザニアを投入したような図になってしまった.少しアイスを食べたいなと思ったのでアイスを買った.

本当はこれよりも少し安いハーゲンダッツを買いたかったけど,ストロベリー味がなぜかなかったので仕方ない.アイスを買うついでに,ピクルスも買ってみた.今日の夕食はこんな感じ.


今日もいろいろ研究について考えていたけど,いろいろ混乱してきてしまった.自力でいろいろ解決できないというのは完全に自分の実力不足だなあと痛感する.なんかね,この数年間いったい何を勉強してきたんだろうという気持ちになる.理解した(と思っている)内容は大体教科書に書いてある内容だし,自分の研究にどういうオリジナリティがあるんだろうと思ってしまう.正直驚くような研究をしてきたわけじゃないし,「まあそういう結果が出るよね」みたいな研究しかしてないし,しょうもないことばかりやってきたんだなあって感じがする.しょうもないことすらできているか怪しいけど.まだまだ未熟だなあって思う.もっと頑張らないとだめなんだよな.はあ.



このアメリカ(ピッツバーグ)での滞在も残り3週間となりました.帰国のときが近づいている喜びの一方で研究の進捗がなかなかでない焦りもあります.正直,取り組んでみた研究が難しすぎて泣きそうです.いろんな偉い先生が放棄したような問題に取り組む,というのは研究の正攻法に見えますが,研究の方向性や方法をきちんと定めないままいろいろ考えるのは危険なような気がしてきました.残り少ない滞在の中で,Galdi 先生からいろんな文献やアイディアを教われたらいいなと思います.個人的には,Galdi 先生が来日する11月までに少しでも結果(や研究の方向性)を出したいところです.とりあえず,来週会えないかアポを取ってみようと思います.さて,次回の更新は08月18日(日本時間)を予定しております.では.