べっく日記

偏微分方程式を研究してるセミプロ研究者の日常

研究進捗2021/12/30

今年も早いもので明後日は元日です。帰省するということもあり、昨夜は冷蔵庫の中にある食材を鍋にして食べました。

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ちょっともやしが多かったですね。鍋にレモンを入れるのは珍しいと思いますが、鍋キューブの説明にレモンを入れると美味しいよと書いてあったのでそうしました。たしかに美味しいなと思いつつも、やっぱりキムチ鍋の方がおいしいかなと思いました。

 

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<これまでの進捗>

・国際研究集会の運営を行なった。ホームページの作成以外、ほぼすべての業務を行った。いろいろ忙しかったけど、学生時代のサークルのテニスの大会の運営に比べたら大したことはない。ただ、一人ドタキャンした講演者がいて困った。本当にあれは困った。優秀な方だっただけにアカデミアから去ってしまうのは少しもったいない気がするけど、本人が決めたことなので仕方ない。

 

コリオリ力を伴う圧縮性ナビエ・ストークス方程式の共同研究を行なった。共同研究者が頭良すぎるせいでかなり研究が進展した。私ももっと研究に貢献しないと。

 

有界領域におけるストーク作用素の最大L1正則性を示した。ついでに最大Lp正則性も示した(ただしpは有限)。補間理論と双対性の議論からすべて導出できることがわかりました、と上司に言ったら「どこか Hard analysis はないの?なんか残念だなあ」と言われた。すでに出来上がってる抽象論にある程度頼りつつ、簡単にできた方が応用範囲は広いし良いと思うんだけどな。そんなに難しい関数解析は嫌いなんだろうか。

 

・外部領域におけるストーク半群の局所減衰評価を斉次べゾフ空間の枠組みで示した。これも補間理論と双対性から従う。あとは摂動理論を使って外部領域におけるストーク半群の減衰評価を導出するだけだ。

 

接触角を生成するナビエ・ストークス方程式の時間局所解についての論文がアクセプトされた。

www.sciencedirect.com

 

・国際研究集会で発表した。優秀な先輩 M さんから研究に興味があると言ってもらえて嬉しかった。文献を教えてほしいと言われたので、メールで送った。やはり知り合いの方だとこういったことはお願いしやすいのかもしれない。ひさびさに英語での発表だったけど、ちょこちょこ文法を間違えてしまうこと以外は大丈夫だった(はず)。そろそろ英語の勉強も再開しないとな。

 

・SIAM Conference on Analysis of Partial Differential Equations (PD22) における Minisymposium に採択された。Thomas Eiter 氏と共同で国際シンポジウム "Recent Developments in the Mathematical Analysis of Viscous Fluids" を開催します(セッション番号:MS13, MS27, MS40)。

meetings.siam.org

 

・障害物周りでの非圧縮粘性流体の方程式を考えた。ただし、領域の境界はリプシッツであることを仮定する。これは 4年前にドイツのダルムシュタット工科大学に行ったときに H 先生から提示された問題である。優秀な後輩 T 君と一緒にやろうとということになっていてしばらく放置していたけど、有界領域の解析は Stokes 方程式からの摂動として考えられることがわかった。外部領域の場合については適当な切り落とし関数を使えば半群を構成することができると思う。その際圧力の減衰評価が必要になるが、これは P さんとの共同研究研究でやったアイディアを援用すれば解決できると思う。問題は半群の減衰評価だと思うけど、どうなんだろう。

 

・共同研究者のPさんとしばらく連絡が取れてなくて、コロナにやられてしまったのかな?と心配してたら、クリスマスに「メリークリスマス」とメールが来た。どうやらD, H, M 先生らとの共同研究に忙しかったらしい。寝る間を惜しんで研究してて「溺死状態でした」と表現するくらいなんだからよほどなんだろうな……やはり、海外の研究者の方がハングリー精神が旺盛な感じがする。いろいろ不勉強なところがあって共同研究を放置していたからそろそろ再開しないとな。

 

・ホームページを更新して、投稿中の論文をすべて書いた。現時点でプレプリントは5編あるらしい。今年はだいぶ論文を書いたな。来年もたくさん書こう。

 

<今後の研究目標>

今年は6編論文(すべて単著)を執筆したので、来年は(共著論文を含めて)7編以上論文を書くことを目標にする。具体的には以下の論文を書く。

 

1. コリオリ力を伴う圧縮性ナビエ・ストークスの時間局所解についての研究する。特に、回転速度を上げていくとで解の最大存在時間をどんどん延ばせることを示す。これは優秀な後輩F君との共同研究である。

 

2. コリオリ力を伴う圧縮性ナビエ・ストークス方程式の時間大域解については研究する。特に、回転速度を上げていくことで、速度場の大きさを制限することなく時間大域解を構成できることを示す。これもF君との共同研究である。

 

3. 外部領域におけるナビエ・ストークス方程式を斉次べゾフ空間の枠組みで考察し、スケール不変な関数空間に属する強解の一意存在を示す。だいたいの解析は終わったので、あとは細かいところを計算して確かめるだけである。春休み中にまとめて投稿したい。論文の長さが短かったら時間周期解のことについてもついでに書く。

 

4. 障害物周りでのナビエ・ストークス方程式の時間大域解を構成する。ただし、半群の gradient の減衰評価を導出するのは一筋縄ではいかないと思うので、これについては別の論文として扱う。これは優秀な後輩T君との共同研究である。

 

5. 4の研究に関連して、半群の gradient の減衰評価を導出する。これも優秀な後輩T君との共同研究である。半群の gradient の評価を導出できれば、強解を(弱)L3空間で構成できるので、これも重要な研究である。

 

6. 一様に滑らかな領域におけるストーク作用素の最大正則性を示す。特に境界はC^{1, \alpha}であることを仮定し、従来の weak Neumann implies Stokes の結果を大幅に改良する。一様に C^1級の領域でできればベストだけど、難しいと思う。これは優秀な先輩Pさんとの共同研究である。

 

7. 有界領域におけるナビエ・ストークス方程式の非自明な定常解の安定性を示す。今年は軸対称な定常解の安定性は示たので、来年は軸対称でない定常解の安定性を示す。この場合、定常解は時間周期解になるので、必ずしも今年やったこととパラレルになるわけではないけど、大まかなアイディアは一緒だと思う。これはそんなに難しい解析は必要ないと思うのでさっさと論文にする。

 

8. 有界領域におけるナビエ・ストークス方程式の非自明な定常解の不安定性を示す。特に,軸対称な定常解の不安定性を示す。これを研究するには、力学系の勉強がもう少し必要だと思うので、頑張って勉強する。

 

9. 有界領域におけるナビエ・ストークス方程式の非自明な定常解の不安定性を示す。特に,軸対称でない定常解の不安定性を示す。可能ならば Hopf 分岐が起こることを証明する。

 

列挙したら9編になってしまいました。まあ、頑張ります。できれば以上に加えて次の課題にも取り組みたい。

 

10. 表面張力を伴う、有界領域における非圧縮性粘弾性流体の時間大域解の強解の一意存在を示す。これができれば表面張力を伴う有界領域における圧縮性粘性流体の自由境界問題の時間大域解の構成のヒントにつながると思う。半空間の場合はいくつか結果があるので、これも興味深いものになると思う。

 

上記の論文執筆とは別に、次のことを行う。

 

A. 8月にドイツのS先生、K先生と共同で国際研究集会を行う。できればドイツで開催したいけど、コロナの状況次第。対面が難しい場合はハイブリッドもしくはオンライン形式で行う。私が主催者なので、上司の意見は参考程度に聞こうと思う。

 

B. 若手の方々と定期的な勉強会を行う。長く研究していくには勉強して知識のアップデートが必要だと思う。

 

C. 後輩の修論の添削を行う。後輩は半空間における圧縮性ナビエ・ストークス方程式を扱った隠居・小林の結果の改良を行なっていて、線形化方程式に付随する半群の Lp-Lq 評価の導出が主な課題となる。低周波の解析だけですでに40ページを超えているので、きっと100ページを優に超える壮大な修論になると思う。添削は大変だけど、自分の勉強になると思うので頑張ろうと思います。

 

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おかげさまで先日28歳になりました。30歳で准教授が(ここ数年の)目標なので、あと2年しかありません。30歳で准教授になることを考えれば、来年が勝負かなと思います。来年は今年よりももっとたくさん論文を書いて自身のレピュテーションを高めるとともに、学術界に貢献できればいいなと思います。ところで結婚して一年が経ちました。そこで記念に東京タワーが見えるところに泊まりに行きました。

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東京タワーは翌朝に登りましたが、150m のところにある展望台から見えた景色はビルだらけでした。

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十数年ぶりに登りましたが、高層ビルだらけでショックを受けました。やはり過去を美化してしまいがちなようです。たくさん論文を書いた今年を美化しないように、来年はもっと頑張ろうと思います。将来的には、できれば毎月論文を書きたいですね。

 

つらつら書いていたら長くなってしまいました。今年も沢山の方々にお世話になりました。来年も引き続き、関係者の皆様、ご指導ご鞭撻の程よろしくお願いいたします。次回の更新は2月の予定です。では良いお年をお迎えください。