べっく日記

偏微分方程式を研究してるセミプロ研究者の日常

千人計画のお誘いが来た。

みなさんこんばんは.先日論文がそれなりにいいジャーナル(J. Differ. Equ.)にアクセプトされました.めでたいですね.


さて,今日知らない中国人から英語のメールが届いていて,よくあるスパムメール(会費目的の研究集会のお誘いとか)かと思ったら,よく見るとメールの標題が "Invitation for overseas talents to apply for the Excellent Scientists Fund 2023 in China" となっていて,文面には Salary とか書いてあって,なんかおいしそうな話だなと思っていたら,差出人のメールアドレスのドメインが 1000talent.top となっていました.そう,中国の千人計画のお誘いのメールだったのです.

これまでに「あなたのところで修士号を取得したいです」みたいなラブレターを海外の学生からもらったことは何度かありますが,こういうスカウトメールをもらうのは初めてです.ただ,中国の千人計画は,日本国内からはあまりいい噂を聞かないので,この記事では,いただいたメールでどういうことが書かれていたか,差し支えない範囲で説明していこうと思います.

1. 応募資格について

大きく分けて募集はシニア向け(既に教授の人たち)と若手向けに分かれます.ここでは若手向けについて説明します.いただいたメールによると,今回の募集では,1983年1月以降の生まれでかつ(中国以外の)大学や研究機関などで3年以上のキャリアを積んだ研究者のみ応募できるようです.もちろん,理学や工学などの自然科学分野における博士号を取得していることを前提としています.ただし,特別優秀な場合は例外的に3年以上のキャリアがなくても大丈夫みたいです.

また,千人計画に採用後は,中国国外での仕事を辞め,中国で少なくとも3年以上フルタイムで働くことが必須のようです.

2. 待遇について

基本給は年間50万元から100万元(およそ950万円〜1900万円)で,それに加えて家賃補助と社会保険が付いてくるそうです.もちろん,正確な給与は場合によりけりですが,とても魅力的です.シニア研究者の中でも特に優秀な場合は100万元から1000万元のインセンティブがあるそうです.んー,流石に日本が真似するのは無理がありそうですね.もちろん,これらとは別の子供の学業支援も付いてきます.

3. 採用されるまでのステップ

必要な書類を(今回の場合は)2023年1月10日までにオンラインで提出し,書類到着後,研究分野や研究成果に応じて,千人計画の本部の方から企業や大学へのマッチングや推薦が行われ,企業や大学が「採用したい」ということになれば晴れて千人計画のメンバーとして選出されます.一見我が国おける卓越研究員制度に似ているけど,千人計画のほうが効率的な気がしますね.採用後もいろいろ応募して採択されれば更なるインセンティブがあるそうですが,ここでは割愛します.今回の募集に関しては,新型コロナウィルスの感染拡大の影響もあるので,採用後は1年以内に渡中すればいいそうです.


メールの最後に "About us" について書いてあって,どうやら千人計画は中国のコンサル会社が運用(?)しているみたいです.ちなみに,千人計画のウェブサイトは

http://www.1000help.com/

だけど,全て中国語なので,全然内容がわかりません.個人的に,なぜ私の方に千人計画のお誘いが来たのか不思議ですね.誰か推薦してくれたのでしょうか.


話は全然変わりますが,先週,数年ぶりに中国の研究者の方(もともと私が所属していた研究室でポスドクをしていた方)とお話しする機会がありましたが,中国の大学はかなりスパルタみたいです.解析学微積分)の授業に関しては,数学科でない学生に対して,90分の講義が週に3回あって,半期に17週講義あるようです.これに加えて線形代数とかほかの必修科目もあるので大変です.ちなみに,数学科はもっと講義があるようです.カリキュラムについては,極限の定義をイプシロン・デルタから初めて,平均値の定理とかテイラー展開とかを扱い,リーマン積分を学んだ後にODEをやるそうです.ここまでが前期のカリキュラムで,後期では重積分,ベクトル解析や多変数解析,Fourier 級数などについてやって1年が終わる,とのことです.とてもハードです.正直なところ,アメリカが中国に負けるのも時間の問題な気がしますね.


千人計画に応募するのは(パスポートのコピーを提出しなきゃいけないとか家族のことで)少し躊躇いますが,オファーはいつでもお待ちしております.採用担当の方々,ぜひご検討お願いいたします.