べっく日記

偏微分方程式を研究してるセミプロ研究者の日常

研究進捗2021/8/27

ホームページを google site で作成しているので,先日 google アナリティクスと連携させました.これによって,ページ毎のアクセス数だけでなく,どの地域からアクセスがあったかわかるようになりました.どうやら海外からもわずかにアクセスがあり,これまでにベルリン,シンガポールインドネシア,ロンドンからアクセスがありました.今週は横浜,川崎,札幌からアクセスがありました.札幌に知り合いはいないので誰か気になるところですが,もっと更新できるように研究を頑張ろうと思います.


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<これまでの進捗>

・8月のオンラインによる国際研究集会を開催・運営した.ご協力いただいた方々,ありがとうございました.

www.sgu-mathphys.sci.waseda.ac.jp

無事に終了してよかった.聴衆は平均50人ちょいで,参加登録者数は70人弱だったので,まずまず成功したと思う.開催日程が名大と丸被りしてしまったのは想定外だったけど,アナウンスが遅かったから仕方ない.ここだけの話,ある先生に講演依頼したんだけど,運営が忙しいからごめんねと言われたのよね.いま思えば,もう少しちゃんとスケジュールを聞いて,開催時間を1時間くらい遅らせても良かったかもしれない.


・この研究集会を通じて,contact line の問題に対するアプローチについての理解を深めた.Guo-Tice をはじめ,みんな2次元で,特異性を「回避する」ように解析している印象を受けた.研究集会のあと,Amann 先生の論文を読んだけど,空間の次元は一般で,特異性は重み付きの関数空間で対処していた.また,講演で聞いたように,関数を regular な部分と singular の部分に分けていたので,どちらかというとAmann先生の手法を応用する方が自然な気がした.ただ,論文を読むには微分幾何をもう少し勉強しなければいけない.


・Thomas 君から連絡がきた.そう,ピッツバーグで仲良くしてた彼である.

watanabeckeiich.hatenablog.com

彼はいまベルリンのワイエルシュトラス研究所にいるんだけど,どうもベルリン工科大学で SIAM の国際研究集会が開催されるので,その mini-symposium の公募に応募しないか誘われた.

www.siam.org

ということで,何人かに声をかけ,講演の依頼をするとともに,企画書を書いた(というよりは書いてくれた).締め切りは来月中旬.採択されるといいけど,そもそも渡独できるかだよな.


・若手セミナーに申し込んだ.講演もする予定.どうやら今年は大学の後輩が結構参加するみたいなので,恥ずかしくない講演をしたい.若手セミナーに参加する方でこの記事を見ている方がもしいたら,(オンライン)懇親会のときにでも声かけてください.


ナビエ・ストークス方程式の自由境界問題の安定性に関する論文は,非線型項の表示と評価に関する記述が少し足りないと思ったので,記述を増やした.よくよく考えてみたけど,自由境界は必ずしも単連結じゃなくてもいいと思うんだよな.開催した研究集会で D 先生にも質問したけど,結局のところ,定常状態における自由境界の存在が重要であって,自由境界が単連結がどうかは関係ないんだ,ということがわかった.実際に,自由境界を極座標系で表示したりしないので.定常状態における自由境界の存在はずっとよくわかっていなかったけど,Appell の本にふつうに書いてあった.

gallica.bnf.fr

Google 翻訳と DeepL を駆使して読んでみたところ,楕円積分とかなんかいろいろ使うと存在するための十分条件を導出できるっぽい.ただ,流体力学についての文献なので,一意性は不明.もっと丁寧に読めばいろいろ面白いことがわかると思う.


・上の問題に関連して,Brown と Scriven (1980) の論文を読んだ.どうやら,角速度をパラメータとみなした場合,Hopf 分岐がおこるようだ.Solonnikov 先生はこのことは研究していなかったので,これを明らかにできればパイオニアになれると思う.今後はこれを(最終的な)研究目標にして頑張ろう.


・外部リプシッツ領域におけるストークス方程式に取り組んだ.局所エネルギー減衰評価はそれほど難しいことではなかったけど,それを使って実際にストーク半群を構成することが難しいことがわかった.実際に,ストーク半群の生成をいうためには,剰余項に現れる圧力の評価が重要になり,これはそれほど簡単な問題ではない.最初は,圧力のレゾルベントパラメータに関する減衰が導出できるので,そこから簡単に圧力の時間減衰が従うなと思っていたけど,実際には,(別の方程式の)解を Duhamel の原理で書いたときに,積分項が出てくるので,圧力を評価するには,ストーク半群の減衰評価を負べきのソボレフ空間で考える必要が出てくる.でも,そのためには,補間不等式だったり,いろいろ使う必要があり,本質的には速度場に関する  W^{2, p}-正則性が必要となり,この研究では上手くいかない.そこで,ストーク作用素が最大正則性を持つことに着目し,さらに,最大 L^p-正則性を使えば問題となっている項を評価できると思う.計算してみたところ,たぶん正しいけど,念のためもう一度確認しよう.これが意味しているのは,リプシッツ領域におけるストーク半群の gradient estimate を導出するには「ストーク作用素が最大正則性をもつ」という性質が必要になるということであり,これはいままでにない考えだと思う.つまり,Iwashita の方法は直接機能しないということだと思う.


・共同研究を再開した.Pさんは9月末まで忙しいらしいので,それまでは(上の論文が書けた後)私が頑張ることになった.bent-half 空間における解析が終わったので,あとはパラメトリクスを構成するだけだなとか思っていたけど,Pさんの話ぶりだとそんなに自明ではないそうだ.とりあえず,Hieber 先生らの論文を丁寧に読んで隅から隅まで理解することから始めよう.


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先日,歯医者(定期健診)もかねて実家に行きました.いま通っている歯医者,高校生のときから通っているので,かれこれ10年近く通っていることになりますね.おかげで虫歯もなく,健康的に過ごせていると思います.写真がないと味気ないので,実家の猫の写真をあげておこうと思います.

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3匹もいるけど,全部保護猫です.妹の話によると,もしかしたらもう1匹増えるかもしれないとのことです.三毛猫は一度 FIP (猫伝染性腹膜炎) にかかって死にかけたけど,とある動物病院での投薬を経て元気になりました.このワクチンもできるといいなと思っています.実際,治療は高額だし,私も〇0万円くらい出したので.

次回の更新は10月末を予定しております.では.